■まさかの利上げか、超金融緩和か
急激な円安の進展は輸入品の暴騰をもたらす。2%インフレ目標どころか、オイルショックのようなインフレとなる可能性だってあるかも。
それに歯止めをかけるために利上げして円高へ持っていこうとする政策だ。
「ところが叩き売られる日本国債をどうにかしようとなると手段は正反対。
利上げ=引き締め策ではなく、日本国債を買い支えるために超大規模な追加金融緩和(量的緩和)が必要となります。
為替を優先するか、国債市場を優先するかで、利上げと追加緩和、2つの両極端な政策が考えられるんです」

ゴジラが金融政策をどう変更させるかは、実際の市場の動き次第となりそう。
■日本存続の危機では円売りが進む
ここで冒頭の疑問に立ち返ろう。東日本大震災と、その後の原発事故で円高が進んだのと同じように、「ゴジラで円高」が進まないのはなぜだろうか?
【参考記事】
●被害総額・約60兆円! もしもシン・ゴジラが本当に襲来したら、日本経済はどうなる!?
「東日本大震災では保険金の支払いや工場再建などに備えた『レパトリ』によって、海外資産を円に戻そうとする動きが強まり、円高になったと説明されていました。
しかし、そこまでのレパトリはなかったというのが今では定説になっています。
先ほども申し上げたとおり、日本は巨額の対外資産を持っているので、震災の際にはそれが『還流してくるのでは…』という思惑が先行して円が買われたのでしょう」

しかし、キャピタルフライトの動きがそれ以上のインパクトとなり、円安が進む可能性があると映画の制作者は考えたのかも。
■「嫌なことがあったら円を買え」の条件反射
「今は北朝鮮のミサイル発射やクーデターなど、『嫌なことがあったら円を買え』と有事の円買いが染みついていますが、ゴジラだとさすがに円を手放したくなるでしょう。
ゴジラに限らず、日本経済の存続が危ぶまれるレベルの大事件が起きたときには、有事の円買いではなく、円売りになるはずです」

日本経済の存続が危ぶまれるレベルの大事件が起きたときには、有事の円買いではなく、円売りになるはずというのが、上野さんの見解だ
つい先日も北朝鮮の核弾頭の爆発実験で瞬間的に円高が進んだのは記憶に新しいところ。「嫌なニュース」が出ると反射的に円買い取引を考えがちだが、必ずしも円高になるとは限らないということだ。
日本経済存続の前提に疑問符がつくほどの「嫌なニュース」であれば円安になる可能性がある。
『シン・ゴジラ』の制作者たちは、「有事の円売り」だってあるんだぜとの警告をFXトレーダーに与えるために「株安、円安、債券安だ!」と叫ばせたのかも――。
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久(撮影は特記したものを除く))
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