中国発のリスク回避が世界同時株安に
中国経済の急減速を発端とした、金融市場のリスク回避が止まらない。
【参考記事】
●2015年は中国で「李万姉妹」事件発生!? 経済危機警戒、リスク資産から手を引け!(8月21日、陳満咲杜)
先週末、8月21日(金)の海外市場では、NYダウが前日比500ドル以上急落。世界的にリスク回避一辺倒の展開となった。
(出所:CQG)
週明け、8月24日(月)の東京市場でも、リスク回避は収まるどころか、さらに強まるような動きをみせる中、アジアの株式市場も総崩れ。今回の世界同時株安の震源地・中国では、上海総合指数が、8%を超える暴落となった。
(出所:CQG)
そして、日経平均も、8月24日(月)の取引で、一時、前営業日比で1000円に迫る急落となり、1万8500円台をつけている。
(出所:株マップ.com)
為替相場は「円高・ユーロ高」が進む
このように、世界の株式相場は急落したわけだが、為替相場はどうなのかといえば、株式ほどではないにせよ、先週末からリスク回避色がかなり強くなっている。
その結果、全般的に、「円高・ユーロ高」が進んでいることがわかる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)
個別通貨ペアを見てみると、米ドル/円は、一時、120.20円台まで急落。ユーロ/米ドルは、一時、1.150ドル台まで急上昇している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
なぜ、リスク回避で「ユーロ高」なのか?
「リスク回避=円高」の動きならここ数年以上に渡っておなじみの動き。安全資産の円が買われているのか…と判断できそうだが、これが「リスク回避=ユーロ高」と言われても、欧州経済は芳しくないし、ECBがQE(量的緩和策)を実施している最中で、「なんでユーロ高になるの?」と混乱してしまう人がいるかもしれない。
これについて、ザイFX!の人気コラム「西原宏一のヘッジファンドの思惑」でもおなじみ、西原宏一さんは、メルマガ「FXトレード戦略指令!」の中で解説してくれているので、取り上げたい。
【参考コンテンツ】
●「ザイFX!×西原宏一 FXトレード戦略指令」
ECB(欧州中央銀行)はQEで市場のお金(ユーロ)をじゃぶじゃぶにしたことで、ユーロはファンディング通貨(=キャリートレードをするときに調達される通貨)となり、キャリートレード(※)によって、これまでユーロは売られていた。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利が非常に低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことをいう)
現在は、株式市場が急落したことにより、その巻き戻しとも言うべき動きが入っているということのようだ。
ただ、西原さんは、QEが実施されている通貨(ユーロ)を買うというのは、なかなかしっくりこなかったとしながらも、過去2カ月、株が軟調に推移するときは、ユーロが反発していた点に注目していたとのこと。
リスク回避の中、南アフリカランド/円が暴落
このように、リスク回避色が強まっている為替相場だが、その中でも、本日(8月24日)急激に動いたのが、南アフリカランドだ。まず、以下の、南アフリカランド/円の30分足チャートをご覧いただきたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:南アフリカランド/円 30分足)
こちらを見ていただくと、南アフリカランド/円は、9.4円近辺から8.4円付近まで、10%以上も下落。その後、9円台前半まで戻すなど乱高下している。
これがどのくらいの動きなのか米ドル/円でたとえるなら、121円近辺から108円台まで13円下落した後に、118円まで急反発したということ。
しかも、この値幅を8月24日(月)の早朝、7時30分から9時30分の2時間程度で動ききったというのだから驚きだ。
要因については、金融市場全体の全般的なリスク回避的な動きによるもののようだが、ここまで短時間で乱高下すると、それ以外にも何かあるのでは?と勘ぐってしまいたくなるほどだ。ただ、今のところ、ほかの要因についてはわからない。
次に、週足チャートもご覧いただきたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:南アフリカランド/円 週足)
こちらを見ていただくとわかるように、1年程度かけて動く値幅を、わずか2時間程度でほぼ達成してしまったことになる。
米系の大手金融機関・モルガンスタンレーは、中国関連で悪影響を受ける10カ国の通貨を「Troubled 10」とし、それら諸国の経済の急減速を警戒していた。南アフリカもその国のひとつされていたのだが、まさに、その直撃を食らった格好だ。
【参考記事】
●中国人民元切り下げで売り推奨の通貨は? さらに利下げ濃厚のNZドルは売り戦略で!(8月18日、西原宏一&松崎美子)
●上海株暴落、商品市況悪化でも豪ドル下落が緩慢だった理由判明! 豪ドル下落再開か(8月20日、西原宏一)
最後に、南アフリカと関係の深い、金相場も見ておこう。
(出所:米国FXCM)
こちらを見ると、リスク回避で安全資産である金が買われている。南アフリカは金の産出国なので、金相場の上昇は南アフリカランドを下支えする要因になると通常は言われている。
しかし、今回は金相場の上昇と南アフリカランドの急落が同時に起こるような形となっている。
なお、現在、金相場は上昇しているが、リスク回避が限界まで進むと、株価急落などによる損失穴埋めのために機関投資家などから換金売りが入り、金相場ですら下落することある。まだ、現在のリスク回避がそこまでの局面には至っていないということかもしれないが、今後の金相場の動きにも注意が必要だ。
ちなみに、南アフリカランドの取引に興味がある人は、以下のコンテンツをご覧いただきたい。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:南アフリカランドが取引できるFX会社
突如強まった、中国発のリスク回避の動き。世界同時株安はどこまで続くのか、それによって為替相場はどう動くのか? 予断の許さない状況が続きそうだ。
(ザイFX!編集部・庄司正高)
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