米大統領選について、米国在住の広瀬隆雄さんに新たな記事をご寄稿いただきました。大統領選に関する広瀬さんのコラムは、今回で4回目。
【参考記事】
●お下劣トーク流出でトランプ陣営に悲壮感。クリントン勝利でもリスクオンとは限らない(10月10日、広瀬隆雄)
●トランプいわく、大統領選は「八百長」でクリントンは「いじわるオンナ」らしい!?(10月21日、広瀬隆雄)
●メール問題再発で混沌の米大統領選挙!ヒラリー側近の美人スタッフがどう関係?(11月4日、広瀬隆雄)
長かった米大統領選も、トランプ勝利というまさかの結果をもって決着が着きましたが、これから相場はどうなっていくのでしょうか? 広瀬さんの見解は?(ザイFX!編集部)
■トランプの勝利でリスクオフ! 株安・円高へ
米国大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプが予想外の勝利を収めました。
クリントン氏優勢との前評判を跳ねのけて選挙戦に勝利し、次期米大統領となったドナルド・トランプ氏。過激な発言が物議を醸してきた不動産王は、米大統領としてどんな働きをするのだろうか(C)Scott Olson/Getty Images
これを受けて、市場は一斉にリスクオフ、すなわちリスクを回避する動きになっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
(出所:株マップ.com)
普通、リスクオフの局面では株式は売られます。また海外に投資していた資金をいったん、日本に戻す動きが出るので円高になります。
■狼狽は禁物! 1年後の相場は回復へ向かうことが多い
ただ、ここで狼狽するのは禁物です。
と言うのも、過去に大統領選挙で「想定外」の候補者が勝ち、相場が急落したケースでは、大体1年後には逆に相場が高くなっていることが多いからです。
もし、米国株が下げ続けるのなら、12月14日(水)に予定されている2016年最後のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではマーケットをなだめるために利上げは見送られるでしょう。
■トランプは成長支援型の政策を打ち出し、景気改善へ
もう1つ投資家が忘れてはならないのは、トランプは経済成長をうながすために「ガツン!」とイッパツかますということです。
つまり、強力に成長支援型の政策を出してくるということです。
その1つは、インフラストラクチャー(ダムや道路などの公共工事)への投資です。トランプは、「アイゼンハワー型のインフラ投資をやりたい」ということをかねてから言ってきました。
これまで米国の景気支援策は、おもにFRB(米連邦準備制度理事会)の金利政策にもっぱら依存してきました。
しかし、今度は政府がガンガン公共工事を行って直接需要をつくり、お金をばらまくワケですから、景気は良くなると想定すべきです。
そのシナリオで、実業界や市場関係者は、再びリスク・テーキングに積極的になるはずです。
トランプは、政治は素人です。すると大統領としてのリーダーシップを発揮しようと思えば、自分がもっとも得意とする実業や経済の分野で、まず、キョーレツなリーダーシップを見せつける必要があるワケです。
■「イエレンはお払い箱」と明言しているトランプ
さて、トランプは選挙活動を通じて、「ジャネット・イエレンは良い仕事をしていないので、2018年2月の任期切れがきたら再任しない」と明言しています。
トランプ氏は、任期が切れたらイエレン氏をFRB議長に再任しないと明言しているようだが、イエレンさんの心中はいかに… (C) Bloomberg/Getty Images
実は、私も最近のイエレンの采配にはきびきびとしたところがなく、「これはまずいぞ」と感じていました。
だから個人的には、イエレンをお払い箱にするというトランプの考えには賛成です。
■トランプのアドバイザーはショボいメンバーばかり…
トランプの経済アドバイザーに名前を連ねているメンバーは、元ベアスターンズのエコノミスト、デビッド・マルパスや元ゴールドマン・サックスで、のちに映画『アバター』や『Xメン』のプロデューサーに転じたスティーブン・ムニュチンなど、ハッキリ言ってショボいメンバーばかりです。
でも、まあ、それはそれで、最近、堅苦しくなりすぎている連邦準備制度(FRS)に新風が吹きこまれるのは良いことだと思います。
■まとめ:不確実性は増すが、FRBに新風も悪くない
不意を突かれて、突然駆け出したような米ドル安は、おのずと一段落します。
トランプは、景気をヨイショすることに情熱を傾けると思います。
イエレンがお払い箱になることは、変化を嫌がる投資家にしてみれば、またしても新しい不確実性が生まれることを意味しますが、イエレンは別に良い仕事をしているとは思えないので、このへんでFRBに新風を吹き込むのも悪くないでしょう。
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