■急激な「株安・資源安・円高」はいったん収束
みなさん、こんにちは。
2016年スタートとともに始まった急激な「株安・資源安(原油安)・円高」相場ですが、日銀のQQE3(量的・質的金融緩和第3弾)期待の高まりとともに、いったん収束(前回コラム参照)。
【参考記事】
●ドル/円は一時115円台! 日銀の追加緩和期待高まるが中期の株安・円高は変わらず(1月21日、西原宏一)
市場参加者の間には、今回のリスクオフ相場に対して、G7(先進7カ国)が協調してマーケットを沈静化させるのでは…という観測(期待?)がありました。
■ドラギ発言が黒田総裁のQQE3を連想させることに…
そして、その期待どおり、1月21日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会で、ドラギ総裁は3月の追加緩和を宣言しました。
【参考記事】
●バズーカ発射へと追い込まれる黒田総裁。追加緩和実施ならドル/円はどこまで上昇?(1月26日、西原宏一&松崎美子)
彼の突然の追加緩和宣言が、FOMC(米連邦公開市場委員会)のハト派的なトーン、そして、何よりも1月29日(金)に予定されている黒田日銀によるQQE3を連想させ、「株・原油・米ドル/円」を一気に反発に転じさせることに成功しています。

(出所:CQG)

(出所:CQG)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
今月(1月)に入ってのマーケットは各国の経済指標が重要ではなく、この急激な「株安・資源安」が止まるのかどうかに焦点が当たっています。
この意味においては、ドラギ総裁はさすがの手腕で、2カ月先の緩和予告という(今のところ)口先だけで、グローバルな株価の下落を食い止めています。
連携して、1月26日(火)~27日(水)にかけて開催されたFOMCは極めてハト派的なトーンに終始。
そのバトンを渡されて、世界中が注目している日銀金融政策決定会合の結果公表が、明日(1月29日)予定されています。
■マジノ線は米ドル/円が115円、日経平均は1万6000円
ドラギ総裁の追加緩和宣言に呼応して、マーケットは素直に、リスクオフの修正に入り、株は反発、米ドル/円も一時、119円台まで回復しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
ここで米ドル/円の動向をテクニカル分析で確認してみます。
まず、米ドル/円は2014年10月15日(水)からのサポートが2016年年初に崩れてから円高相場がスタートしています。

(出所:CQG)
次に注目されるのが75週移動平均線です。
2012年来、3年間にわたって米ドル/円をサポートしてきた75週移動平均線。こちらも、2016年年初にブレイクされてから米ドル/円の下落に弾みがつき、一時は115.98円まで急落。
米ドル/円のマジノ線(115.00円)に向けて急速に接近。
(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)
このリスクオフな相場展開の中、ドラギ総裁のコメントが黒田総裁の決断を連想させ、マジノ線ブレイクは回避されています。

(出所:CQG)
日経平均のマジノ線である1万6000円も同様にサポートされた格好。

(出所:株マップ.com)
■運命の1月29日。黒田日銀が2016年前半相場のカギを握る
あとは、日銀の黒田総裁が1月29日(金)にどう動くのかが、今年(2016年)前半の相場動向のカギを握っています。
重要なことは、QQE3の内容よりも、金融政策の手詰まり感を出さないことです。
【参考記事】
●バズーカ発射へと追い込まれる黒田総裁。追加緩和実施ならドル/円はどこまで上昇?(1月26日、西原宏一&松崎美子)
以前もご紹介させていただきましたが、今回のような急速な株安・円高になればなるほど、日銀によるQQE3期待は高まります。
【参考記事】
●ドル/円は一時115円台! 日銀の追加緩和期待高まるが中期の株安・円高は変わらず(1月21日、西原宏一)
●ソロスも警告するリーマンショック再来はあるのか? その鍵を握るのは米国株…!?(1月12日、西原宏一&松崎美子)
●黒田総裁の緊急帰国が市場の話題に…。リスクオフかオンを見る2つのポイントとは?(1月19日、西原宏一&松崎美子)
今回のリスクオフ相場において、日経平均はその重要なサポートである1万6000円を先物市場で一度割り込んでいるため、日銀による追加緩和期待が高まるのはある意味当然なわけです。
そのため、1月29日(金)の日銀会合の結果公表に向けて、マーケットの期待は急激に高まっており、今回、黒田日銀がマーケットにサプライズを与えることが非常に難しい状態となっています。
昨年(2015年)12月の日銀の決定を受けたあと、急激な円高相場となったことは記憶に新しいところで、中途半端な緩和策は逆に「株安・円高」相場を加速させてしまいます。
【参考記事】
●円安・株高の急上昇から一転急落へ!市場を失望させた日銀の「補完措置」とは?
ただ、マーケットが想定している以上の緩和策が出しにくい面も。今年(2016年)は参院選という重要な局面も控えているため、重要なカードは温存しておきたいところだからです。
■QQE3の有無よりも、手詰まり感が出ないかどうかが重要
どちらにせよ、1月29日(金)の日銀会合の結果がどういう内容での発表となるのかは本稿執筆時点では不明ですが、金融政策の手詰まり感さえ出さなければ、マーケットはいったん反発するのではないかと想定しています。
今週(1月25日~)のマーケットの反発は「黒田日銀への期待」もありますが、「2016年年初の急激な株安・円高相場」の自立反発という側面もあります。
そのため、QQE3という重要なカードを切らなくても、リスクオフ相場に対してはいくらでも手段はあるということをマーケットに明確に宣言できれば、マーケットは沈静化するのではないでしょうか?
逆にQQE3を発動し、一時的にマーケットが反発しても、政策の出尽くし感が出てしまえば、再びマーケットが株安・円高に走る可能性は高まります。

(出所:株マップ.com)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
これまで黒田日銀は、適切なマーケットとのコミュニケーションによって、「日本株と米ドル/円」の安定に寄与してきましたので、1月29日(金)の日銀会合の結果公表とその後の声明をうまく乗り切れるのではないかと期待しています。
黒田日銀の手腕への期待感から反発に転じた日本株、そして米ドル/円の動向に注目です。
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