■市場にも「建前」と「本音」がある!
では、米ドル高トレンドは終焉したのだろうか。
結論から申し上げると、筆者は米ドル/円を除き、米ドル全体の上昇トレンドはなお続いており、特にユーロ/米ドルに関しては、ユーロリバウンドの拡大はむしろ、戻り売りの好機だと思う。換言すれば、先週(12月4日)の見通しを維持、結論は変わらないということだ。
【参考記事】
●ドラギ・ショックでユーロ爆上げ! しかし、米ドル高トレンドは終わらず、押し目の好機(2015年12月4日、陳満咲杜)
市場には人間と同様、建前と本音がある。建前上、ノボトニー氏の発言に反応したようにみえても、本音は違うところにある。
今回の本音はすばり、「やばい、米ドルをいっぱい買ってるから、ポジションを落とさないといけない」というところにあるのではないかと思う。
ポジションを落とす必要があるとしたら、理由はただ1つ。ポジションが過大に積み上げられており、そのようなゆがんだ構造を修正する必要があるからにほかならない。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジション推移)
実際、ECBの政策に過大に期待し、ウォール街の煽りもあって、市場関係者は目いっぱいユーロ売り・米ドル買いのポジションを積み上げていたから、「損切り」はなお続きやすく、また、継続させる必要があるのだ。
■「損切り」を「継続させる必要がある」とはどういうことか
米ドルのロングポジションが過大だったから、損切りが続くという話は理解されやすいかと思うが、「損切り」を「継続させる必要がある」という言い方がなかなかわかってもらえないかもしれない。この理屈を説明するために、やや脱線的な話をしよう。
市場は非常に複雑で奥深いものだが、単純に言えば、ロング筋とショート筋の戦場とたとえられる。ロングにしてもショートにしても、相手なしでは成し遂げられないことがある。それは他ならぬ、トレンドの大幅推進である。
たとえば、先週(11月30日~)のECB理事会前の状況では、ネコも杓子ユーロ売り・米ドル買いを仕掛けていたから、一定の水準に到達したら、もう新規の売りは入ってこないことになる。
これではユーロがさらに下落するとしても、なかなか勢いを見せない可能性が大きい。なぜなら、少し下げるとユーロ売りの利益確定、すなわちユーロの買い戻しが入ってくるので、大きなトレンドの推進が望めないからだ。
ゆえに、みんなが持っている同じポジションをいったん大量に落とさせないと、さらなるトレンドの推進が望めないから、どこかでいっせいに反対の値動きを拡大させ、ポジションのバランスを再構築する必要がある。
■再度ユーロ高があれば、絶好の売り好機!
今回の、ECB前におけるウォール街の煽りや、その後のノボトニー氏発言に乗ったユーロ買い戻しの拡大には、こういった思惑が透けて見える。もちろん、いわゆる陰謀論を述べているわけではないから、相場の真実の一面として認識していただければ幸いである。
まとめてみると、現段階でユーロの買い戻しはすでに完了したか、間もなく完了する公算が高いとみる。したがって、仮に近々再度ユーロ高があれば、絶好の売り好機だとみる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
米ドル/円の話はまた次回。市況は如何に。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)