■原油相場の暴落が結局は株高・円安トレンドに寄与
閑話休題。要するに、第3回量的緩和は本当のところ確実ではないにもかかわらず、マーケットは今のところ、確信をもっているだろう。こういった市場センチメントが維持される限り、目先、株高・円安のトレンドも維持される公算が大きい。
冒頭で記したように、原油の暴落があったにもかかわらず、OPECは減産を見送り、昨日(11月27日)、これが原油相場の崩れをもたらした。
(出所:米国FXCM)
原油価格の低下はCPIを押し下げる原因の1つとして認識されるから、原油相場の「底なし」が日銀の第3回量的緩和の期待を高め、株高・円安トレンドに寄与していることは確かだ。
もっとも、日銀緩和策の中には、ETF(上場投資信託)の直接購入が含まれているから、マーケットは「緩和中毒」気味だ。緩和政策で買われた株が高くなるにつれ、一段と緩和策を期待するようになるといった具合だ。
ゆえに、マイナス材料はかえって株高期待を高める効果がある。インフレに関する指標なら、なおさら都合がよい。それと連動した円安も当面維持されるだろう。
よって、米ドル/円もユーロ/円も、かなりオーバーボートの状況にあるが、前記市場センチメントが支配的になっている以上、米ドル/円の高値更新が予想される。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
米ドル/円に関しては、119.40円前後といった従来の上値計算値のほか、一時的にせよ、120円の節目も覚悟すべきではないだろうか。
【参考記事】
●ドル/円の上値メドは119.4円だが、円安が「解散クライマックス」となる可能性も…(2014年11月14、陳満咲杜)
■相場の転換には次のサプライズを待つ必要がある
目下の相場、円売り自体が円売りを呼ぶ段階にあるから、「臨界点」の達成は、次のサプライズを待たなければならないと思う。
そのサプライズとは他ならぬ、マーケットが確信を増している日銀の第3回緩和予測にある。もちろん、サプライズだから、こういった予測がはずれることや期待の後退リスクが増大してくることはあるだろう。
また、引き続き米国株の動向を中心に、外部要素の異変がサプライズを引き起こす可能性を警戒しておきたい。
米ドル全体については、ECB(欧州中央銀行)のQE(量的緩和)政策が予想されるなか、ユーロの下値余地拡大が市場コンセンサスになっている。
原油の急落がEU(欧州連合)のCPIを押し下げるのは日本と同様なので、ECBの早期行動の有無が材料視されるだろう。予想より遅れた場合、やはり一時のサプライズを引き起こす可能性があるので、注意が必要だ。
■原油相場総崩れはロシア経済に対する米国の陰謀?
最後に、原油相場の総崩れについて、いろいろな説があるなか、ロシアに打撃を与えるための、米国主導の政治陰謀説が目立ってきた。
真相はともかく、仮にこれが事実であれば、1つ言えるのはこの戦略は米国にとって実に一石二鳥の妙案である。
原油に依存するロシア経済に打撃を与える上、EUと日本にデフレ圧力もかけ、米国の代わりに量的緩和をやってもらうということだ。果たして米国の思惑どおりにいくかどうか、そして、市況はいかに。
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