■英国EU離脱へ! 英ポンドは31年ぶりの安値更新
世界中で懸念されてきた英国のEU離脱問題が現実になっている。英ポンドは急落し、英ポンド/米ドルは1985年以来、すなわち31年ぶりの安値を更新、円は急騰し、米ドル/円は一時99円台を記録した。

(出所:CQG)

(出所:ヒロセ通商)
ミセス・ワタナベたちが好む英ポンド/円に至っては、昨日(6月23日)高値160円から一時27円も急落し、底なしの様子をみせている。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 1時間足)
となると、本日(6月24日)は大儲けになったはずだが…実情は必ずしもそうではないようだ。なぜなら、ミセス・ワタナベたちは逆張りが大好きなので、EU残留に賭け、どうやら英ポンドのロングポジションに傾いていたようだったからだ。それについては先日、ブルームバーグが記事を出し、懸念を示していたほどだった。
筆者も懸念していた。そして、6月19日(日)に、このようなレポートを書いた。以下はその本文である。
来週英EU離脱に関する国民投票の結果が金曜(24日)未明に判断される見通しで、東京市場が事実上同結果を最初に反映するマーケットとなる。その結果、恐れらく世界金融マーケット全体に波及していくでしょう。
ウォール街は同結果次第、金融相場の激動を予測、幾分危機を「煽る」疑いがある。GSはポンドが最低10%の変動ありと指摘、また在留する場合、ポンドが5%上昇すると推測している模様。
メリルリンチはより詳細の予測を発表している。離脱する場合、円やスイスフラン以外、ドルが急伸する可能性が高いと指摘、米利上げ観測が一段と後退するものの、リスクヘッジの需要が高まり、資金がドルに流れ込むというロジックだ。同行のロジックが正しければ、クロス円における急落がもっとも警戒されるべきかと思われる。
何しろ、報道によると、ミセス・ワタナベらがポンドの逆張り(即ちロング)に傾いている模様だ。ポンド/円がすでに急落してきただけに、多くの日本の個人投資家はポンドが十分安くなっていると「勘違い」している可能性が大きい、と指摘する声も多い。現実になれば、かなり大きな「ギャップ」をつけて(ポンド/円の場合、3円~5円もあり得るか)相場がスタートされてもおかしくなかろう。
反面、残留する場合、ドル全体が軟調に動く可能性があるものの、総じて緩やかな傾向にあると同行が予測する。なぜなら、米追加利上げ観測がまた高まりやすいからだ。総合的に見ると、ウォール街は総じてドル高(対円除く)トレンドの継続に賭けているようだ。
1992年ポンド危機の再来と危惧する声も多いが、当時の状況とかなり違うといった認識が主流のようだ。何しろ、当時はまだ「アナログの時代」だったので、情報の伝達にしても、取引の形態にしても今日と大きな差がある。それにしても、相場の本質が変わらないから、一時的にせよ、流動性が深刻に低下する市況を覚悟しなければならない。となると、以下の2つのポイントが想定される。
一つは離脱した場合でも、一時的な混乱があるものの一時間後ほどで通常の取引(スプレッドの正常化)に戻るでしょう。
もうひとつはやや悲観的であるが、ミセス・ワタナベらのポジションが公に晒される以上、英投票の結果と関係なく、ロングポジションが喰われる可能性が高い。換言すれば、結果次第円高の度合いが違ってくるが、結果を問わず一時的な円高の進行を覚悟しておいたほうが無難だ。即ち、仮にミセス・ワタナベらの賭けが正しいとしても、相場は彼らを振り落としてから同結果を反映する可能性がある。相場は理外の理、果たして今回の市況はいかに。
最後に、日本当局が為替介入を暗示しているが、このタイミングでやれるわけがないから、無視しましょう、はい。
この事前予想では、投票結果の発表時刻を間違ったので、結果的にギャップをつけてからの急落ではなかったが、スプレッドの拡大が長く続かなかったことは合っているようだ。もちろん、ミセス・ワタナベの悲劇は容易に推測できたことだから、結論が正しかったとしても大した予測ではなかったはずだ。
ただし、ミセス・ワタナベたちは皆が損しているとは思わない。なぜなら、少なくとも昨日(6月23日)まではその賭けが正しかったから、利益を確定した方も多かったのでは…と推測できるからだ。
逆にいうと、本日(6月24日)もロングポジションを保有した者は、“逆張り”だけではなく“欲張り”すぎたから失敗したわけだ。また、仮に損したとしても、「ドテン」して英ポンド売り(つまり順張り)すれば、損失を容易にカバーできたとも推測される。果たしてどうだっただろうか。
■英ポンド急落は昨日までの英ポンド高に対する「報復」か
ところで、今回の英ポンドの急落は、ある意味では昨日(6月23日)までの英ポンド高に対する「報復」だと思う。何しろ、事前予想では残留派優勢だったので、英ポンド/米ドルは1.5000ドル、英ポンド/円は160円まで買われていた。それが裏目に出れば、英ポンド暴落は当然の結果だと言える。
が、ここで注意していただきたいのが、昨日(6月23日)までの英ポンド上昇の主な原因は、ショート筋の踏み上げだと推測され、ミセス・ワタナベの逆張りがうまくいったとしても、その筋道が正しかったかどうかは不明瞭だということだ。
何しろ、英ポンドが十分安かったといった視点でロングを仕掛けた者が多いとされるから、どうやらただの逆張り、といった要素が強かったと思われる。
■昨日(6月23日)は英ポンド売りの好機だった
ところで、昨日(6月23日)は英ポンド売りの好機だったと思う。根拠は昨日のレポートに書いたから、以下に開示する。
■ポンド/ドル 賭けるならこの方向へ

