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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

95年の榊原ブルドーザー介入と似ている?
ドル/円は史上最安値から60円の円安も!

2015年06月04日(木)18:20公開 (2015年06月04日(木)18:20更新)
今井雅人

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■一時、125円台に達した米ドル/円! その後は…

 前回のコラム執筆時から見ても、米ドル/円はさらに上昇(米ドル高・円安に)。

 一時的ではありましたが、とうとう125円台に達しています。

米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 その後は、達成感が出たことや、ユーロ/米ドルでユーロ高・米ドル安が進んだことの影響を受け、少し落ち着いています。

■米ドル/円上昇の背景は「米ドル高」よりも「円安」

 今回の米ドル/円の上昇は、確かに、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が年内に利上げを示唆するような発言をしたことで、米ドルが買われ、米ドル/円も米ドル高・円安になった局面もありましたが、その後の動きを見ていると、どうも「米ドル高」ではなく「円安」という要因で動いています。

 それはユーロ/米ドルの動きを見ればよくわかります。ユーロ/米ドルでは、EU(欧州連合)諸国の景気が予想以上に良さそうだということなどから、むしろユーロ高・米ドル安が進んでいます。

ユーロ/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足

 当コラムでよく例に挙げている、IMM(国際通貨先物市場)ポジションを見ても、かなりユーロ/米ドルのショートポジションが積み上がったままの状態だったので、その巻き返しが起きています。

IMM(国際通貨先物市場)のポジション状況

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移

 その結果として、ユーロ/円でユーロ高・円安が進み、6月に入ってとうとう140円の大台に乗ってきました。少し、局面が変わってきたなという印象です。

■米ドル/円の次の目標は、135.20円水準か

 さて、今度の相場ですが、30年ぐらいの長期のチャートを見てみると、2007年の高値124.14円を上抜けてきているので、そうなると次の目標は2002年の高値である135.20円という水準が視野に入ってきます。

【参考記事】
買いが買いを呼び、ドル/円は125円目前! 相場上昇の裏に外国人投資家の存在あり(5月27日、今井雅人)

 もし、そんなことが起きれば、2011年につけた史上最安値の75.311円から始まっている上昇相場であるので、60円も円安が進むことになり、それはないだろうと思われる方がいるかもしれません。

米ドル/円 月足

(出所:米国FXCM

 しかし、かつてそのようなことが実際にありました。

 それは、1995年に79.75円の安値をつけてから、1998年に147.64円の高値をつけるまで、実に68円近く円安が進行した局面です。

 このときも、米ドル/円は1米ドル=50円ぐらいまで円高になってしまうのではないかという声が高まっていた時、当時、国際金融局長だった榊原英資さんが、ブルドーザー介入と言われた大量の米ドル買い介入をしながら、国内の機関投資家の海外への投資規制を緩和して、どんどん海外に投資するように仕向けるとともに、海外のヘッジファンド、国家ファンドなども巻き込んで円安相場への大転換をさせました。

■1995年当時と似ている! 円安トレンドはまだまだ続くかも

 今回はどうでしょうか?

 まず、安倍政権は、日銀に大胆な金融緩和を実施させました。

 それと合わせて、年金積立金管理運用独立行政法人、いわゆるGPIFの改革を行い、株式や海外のリスク資産に積極投資をさせてきました。

 それに合わせる形で、国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校共済、ゆうちょ、かんぽなどがリスク資産への投資をどんどん推進しています。この手法は、1995年の時に似ていると感じないでしょうか?

 そうであれば、今回の円安トレンドがまだ続く可能性は十分あるわけです。

米ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

 あとは、政治サイドから牽制がいつ頃出てくるかでありますが、今のところは静観しているようです。

 それを感じさせるのは、先週5月27日(木)~29日(金)に独ドレスデンで開催されたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)での麻生副総理兼財務金融相の記者会見です。

 そのやり取りをご紹介しておきます。

【麻生大臣記者会見(5月28日)の概要抜粋】

問)為替相場でドル高が進んでいますけれども、今日の議論で為替の話が出たのでしょうか。

答)ありません。

問)円安が進んで12年ぶりの安値まで来ています。これが日本経済に与える影響は良い面と悪い面の両面あると思うのですが、さらに円安が進んだ場合の日本経済への影響についてはどのように見てらっしゃるのでしょうか。

答)足元の円安方向に、この数日間をみれば、荒い動きがあると私どもも見ておりますけども、市場の動きを今後とも注意深く見ていきたいと思っています。

問)為替について、日本への影響ということなのですけれども、円安が急激に進んだ場合は、国内でいうと物価の上昇があると思うのですが、やはり家計への圧迫が出てくると思うのですけれども、こうした急激な動きになった場合の大臣のお考えはいかがでしょうか。ルー財務長官との間で、為替について意見が交わされたという報道があるのですけれども、どのような意見が交わされたか明らかにできることがありましたらお願いします。

答)少なくとも為替等の話、アメリカとの話について、その内容を話すつもりはありません。相手側が話した内容を発言しないことになっているのだから、何を話したかを言うことはありません。それから基本的に、為替については、G7やG20声明でこれまでコミットメントしていますので、それを再確認したということです。


(出所:財務省

 米ドル/円の125円前後の動きを見ながら、紹介した記者会見内容を今後の展開を予想する手掛かりとしていきたいと思います。


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