■米ドル/円は売り注文をこなし、一時107円台回復
みなさん、こんにちは。
前回のコラムで取り上げた「ヘリマネ」報道をきっかけに、今週(7月18日~)も米ドル/円は続伸。
【参考記事】
●ヘリコプターマネーの憶測でアベノミクスに反撃の兆し? ドル/円は107円が焦点!(7月14日、西原宏一)
本邦輸出企業の米ドル売り注文が密集している105~107円のエリアを抜くのに時間を要しましたが、本日(7月21日)、ついに節目の107.00円を突破。一時、107.49円まで急騰しています。

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■ソフトバンクの大型買収報道で円安が加速
今週(7月18日~)、欧米短期筋が一斉に米ドル/円での米ドル買いに動いたのが、まず既報の「ヘリマネ」報道。
【参考記事】
●トルコクーデター鎮圧で有事の円高ならず。孫社長の英企業3.3兆円買収でポンドは!?(西原宏一&大橋ひろこ)
ただ、それ以上にマーケットを驚かし、円安のスピードを加速させたのが、ソフトバンクによる大型買収報道でした。
ソフトバンクが英半導体設計ARMを3.3兆円で買収、IoT(Internet of Things)強化へ
ソフトバンクグループは18日、英半導体設計ARMホールディングスを約240億ポンド(約3.3兆円)で買収すると発表した。
あらゆるものがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)時代を見据え、同領域に強みを持つ同社を買収することで需要の取り込みを目指す。
日本企業による海外でのM&A(合併・買収)としては過去最大規模になる。
孫正義社長はロンドンで行った会見で「IoTは人類史上もっとも大きなパラダイムシフトになる」と指摘。「IoTの時代の中心の会社はARMだ」と述べ、買収に自信を示した。
出所:ロイター
■巨額の英ポンド/円の買いがウワサになっていた
先週(7月11日~)、米ドル/円が6円急反発しているのは「ヘリマネ」期待が背景にあると多くのマーケット参加者は理解していました。
ただ、先週(7月11日~)の英ポンド/円は約13円も急騰。

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しかも、東京市場で英ポンド/円が暴騰する傾向があり、多くのトレーダーの間では、何らかの大型案件が結ばれて、巨額の英ポンド/円の買い需要があるのでは?とウワサになっていました。
それが先週末、前述のソフトバンクのARM買収の報道が流れ、大型案件のウワサは現実に。その買収金額は驚愕の3.3兆円。
■ソフトバンクはポンドの手当てをすべて終了したとの見方も
市場参加者の間では、ソフトバンクはARM買収金額のうち、すでに1.7兆円の英ポンドの手当て(=英ポンド買い)は終わっているとの意見がある一方、報道された時点ですでに英ポンドの手当てはすべて終了しているとの見方もあり、意見は交錯しています。
ここで、トレードの観点で相場を整理すると、ソフトバンクの大型買収のウワサが出ていた段階で英ポンド/円はすでに13円も暴騰。そして、事実として大型買収の全貌が報道されます。

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トレードの基本からすれば、「バイ・ザ・ルーマー セル・ザ・ファクト」(ウワサで買って、事実で売る)の流れから、英ポンド/円は13円急騰した143円でトップアウトしたと考えることもできます。
ただし、
(1)英ポンドの手当てが半分しか終わっていない可能性が高いこと
(2)ソフトバンクが英ポンドをすべて買い終わっていると仮定したとしても、約3.3兆円の円売りがマーケットに持ち込まれたことになるため、これまでの米ドル/円における円の需給を大きく変化させる可能性があること
つまり、買収金額があまりにも巨額であるため、マーケットのトレンドを変化させる公算が高まっています。

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■ソフトバンクは過去にスプリント買収で巨額の米ドル買いも
アベノミクスの初動を振り返ってみると、もちろん、日銀の追加緩和期待の高まりが米ドル/円を大きく押し上げたわけですが、ソフトバンクによる米スプリント買収における巨額の米ドル買いもマーケットを大きく押し上げました。
【参考記事】
●孫正義氏がティファニー銀座ビルを購入! 脱デフレ、円安継続でドル/円は再上昇か(2013年10月3日、西原宏一)
今回の相場も、米ドル/円の重要なサポートであるアベノミクス相場の高値と安値の50%戻し水準の100.60円を死守できるかどうかという局面で、突然、ソフトバンクが現れ、前回以上の巨額な円売りがマーケットに投入され、100円で底打ちさせることに成功しています。
【参考記事】
●トルコクーデター鎮圧で有事の円高ならず。孫社長の英企業3.3兆円買収でポンドは!?(7月19日、西原宏一&大橋ひろこ)

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■日銀会合に向け、米ドル/円は110円台回復へ
ソフトバンクによる巨額の英ポンド買いにより、英ポンド/円のトレンドも大きく変貌。

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TDシーケンシャル(TD Sequential)では、底打ち(ボトムアウト)を示唆するカウントダウンの13を点灯し、トレンドの反転を示唆。
この巨額の円売りが、米ドル/円の105.00~107.00円に断続的に並んでいた本邦輸出企業の米ドル売りを飲み込む形で、今週(7月18日~)の米ドル/円は上昇を続けています。
この米ドル上昇をテクニカル分析でチェックすると、下記のような重要なレベルを次々と突破してきたことがわかります。
(1)106.57円=アベノミクス相場の38.2%戻し
(2)106.73円=200週移動平均線
(3)106.84円=英国国民投票時の高値
【参考記事】
●麻生財務相の口調強く、介入の可能性も!? 豪州利下げで、豪ドル安の行方にも注目!(5月10日、西原宏一&松崎美子)
●英国民投票締切り直後の調査会社発表でEU残留が52%と僅差優勢。ポンド急騰!
この中で最重要なのが、200週移動平均線が位置している106.73円。
このレベルを週足ベースで維持できれば、来週、7月28日(木)~29日(金)に開催される日銀金融政策決定会合に向けて、米ドル/円は110円台回復が期待できます。

(出所:CQG)
アベノミクス反撃の兆しに加えて、ソフトバンクによる「IoTの大型買収」の追い風。
【参考記事】
●ヘリコプターマネーの憶測でアベノミクスに反撃の兆し? ドル/円は107円が焦点!(7月14日、西原宏一)
110円台回復に向け、続伸を続ける米ドル/円の行方に注目です。
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