■リスクオンムードをどれぐらい継続できるかは疑問
となると、ECBの緩和姿勢に対し、目先は歓迎一色で、米国株、日本株はともに大幅続伸、米ドル/円も121円の節目打診寸前となっているが、果たして、こういったリスクオンのムードが、どれぐらい継続できるか疑問だ。
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目先、良い材料と解釈されても、よく吟味して、やはり不安材料と解釈されると、状況は一変していく可能性が大きい。
ギリシャショック時の一本調子の下げとは違って、キャリートレードの調達通貨としてのユーロは、リスクオフ時には買戻す対象になるから、ユーロ安も一筋縄にはいかない。
こういった教訓、実は3月以降の相場から得られたはずで、市場関係者も一段と慎重になっているところではないかと思う。ドラギ・マジックの効用が、じわじわ剥落していくことも想定されるかと思う。
さらに、外部環境の急変、すなわち「ブラックスワン」の出現は、今回のECBの姿勢にも緊密な関係を有する。換言すれば、ECBの行動は、自ら「ブラックスワン」を作り出すかもしれない。
■今回もECBの前にスイス中銀が何か行動を起こす!?
ブラックスワンと言えば、今年(2015年)1月のスイスショックが記憶に新しい。市場関係者はECBの金融政策を巡って、警戒すべき相手が他にあると指摘する。それはあのスイスショックの張本人であるSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])であり、その行動に懸念が膨らむ。
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今年(2015年)1月、ECBのQE(量的緩和)政策の衝撃を防ぐために、SNBはスイスフランの上限を撤廃し、あのスイスショックを引き起こしたわけだから、SNBは今回も先手を打ち、何か行動に出るのではないかとウワサされている。
周知のように、スイスショックで多くの為替ブローカーや投資銀行が大損失を被った。あまりにも衝撃的な出来事で市場の流動性が完全になくなったことも記憶に新しい。
したがって、ECBの行動が確実であれば、SNBはスイスフランを売らざるを得ないだろう。スイスフランの割高を再三にわたり主張してきたスイス当局にとって、これ以上のスイスフラン高は容認できないと思われる。
■第二のスイスショックが起こるのか?
SNBのトーマス・ジョーダン総裁は、8月と9月に連続してスイスフラン高に対する懸念を表明し、「マーケットに介入する用意があり、かつ上限を設けない」と明言していた。
冗談ではなく、介入をにおわせるSNBのジョーダン総裁 (C)Bloomberg
理論上、スイスの金利は-2%に引き下げても問題ないとエコノミストたちは言う。ユーロ安の受け皿がスイスフランに集中している状況を改善しない限り、スイスの経済成長はマイナスになる可能性があると言われる。
したがって、SNBの先手は、市場介入に大幅マイナス金利といったところだが、これが効かない場合、さらなるサプライズ的な行動に出てもおかしくなかろう。この場合、やはり、第二のスイスショックとなるだろうから、ユーロ安は一筋縄にはいかない。
ただし、目先、ユーロは一段の安値を覚悟した方がいいだろう。ユーロ/円の連れ安に見られるように、ユーロ安がクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)経由で米ドル/円の頭を押さえ込む可能性は大きい。
米ドル/円はリバウンドしているものの、頭が重い状況は変わらないとみる。市況はいかに。
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