■イースター休暇前で調整が入りやすい地合い
みなさん、こんにちは。
今週(3月21日~)末から、欧州勢はイースター休暇に入ります。休暇前の為替相場は、今年(2016年)前半トレンドを明確に形成していた相場の調整が入りがち。
その通貨の筆頭は、前回コラムでもご紹介した豪ドル/米ドル。
【参考記事】
●鉄鉱石価格が急上昇後に急落!その影響受ける豪ドルの反落を警戒!(3月17日、西原宏一)
豪ドル/米ドルは今年(2016年)1月15日(金)に0.6827ドルの安値をつけてから、ほぼ一方的に上昇。3月18日(木)には0.7681ドルの高値まで到達しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
この要因は、前回のコラムでもご紹介したように、オーストラリアの底堅い雇用環境を背景とした堅調なオーストラリア経済、そして、米国株の反発、原油を筆頭とした商品相場の一時的な反発などが挙げられます。
【参考記事】
●鉄鉱石価格が急上昇後に急落! その影響受ける豪ドルの反落を警戒!(3月17日、西原宏一)
鉄鉱石などの商品価格が堅調さを維持できれば、オーストラリアはある程度の通貨高(豪ドル高)を許容できます。
しかし、鉄鉱石価格は上げ止まり。

そして、石炭が反落している状況での通貨高(豪ドル高)進行は好調なオーストラリア経済の足を引っ張ることになります。
■豪中銀が通貨高けん制コメントを頻繁に出すと…
そこで、前回のコラムでも紹介したように、まずRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])のデベル総裁補佐が通貨高に関してけん制コメントを表明しています。
【参考記事】
●鉄鉱石価格が急上昇後に急落! その影響受ける豪ドルの反落を警戒!(3月17日、西原宏一)
RBA's Debelle: Says would like a lower AUD (豪ドルはより低い水準が望ましい)
日本・米国・欧州が通貨に関してのコメントを控えている中、RBAは通貨(豪ドル)に関するコメントを頻発します。
このスタンスに米国側が批判しているという報道も目立ってきました。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)が豪ドル安の誘導とも受け取れる表現を昨年用いたことをめぐり、米国が懸念を示していたことが分かった。米側は自由に変動する為替相場へのコミットメントにあらためて言及し、豪当局に注意を促した。
21日の米財務省の議会報告書によれば、国際通貨基金(IMF)の米国代表事務所は昨年9月の段階で豪州について、「為替レートの望ましい方向に関する当局の公式なステートメントに関する懸念」を表明した。
豪中銀のスティーブンス総裁は7月の政策決定会合後の声明で、豪ドルの「下落の可能性は高く、必要と思われる」との認識を示したが、8月の会合後の声明では「豪ドルは主要商品価格の大幅な値下がりに順応しつつある」と表現を修正した。
出所:Bloomberg
ただ、オーストラリア当局は米国側に対して周到に根回しが済んでいるのか、今週(3月21日~)は総裁補佐ではなく、総裁であるスティーブンス氏が通貨高(豪ドル高)けん制コメントを表明しています。
「深刻な景気悪化なら他の大半の国々より緩和余地大きい」
「地域経済は改善しており、金融システムはより回復している」
「為替相場の動きが行き過ぎとなっている多少のリスクある」
「通貨高を好む中銀を探すのは難しい」
RBAは為替市場に介入しているわけではありませんが、RBAからの通貨高(豪ドル高)けん制コメントが頻繁に出るような局面では、マーケットに過熱感が出ていることが多く、時間を置いて、RBAが指摘するとおり、豪ドルは反落する傾向があります。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
■豪ドル/米ドルはテクニカル的にも調整を示唆
豪ドル/米ドルに次のようなA、B、Cの3点を取ってみます。
・今年(2016年)の安値である1月15日(金)安値の0.6827ドルをA点
・2月4日(木)高値の0.7244ドルをB点
・2月9日(火)安値の0.6973ドルをC点
これに対して、フィボナッチ・エクステンションを用いたとき、目標値のひとつとなる161.8%(1.6180)は0.7648ドルになります。
3月18日(金)高値は0.7681ドルですから、豪ドル/米ドルの上昇相場はいったん調整を演じることが示唆されています。

