前回(10月21日)、前々回(10月10日)に公開したコラムに続き、ザイFX!では、11月8日(火)に迫った米大統領選について、米国在住の広瀬隆雄さんに新たな記事をご寄稿いただきました。
【参考記事】
●お下劣トーク流出でトランプ陣営に悲壮感。クリントン勝利でもリスクオンとは限らない(10月10日、広瀬隆雄)
●トランプいわく、大統領選は「八百長」でクリントンは「いじわるオンナ」らしい!?
投票日を間近に控え、現地の支持率や広瀬さんの見解はどうなっているのでしょうか…?(ザイFX!編集部)
■FBIが「クリントンに関係するかもしれないメールを発見」
10月28日(金)にFBI(米連邦捜査局)が「クリントンに関係するかもしれないメールを発見した」と発表しました。
このニュースをきっかけとして、トランプの支持率は上昇しており、大統領選挙の行方は混沌としてきました。
■元下院議員の「エッチなメール」を捜査中に…
2011年に元下院議員アンソニー・ウィーナー氏が、自分の裸の写真を、知り合いの未成年の女性に送信したことが発覚しました。
このような「エッチなメール」のやりとりを「セクスティング(Sexting)」といいます。
「セクスティング」はアメリカの若者の間で流行っているので、それ自体は驚くに値しません。しかし、現職の下院議員が未成年者に「セクスティング」したとなると、これはちょっと問題です。
そこで、FBIがウィーナー氏のパソコンを押収し、中身を調べたら……そこから「ヒラリー・クリントンに関係すると思われるメール」が出てきたのです!
なお、このメールは直接ヒラリーが発信、ないしは受信したメールではない模様ですが、「ヒラリーの私用メール疑惑の捜査に万が一、関係があるかもしれない」と判断したFBIがそれらのメールが存在することを公表に踏み切ったというわけです。
■ウィーナー氏の奥さんはヒラリーの右腕
ウィーナー氏の奥さんはフーマ・アベディンという女性です。
アベディン氏は1996年に大学生のバイトがてらホワイトハウスのインターンの仕事を得て、当時、ビル・クリントン大統領のファースト・レディだったヒラリー・クリントンの世話係になります。
ヒラリー・クリントンは、聡明で仕事のできるフーマ・アベディン氏をとても気に入り、その後、ヒラリーがオバマ政権で国務長官になった際には、アベディン氏を副主席補佐官に抜擢しています。また、今回の大統領選挙ではアベディン氏はクリントン陣営の選挙事務次長を務めています。
ウィーナー氏は今回の「エッチなメール」事件で下院議員を辞任し、この事件をきっかけとしてウィーナー氏とアベディン氏は現在、法的に別居中です。
渦中のフーマ・アベディン氏(左)とアンソニー・ウィーナー氏夫妻。とんだところから、ヒラリー氏へのFBIの捜査が再開され、大統領選挙はますます混迷を極めている。(C)Bloomberg/Getty Images
いま、アベディン氏はヒラリー・クリントンが最も信頼するスタッフであり、実の娘同様にかわいがっている弟子であることを考えると、そのアベディンの旦那さんのパソコンから「ヒラリーに関係するメール」がたくさん出てきたということは、ヒラリーが私用サーバのメールを隠蔽する際に、バックアップのコピーを、捜査が及びそうでないウィーナー氏のパソコンに移したと疑われても仕方がないのです。
11月8日(火)の本投票の直前に、新しい事実が発見されるかもしれないし、間に合わないかもしれない……とにかく、最後の最後まで爆弾を抱えた状態だということです。
■選挙当日、開票速報を見るときのポイントは?
さて、大統領選挙は選挙人投票数を巡って戦われます。
米国にはカリフォルニア州のように有権者の数が多い州もあるけれど、ワイオミング州のように過疎地もあります。
だから人口に合わせて、カリフォルニアは55ポイント、テキサスは38ポイント、フロリダとニューヨークは29ポイント……という具合に得点が決められているのです。
合計数は538ポイントです。すると過半数は270ポイントであり、早くこの当確ラインに到達した候補者が勝利するというわけです。
現在の選挙人投票ポイント数は、リアルクリアポリティクスの調査では、下のようになっています。
■トランプ優勢の接戦州がどんどん増え始めている
いわゆる接戦州では、過去2日間の間に重要な変化が見えます。それはトランプが優勢の州が、どんどん増え始めているということです。
★優勢な候補と支持率のリード幅
フロリダ トランプ+1.0%
オハイオ トランプ+2.5%
バージニア クリントン+4.7%
コロラド クリントン+2.4%
ノース・カロライナ トランプ+0.7%
アイオワ トランプ+1.4%
ネバダ トランプ+1.6%
ジョージア トランプ+5.7%
ウィスコンシン クリントン+5.7%
ミシガン クリントン+7.0%
ペンシルバニア クリントン+5.7%
ニュー・ハンプシャー クリントン+4.7%
メイン クリントン+6.6%
アリゾナ トランプ+3.0%
といった具合です。
■最後の最後まで、わからない展開で円高に
さて、上に説明したような理由で、今回の大統領選挙は「最後の最後まで、わからない」展開になっています。
市場参加者は不確実性というものを嫌います。
すると「どっちに転ぶか、わからない」という状況はマーケットにとって良くないし、投資家のスタンスとしてはリスクオフ、すなわちポジションを整理して、キャッシュで待つという態度になります。
そのようなシナリオでは「円への逃避」が起きやすいので、おのずと円高になるというわけです。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)