「 ザイFX!で2014年を振り返ろう!(1) 【相場:前編】金融政策の方向性が軸に」からつづく)
■米ドル/円はレンジ相場脱却で122円近辺まで急騰
ここからは、2014年の米ドル/円の動きを見ていこう。
米ドル/円は、2014年1月は下落が目立ち、105円台から101円水準まで下落した。
【参考記事】
●株安・円高・米ドル安は一時的な調整。米雇用統計の結果を好意的にみるワケは?(1月16日、今井雅人)
しかし、2~8月は、101.7円台~104.2円台という狭い範囲のレンジ相場に。あまりに動きがないことから「低ボラティリティ相場」とも呼ばれていた。
【参考記事】
●「FX友の会 in 東京 2014」潜入レポ(4)もしも、日本国債が暴落しそうになったら…
●異例の低ボラティリティが続くドル/円より、注目は250pipsも急落したユーロ/豪ドル!(6月12日、西原宏一)
それ以降は、米ドル高・円安が急激に進み、12月5日(金)には、2007年7月以来の高値となる122円近辺まで上昇した。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
2014年後半の米ドル/円は異常とも言えるスピードで上昇したわけだが、これについては、前編でも取り上げた、10月31日(金)の日銀による追加緩和が大きな要因となった。
そして、日本株や外国債の運用比率引き上げをメインとした、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用ポートフォリオの変更なども寄与したと言えるだろう。
【参考記事】
●ザイFX!で2014年を振り返ろう!(1)【相場編:前編】金融政策の方向性が軸に
●日銀とGPIFのダブルバズーカ炸裂で、ドル/円は120円へ向け上昇の可能性濃厚(11月6日、西原宏一)
●金融市場に衝撃が走った3つの要因とは?ドル/円は年内に120円まで上昇の可能性(11月6日、今井雅人)
年末に入り、さすがに行き過ぎ感もある中で、世界経済への不安からリスク回避主導で米ドル/円は反落し、一時、116円の大台を割り込んだものの、1年を通して見ればかなり大きな上昇になった。
【参考記事】
●1カ月強で11円超の円安はスピード違反! 雇用統計は結果がどうあれ利確の動きか?(12月5日、陳満咲杜)
■株式市場も好調! 日経平均は1万8000円乗せ
日銀が追加緩和に動く中、日本株も好調。2014年前半の日経平均は1万4000円~1万5000円台を中心とした推移で方向感が出なかったものの、後半に入ると上昇基調を強め、1万8000円の大台に乗せた。

(出所:株マップ.com)
日銀は10月31日(金)に実施した追加緩和の中で、ETFおよびJ-REITについても、保有残高を3倍に増やし、それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買い入れを行うとしていたが、こうした日銀の買い入れが実施されたことも日本株の上昇を支えたようだ。
また、2014年の米国株は好調な米国経済指標や企業業績を後押しに年初から上昇幅を広げる展開で、史上最高値を更新する動きを続けた。

(出所:米国FXCM)
■消費増税先送り、衆院解散・総選挙は与党の圧勝!
そして、11月に入って降って湧いたように話題となったのが、日本の消費増税延期と衆議院解散・総選挙だった。
そうした中で11月17日(月)に発表された、日本の7-9月期GDPが予想外のマイナス成長となったあと、18日(火)には安倍首相が消費増税延期と衆議院解散を正式に表明した。
【参考記事】
●消費増税決定でも延期でも株高・円安か。米ドル/円は112円へ向けて上昇の可能性(10月30日、西原宏一)
●衆議院解散・総選挙で株高・円安継続か。ドル/円は120円へ向けて上昇継続とみる(11月13日、西原宏一)
そして、12月14日(日)に実施された衆議院選挙では、自民党と公明党の与党で326議席を獲得。これは安定した国会運営を行うために必要とされる絶対安定多数の266議席を大幅に上回り、全475議席の3分の2を上回る圧勝だった。
■OPEC減産見送りで原油相場が急落、ルーブルは暴落
また、商品相場では、2014年後半にかけて原油相場が急落。世界経済の減速懸念により、需要が減少するとの見方が背景にあった模様だ。
さらに、11月27日(木)に開催されたOPEC(石油輸出国機構)の総会で減産の見送りが決まったことが、原油相場の下落に追い打ちをかけ、12月中旬には、1バレル=50ドルの大台まで下落した。2014年夏頃までは100ドル以上だったわけだから、非常に大きな下落だ。