(出所:CQG)
加えて、3月23日(水)には、3DMA(※)を割り込み、テクニカル的には調整相場入りが徐々に濃厚となっています。
(※編集部注:DMAとはDiaplaced Moving Averageのことで、ずらした移動平均線を意味する。たとえば日足の3*3DMAとは、3日単純移動平均線を3日先行させたものになる)
また、3月23日(水)には原油相場も反落しており、豪ドル/米ドルの調整での急落に注目。

(出所:CQG)

(出所:CQG)
■英ポンド/米ドルは、イースター休暇前の調整にはほど遠い
豪ドル/米ドル以外に、2016年の第1四半期に注目された通貨ペアといえば、英ポンド/米ドルと米ドル/円。
【参考記事】
●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)
●月足終値で1.40ドル割れなら31年ぶり! 英ポンドを暴落させたボリスショックとは?(2月25日、西原宏一)
英ポンド/米ドルに関しては、原油相場の反発とともに、今月(3月)すでに大きく調整されています。
それに加えて、ベルギーで発生したテロ事件が、英国のEU(欧州連合)離脱の是非を巡る6月の国民投票に向けて、EU離脱派を勢いづけていることから、イースター休暇前の調整とはほど遠い相場状況…。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
■米ドル/円は113円台回復が調整のカギを握る
そして、マーケットに警戒感が出てきたのが、イースター休暇直前まで下値トライを繰り返していた米ドル/円。
今月(3月)は本邦の期末を控え、公的年金の断続的な日本株買い・米ドル買いがマーケットに持ち込まれた模様ですが、日本株こそ一時回復するも、米ドル/円に至っては、114円台も回復せず、先週(3月14日~)は再び110.67円まで急落しています。
【参考記事】
●ドル/円は公的資金の買いも上昇できず。110円台半ば下抜けなら104~105円へ(3月22日、西原宏一&松崎美子)
先週(3月14日~)末と今週(3月21日~)前半までに、欧米勢は米ドル/円で何度か110円台ミドルをトライするも、イースター休暇前に抜け切れず…。
テクニカル的には110円台ミドルでトリプルボトムを形成した状態で、イースター休暇目前という展開になっています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
そして、長期休暇で大きなリスクを取りたくない欧米短期筋から、まさにイースター休暇直前の3月23日(水)以降、米ドル/円の買い戻しが目立ってきました。
加えて、某米系銀行は、中期では米ドル/円の下値目線は変わらないものの、調整で117円程度まで戻るとのレポートを出し、マーケットで話題になっています。
この米系銀行は、2016年年初から米ドル/円の110円までの下落を予測していて、その銀行が中期は別として、短期的な反発を示唆していることで注目されているのです。
ともあれ、日足のTDシーケンシャル(Sequential)(※)もカウントダウンを終了し、イースター休暇を控えて、いったんの反発が示唆されています。
(※編集部注:「TDシーケンシャル」とは、トーマス・R・デマーク氏が開発したテクニカル指標の1つ)
もっとも、豪ドル/米ドルと違い、米ドル/円の上値は重く、値幅を伴わない時間調整に終わってしまう可能性もあります。
一方で、前述の豪ドル/米ドルの調整(=豪ドル売り・米ドル買い)が深くなり、イースター休暇を挟んで、全体的に米ドル買い戻しの相場展開になれば、米ドル/円の調整も値幅を伴う可能性があるため、短期のヘッジファンドは1カ月や1週間の米ドル/円のオプション購入を急いでいる模様。
米ドル/円の調整が値幅を伴うものになるかどうかは113円台を回復できるかどうかがポイント。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
イースター休暇を控え、調整相場入りした豪ドル/米ドルと、ヘッジファンドが短期のヘッジに追われている米ドル/円の動向に注目です。
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