■アベノミクスは冷めたピザ、もうおいしくはいただけない
こういった結論を得るのは難しくもなく、また、自然な結論だ。なぜなら、バブル崩壊後、大型財政出動は何度も何度も発動され、そのすべてが失敗に終わっているからだ。そしてそれが、現在の借金だらけの状況をも作り上げたわけだ。
このような危機的状況があったから、財政出動を抑え、赤字国債の発行もすべきではないといい、財政バランスの立て直しが進められてきたはずだが、いつの間にかまた逆戻り。過去の過ちを繰り返すことになるわけだから、成功するはずがない。
それでも踏み切るのなら、安倍政権の意地であり、「悪意地」(※)というほかあるまい。このままでは日本の将来は暗いと言わざるを得ないが、政治問題も絡むから、ここでは深入りしないようにしておく。
(※編集部注:「悪意地」とは中国語で、頑固に意地をはるという意味)
言いたいのはただひとつ、インフラ建設の名目でお金をばらまくとしても、効果がかなり限定されることは過去の事例で証明されてきたから、今回の政策に期待すること自体がムダで、また、この材料から明るい見通しを持つこと自体が滑稽にみえる。
となると、アベノミクス構造が打ち出され始めた頃の影響やその後の株高・円安の大相場を期待すること自体も滑稽であろう。何しろ、無理して延命を図るとしても、アベノミクス自体がいわゆる「冷めたピザ」だから、もう1回「おいしくいただく」のは現実的ではないと思う。
■足元の株高・円安はすでに政策の大半を織り込み済みか
このようなロジックが正しければ、足元の株高・円安はすでに政策の大半を織り込み、これから仮に一段の株高・円安が進行するとしても、何か他の材料なしでは容易ではなかろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 VS 円 日足)
このあたりの理屈は、6月24日(金)のコラムにて強調したように、英EU離脱は英ポンドの急落をもたらしたが、さらなる急落は、やはり離脱ではなく、そのほかの何かの材料が必要、といったロジックと同様だ。
【参考記事】
●英国のEU離脱でポンド暴落もこれ以上の下落には別材料が必要か。ドル/円も然り(2016年6月24日、陳満咲杜)
実際、英ポンドが大きくリバウンドしてきたのもそのためで、いったん織り込まれた材料が、そのままずっと作用していくのは限界がある。
■米ドル/円反騰の理由をテクニカル的にみると…
ファンダメンタルズの理由があって今週(7月11日~)から円売りが再開されたことがわかっても、テクニカル上の視点なしでは単純に後付けになる可能性が大きい。
では、米ドル/円を例にすると、安値更新せず、反騰してくる理由はどこにあるのだろうか。筆者が6月28日(火)に書いたレポートをもって説明したい、本文は以下のとおり。
(出所:CQG)
英EU離脱を受けドル/円が大きく売られ、24日大陰線を形成した。同値幅と比例する日足は昨年8月24日(共に6円超の値幅)だったので、昨年8月24日後の相場を検証すれば、いくつのヒントを得られるのでは。
昨年8月24日はダウ指数が一時1000ポイントの下げを記録、ドル/円の暴落をもたらしたわけだが、その後、同日の高、安値を超えられず、長く保ちあい相場の継続が意義なくされた。実際、同日高値をブレイクしたのを昨年11月6日まで待たなければならず、更に、同日安値を割り込みのが今年2月8日になってからであった。
また、8月24日の安値、日足におけるダブルトップとその後の下方れが示唆していた「倍返し」のターゲットと合致していた節もあって、今回5月30日高値から5月3日安値までの値幅を「倍返し」したターゲットが先週安値に近いことが示唆に富む。
総合的に見ると、24日値幅が大きかっただけに、同日高、安値を更新できるとしても大分先の可能性が大きく、余程更なる材料がない限り、目先安値を再更新していくのがハードルが高いと見る。従って、しばらく日銀の介入を必要としない上、市場正常な値動きに沿った取引プランでは、一旦レンジ取引に専念する必要があると思う。但し、今回は大きな下落波がすでに形成された後の暴落なので、昨年8月24日と違って、先に安値近辺のサポートゾーンをトライし、レンジの下限を形成していく可能性が大きいかと見る。
現在のチャートと比較してみると、こういった相場の内部構造が示唆するところが、よりご理解いただけるのではないだろうか。
(出所:CQG)
そのほかの通貨ペアに関する検証はまた次回。
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