(出所:CQG)
明日英国民投票の結果が出る。同結果次第、世界金融市場が大きく揺れると想定されるだけに、目先ポンドの取引を安易に手掛けるべきではないが、賭けるならショートのほうが有利だと思う。
何しろ、ポンド/ドルは1.4関門割れ寸前から上昇しばなしで、1.48台と年初来高値に迫っている。これは英議員殺害事件を受けた残留派勝利の予想がショート筋を踏みあげた結果にすぎず、ポンドのブルトレンドとして説明するには無理がある。
ゆえに、仮に残留が決められたとしても、足元のレート、その結果の大半を大分織り込んでいると思われ、更なる大幅な上昇余地があっても限定されよう。ポンド/ドルの日足を鑑み、同じ示唆を読み取れると思う。
上のチャートの指示通り、二本の抵抗ライン(黄&緑)が交錯、目先の高値を制限している模様。RSIの弱気ダイバージェンスの構築も確認され、ロングよりショートのほうがリスク大分少ないことが暗示される。ちなみに、2015年1月のスイスショックほどではないが、離脱が決定された場合、ポンドが大きなギャップを付けて下落する可能性があるので、ロング筋のストップオーダーが無効になる可能性も念頭におきたい。
■この先、英ポンド安が進むには別の材料が必要か
ところで、英ポンドはすでに約10%安になっているから、前回コラムの結論は正しくなかったことが証左された。
【参考記事】
●織り込み済みか。英国がEUを離脱しても英ポンド暴落、欧州株暴落はない!?(2016年6月17日、陳満咲杜)
実は、先に開示したレポートのように、先週(6月17日)コラムを提出したあとで、筆者は考え方を変えていた。
ただし、ここから英ポンド安が進むとしても、おそらく別の材料が必要になってくるだろう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 1時間足)
同じ意味合いにおいて、米ドル/円の100円大台割れはリスクオフの結果として当然の成り行きであるが、ここからさらなる下値打診がすんなりいくかどうかは不透明だ。
理論上、米ドル/円は95円手前の下値ターゲットを射程圏に収めるが、他の材料待ちといったところではないかと思う。

(出所:ヒロセ通商)
ただいま聞いているウワサでは、オランダでもEU離脱の国民投票を行う予定だという。本当なら、もう一段の円高も想定されやすいが、変動率がさらに拡大していくと、G7の協調市場介入が想定される。
となると、一方的に動くのではなく、波乱万丈の市況となろう。このあたりの可能性は、また次回にて探りたい。
(PM2:00執筆)
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