■「マイナス金利が効果的」と発言していた中島厚志氏
ただ、筆者が調べてみたところ、事前に何かを察知していた人もいたのかもしれないと思うことも多少はあった(「あとから」の話で恐縮だが…)。
1つは2016年1月25日(月)にテレビ東京系の「ニュースモーニングサテライト」(モーサテ)に出演していた経済産業研究所の理事長・中島厚志氏である。
この経済産業研究所というのは経済産業省所管の独立行政法人。そして、言うまでもなく、テレビ東京は日本経済新聞系のテレビ局だ。
中島氏はモーサテの中で、「『逆オイルショック』 不都合な真実」と題して、解説をしていた。1970年代のオイルショック時には強烈なインフレが問題となったわけだが、今は「逆オイルショック」と呼ぶべき状態となっており、世界的なディスインフレなどが起きていることを解説していた。
その最後に、「今回、日銀は追加緩和に踏み切る可能性が強い」と断言しており、手段については「マイナス金利が実はもっとも効果的」とマイナス金利にだけ言及していた。さらに「投機筋の円買いを締め上げる」にはそれが一番いいと話していたのである。
穏やかな紳士にしか見えない中島氏だが、発言内容は結構激しいものだった…かも?
■元日銀副総裁岩田一政氏もマイナス金利が望ましいと発言
また、2016年1月28日(木)に朝日新聞のウェブサイトで公開された、岩田一政氏への取材記事(※)でも、マイナス金利に触れられていた。
(※記事タイトルは「『マイナス金利が望ましい』 元日銀副総裁・岩田一政氏」)
岩田氏は2003年から2008年まで日銀副総裁を務めていた人で、日銀総裁候補と言われていた時期もあった。現在は日本経済研究センターの代表理事・理事長を務めている。日本経済研究センターは民間の研究機関だが、初代理事長は元日本経済新聞社の社長であり、場所は日本経済新聞社の東京本社ビル内にある。
この記事の中で岩田氏は現在の日銀の量的・質的金融緩和政策は限界が近づいており、以下のとおり、ここからやるとしたら、「マイナス金利」が望ましいと述べていた。
「私は『マイナス金利』政策をとることが望ましいと思う。出口における赤字発生を考慮すると、ここまで量的に日銀のバランスシートを拡大してしまったら、金利目標に戻るしかない。伝統的な金融政策の枠内で金利がゼロまで下がってしまい、それ以上下げられなかったから、量的緩和に踏み切った。だが、金利はマイナスにするという手が残っている」
また、マイナス金利の効果としては、「一番明確なのは為替レートへの影響だ。金利をマイナスにまで下げれば、為替レートを円安にすることができる」と話していたのである。
日銀発表前にマイナス金利に言及していた中島厚志氏と岩田一政氏。2人ともその効果として「為替の円安」を挙げていたのが印象的だ。
今回の日銀によるマイナス金利導入は確かにサプライズだったが、政府もしくは日本経済新聞に関係する人たちの中には、もしかしたら、マイナス金利導入を何となくはかぎつけていたのかも…?と思われる人がいたように思われるのだ。
今後のトレードの参考に以上のことをお伝えしたい。
(ザイFX!編集長・井口稔)
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