(出所:米国FXCM)
こうした動きを受けて産油国通貨が軒並み急落。特にロシアの通貨ルーブルは大暴落となった。
【参考記事】
●衆院選までドル/円は短期レンジトレード!原油安など悪材料多数の豪ドルは売り!(12月2日、西原宏一&松崎美子)

(出所:CQG)
こうした状況もあって、ロシア中銀は12月11日(木)の金融政策決定会合で政策金利を9.50%から10.50%に1%引き上げたが、ロシアルーブルの下落に歯止めはかからず。
すると、ロシア中銀は12月15日(月)に今度は6.5%もの緊急利上げを実施。ロシア中銀は声明で「著しく高まっている通貨ルーブルの下落リスク、およびインフレリスクの抑制が決定の狙い」と説明している。
このロシア中銀の大幅利上げを受けて、ロシアルーブルは乱高下しつつ、さらに急激なロシアルーブル安が進行したのだが、その動きについては以下の記事をご覧いただきたい。
【参考記事】
●【ロシア異変】1日で14%ものルーブル安! ロシアは政策金利を6.5%上げて17%に!
●緊急利上げ後も約20%もロシアルーブル安が進行! その後は約11%反発と大荒れ!
■スコットランド独立の賛否を問う住民投票は「否決」
ほかにも、スコットランドの英国からの独立の賛否を問う住民投票が9月18日(木)に実施され話題となった。一時は、独立が可決されるのでは…との見方が優勢となり、為替相場では英ポンドが急落する場面も見られたが、結果は反対多数で否決された。
【参考記事】
●スコットランド独立の可能性が急浮上! 経済への影響は? ポンドは暴落するか?

(出所:米国FXCM)
仮にスコットランドが独立となった場合、独立推進派で知られるスコットランド国民党(SNP)は北海油田から多くの歳入を得られるとしていたのだが、原油相場の急落を見ると、仮に住民投票で独立が可決した場合はどうなってしまっていたのだろうか。
■SNBの防衛ラインに接近するユーロ/スイスフランも話題に
また、ユーロ安が進んだことでユーロ/スイスフランも下落し、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が「これ以上はスイスフラン高を進ませない」と設定した防衛ラインである1.2000フランに接近したことも話題の1つ。
【参考記事】
●【警戒】スイス中銀の防衛ラインに接近!ユーロ/スイスフランを取引できる口座は?
●スイス中銀の防衛ライン1.2フランに超接近!ユーロ/スイスフランはなぜ下落している?

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 週足)
11月30日(日)に実施された、SNBの金準備に関する国民投票が可決された場合はSNBの防衛ラインを割るのでは…との見方も一部にはあったが、これが否決されたことで、SNBが設定する防衛ライン1.2000フランは維持された。
ここまで2014年のマーケット動向を振り返ってきたが、いかがだっただろうか。
今年は、記事の中で取り上げた日・欧・米の金融政策の方向性の違いが明確になったほか、各国の金融政策に対する市場の思惑も二転三転するなど、「金融政策」が大きなテーマとなった年だったのではないだろうか。
また、2014年前半と後半で動きがまったく違う相場になったことも、大きな特徴だった。ただ、後半は円安・株高が進むイケイケムードのリスクオン相場だったものの、年末にかけてはそれが巻き戻され、ちょっと波乱の相場展開になっている。
この先、2015年はどんな相場が待っているのか? 年明け1月からのマーケットに注目したい!
(「ザイFX!で2014年を振り返ろう!(3) 【業界:前編】BO再燃と熱いスプレッド競争」へつづく)
(ザイFX!編集部・庄司正高)
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