■流動性低下時に米雇用統計が発表されるとどうなる?
そこで、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト・鈴木健吾さんに、今回のような特殊なケースで、為替相場がどのような動きになりやすいか、うかがった。
「確かに流動性が低下するので、米雇用統計が予想どおりならまったく動かないし、サプライズがあれば大きく動きやすくなります。ただ、どちらかと言えば、過去の例ではあまり動かないか、ちょっと動きかけて戻ってしまうようなパターンが多かったと思います。
米雇用統計の結果に素直に反応するけれど、だからといって反応した方向に動き続けるというわけでもなく、一時的に動いた後は戻ってしまうという感じでしょうか」
鈴木さんは金融機関で自己裁量トレードをする「プロップディーラー」として10年以上もの経験を持っていて、今回のような状況を何度も経験してきている為替のプロだ。
【参考記事】
●元プロップディーラーの2015年為替予想。米ドル/円は125円へ! 高金利通貨も注目
●リーマンショック時に5分で1000万円儲けた! 元ディーラーが明かすマル秘トレード術
■為替があまり動かない理由は株式市場、債券市場にあり?
さらに、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)にて、インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャーを歴任し、現在は、外為オンラインのシニアアナリストを務める佐藤正和さんにも話を聞いてみた。
「これまでの経験から、どちらかというと動かなかったことの方が多いです。それは、米国の株式市場は休みだし、債券市場も短縮取引になっていますので、こうした他の市場に動きが出にくい中で、為替の動きも抑制されてしまうといった部分が大きいのかなと思います」
■2012年はかなり悪い結果の割にはそれほど下がらず
今回と同じようにグッドフライデーと米雇用統計が重なったケースは、2000年以降では、2007年と2010年、そして、2012年の3回あった。
この3回の米ドル/円チャートを見てみよう。まずは2012年のチャートだ。

(出所:CQG)
この日足チャートの丸で囲った部分、2012年4月6日(金)は、今回とまったく同じで、グッドフライデーで米国の多くの州が休日ながら、雇用統計が発表された。
これを見ると、雇用統計がない通常の日と比べて、格段に長いローソク足にまではなっていない。
さらに細かい動きをザイFX!でもおなじみの羊飼いさんが提供しているリメンバーFXのチャートで見てみた。以下は、2012年4月6日(金)の米雇用統計発表前後の動きを1分足で示したものだ。

(出所:リメンバーFX)
これを見ると、米雇用統計発表からおよそ10分間で、米ドル/円は1円20銭程度下落している。
2012年4月6日(金)の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想の20.5万人増に対し、結果は12.0万人増と、かなり悪い内容だった。
そして、世界各国がグッドフライデーの休日で市場参加者が極端に少ない状況だったことも含めれば、相場が大きく動くことが多い米国の雇用統計発表後の米ドル/円の動きとしては、比較的小さかったと言えそうだ。
■2010年、2007年も大きな動きにはならなかった
そして、こちらも同じ状況だった、2010年4月2日(金)、2007年4月6日(金)の米ドル/円日足チャートは以下のとおり。

(出所:CQG)

(出所:CQG)
こちらについても丸で囲った部分が対象日となるが、2012年と同様に、あまり大きな動きは出ていなかった。
このように、今回とまったく同じ特殊なケースだった際の米ドル/円の動きを見てみると、鈴木さん、佐藤さんが話していたとおり、2000年以降に起きた3回とも、それほどは相場が動かなかったことがわかる。
ただ、鈴木さんの話の中にもあったように、流動性の低下により、相場が両極端に動きやすい状況にあることは確かなので、今回の米雇用統計時にトレードするなら、その点を念頭に置いた方がいいことは間違いないだろう。
(ザイFX!編集部・庄司正高)
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