■10円超の調整なしで、130円を一直線に超えるのは難しい
反面、早くも浮上してきた130円、あるいは132~135円といった上値目標の強気論からは距離を置くべきだと思う。その理由を米ドル/円とクロス円の両方から考えてみたい。
まず、米ドル/円の125円の大台打診自体、2011年の戦後最安値75.56円を起点とした上昇波の一環と見なすと、雄大な「円安」トレンドが限界に近づいていることのサインと受け取れる。
(出所:米国FXCM)
なにしろ、本コラムが繰り返し書いてきたように、米ドル/円は戦後最安値から、途中1回も10円超の調整がないまま、2007年高値124.16円を超え、また125円の心理的大台にトライしている。雄大なトレンドとはいえ、限界なしで永遠に続くわけはないから、そろそろ目標達成感や円売りのオーバーシュートがもたらす反転のタイミングに近づいていると思う。
「相場は行きすぎるものだ」という反論を汲んでも、一本調子の円安が、まったくの調整なしで消費者物価PPP(購買力平価、≒130円)を一直線に超えていくのは到底想定しにくい。詳しくは、過去のコラムをご参照いただきたい。
【参考記事】
●PPP(購買力平価)で為替相場を検証!米ドル/円だけなくユーロ/円も100円割れ!?(2014年8月15日、陳満咲杜)
●浜田氏の購買力平価論は本当に正しいか?ドル/円の流れ、見極めポイントは118.70円(2015年4月17日、陳満咲杜)
(出所:公益財団法人国際通貨研究所)
この意味では、米ドル/円が大した調整なしで、これから126~127円にトライしていくのならば、下記の2点を織り込んだ値動きだと悟るべきだろう。
1.米利上げという材料を織り込んでいる。
2.日銀の「三度目の正直」がないかもしれない。
米利上げや日銀政策などファンダメンタルズについてはまた別途話したいが、相場の行きすぎを目一杯想定すれば、130円の大台打診を可能性としては否定できないとしても、130円以上のさらなる円安の定着はやはり困難だと思う。
130円以上の円安は、1回大きな調整(10円以上の円高)なしでは現実的ではなく、円安予測一辺倒になりやすい現在だからこそ、冷静になりたい。短期スパンはともかく、中長期スパンの投資家にとって、125円以上のレートでは、米ドル資産をいったん円転する好機でもあろう。
■2つの通貨ペアがバトンタッチしてポンド/円上昇をサポート
次にクロス円の動向も気になる。ドルインデックスが5月安値をもって大型な調整相場を完成したのであれば、これから高値トライしていく公算が大きいので、ユーロ、英ポンドなど外貨の対ドルでのリバウンド、すでに終了したか、これから終焉に向かう確率が高い。
米ドル高から生じた外貨安がクロス円経由で円高圧力に化した場合、米ドル/円の頭を抑え込むことも十分想定できる。
高値を更新し続けている英ポンド/円は好例であろう。
英ポンド/円は英ポンド/米ドルの大幅切り返しとリンクした形で4月高値から大きく反騰。英ポンド/米ドルの反騰は5月14日(木)で一服したが、米ドル/円が同日安値から大きく上昇してきたので、今度は米ドル/円が英ポンド/円の上昇トレンドを牽引する形となった。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
換言すれば、米ドル/円が保ち合いを続けている間は英ポンド/米ドルの上昇が効き、逆に英ポンド/米ドルのスピード調整中は、米ドル/円の急騰が効いてきたわけだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
となると、少なくとも片方の通貨ペアがベア(下落)トレンドでないことが重要で、そういった環境が崩れた場合は、クロス円と米ドル/円がお互いの上昇を推し進めるような関係も望めないわけだ。
しかし、ドルインデックスの上昇トレンドは、まだ続く公算が大きく、これから3月高値をトライしていくとみられる。この場合、ユーロ、英ポンドなど外貨がベアトレンドを加速していく確率も高いから、これらの通貨は対円でも反落してくるだろう。
円安の最終段階において、米ドル/円が反転するまで、クロス円には円安の余地がまだ残されるものの、過大な期待は禁物であろう。
市況はいかに。
(15:00執筆)
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