■今週の値動きは「ニセモノ」政策が市場に見抜かれた結果
結局、日銀政策にしても、アベノミクスにしても、外部環境の良さに乗ってきた部分が大きく、その表面的な成果(株高・円安)をもって効かない中身をカバーできてきたが、外部環境が著しく逆転してきた今は、いくら政策を出しても中身を隠すどころか、逆に中身が露呈されることとなり、疑問視されるハメになった。
だから、今回の日銀政策の効果が1日で終わり、逆にそれ以上の株安・円高を招いたわけだ。また、ちょっと失礼な言い方をすれば、マーケットから「勘違いするな」、「もうウソをつくな」と説教されたようなものだ。
外部環境の変化とは、言うまでもないが、いわゆるチャイナリスクを機に、世界金融市場の流れが昨年(2015年)夏から、大きなリスクオンから大きなリスクオフへ変わってきたことだ。
政策がホンモノなら、こういったリスクオフの環境でも効果を発揮するはずだ。逆に言うと、「ニセモノ」政策は、外部要素に頼って一時的にホンモノのように見えても、いつかは市場に見抜かれ、また、しっぺ返しを食らう。今週(2月1日~)の値動きは、まさにそのとおりなのではないだろうか。
■マイナス金利を拡大していくのは賢明ではない
ここで早くも、日銀の次の一手に期待する声が上がっている。こういった声は、まったく失敗の本質を理解しておらず、さらなる大きな失敗を期待するようなものだ。
たとえとして、もしかしたら適切ではないかもしれないが、緩和、マイナス金利の拡大など金融政策ばかりに頼る姿勢は、薬物依存症と基本は同じで、「効かないから、もっとくれ」と言っているようなものだ。
国債のすべてを日銀が買い取り、株式ETFの6割以上を日銀が買い占めている上、さらにマイナス金利を拡大していけば、出口は完全にふさがってしまうだろう。
黒田さんがこのあたりのことをどのぐらい意識しているかは定かではないが、日銀内部の焦りはしっかり確認できる。
今回の政策決定は賛成5に対し、反対4だったが、賛成票には総裁ご自身も入っている。つまり、総裁以外の委員の半分は反対していたのだから、果たして次のマイナス金利拡大を仮に黒田さんが提案しても、何人が賛同してくれることだろうか。
実際、日銀のみでなく、世界中の中央銀行が金融市場の動向に自由を奪われ、身動きが取れなくなっているリスクが大きい。
■桜が咲くころの米ドル/円は110円台を打診!?
今週(2月1日~)の米ドル急落・円急騰は、米ドル全面安が背景にあることを見逃せないが、言ってみれば、金融市場が大きなリスクオフのトレンドへ転換しているから、米利上げは想定されるほどできなくなり、場合によってはゼロ金利に逆戻りしなければならないリスクさえある。
このあたりの詳細はまた次回にするが、米ドル/円は115円台以下の終値をもって円高トレンドを大きく推進、桜が咲くころには110円の大台打診を視野に入れた方が良いだろうと、まず、アドバイスしておきたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
ところで、前回のコラムでも強調しておいたが、「女神が救いの手を伸ばしてきたら、しっかりつかめ」とのアドバイスを、皆さんは実行しただろうか。
【参考記事】
●ソロスが“孫子の兵法”で中国政府を翻弄? マイナス金利導入でも昨年以上の円安なし(2016年1月29日、陳満咲杜)
もしかしたら、あのオジサンの「黒手」を女神の手と勘違いしちゃった!? オーマイガー!
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)