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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

雲の中のドル/円、上抜けは3月上旬ごろ?
驚くべき税制改革が出れば動意づくかも

2017年02月23日(木)17:42公開 (2017年02月23日(木)17:42更新)
西原宏一

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■米ドル/円の115円上抜けは時間要する

 みなさん、こんにちは。

 今月(2月)の米ドル/円は本稿執筆時点(=2月23日)まで大きな動きはなし。

 注目された日米首脳会談はコンセンサスどおり、成功裏に終了し、円高リスクは大きく後退。

【参考記事】
日米首脳会談成功で円高リスクが後退。「暗黙のドイツマルク」のような存在とは?(2月16日、西原宏一)

米ドル/円は115円台回復間際まで急反発したのですがブレイクできず。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 この要因は、前回のコラムでもご紹介させていただいた115.00円のオプション。

【参考記事】
日米首脳会談成功で円高リスクが後退。「暗黙のドイツマルク」のような存在とは?(2月16日、西原宏一)

 先週(2月13日~)の為替市場では、米ドル/円の115.00円に約60~70億ドルとウワサされるオプションが設定されているといわれていました。

 マーケットはこのオプションから供給される米ドル売りを吸収できず反落。

 先週末で、115.00円のオプションの一部は行使期限を迎え、影響は減少すると想定されていましたが、今週(2月20日~)も115.00円のオプションはまだかなり残存している模様で、このレベルを抜くのにもうしばらく時間を要するのかもしれません。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

■米3月利上げ織り込み度は、まだ34%

 米ドル/円の上昇になかなか弾みがつかないもうひとつの要因が米金利。

 昨年(2016年)末の段階では、「3月の利上げ確率もさらに上昇しており、米金利は堅調、呼応して、米ドルはもっと堅調に推移する」というのがマーケットのコンセンサスでした。

 ところが実際の米金利の上昇は緩慢であり、2月23日(木)現在で、3月の米利上げ織り込み度も、まだ34%までしかいっていない状態。

米長期金利(10年物国債利回り)
米長期金利(10年物国債利回り)

(出所:Bloomberg)

 これはFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに関して、かなり慎重なスタンスで臨んでいるためなのですが、この影響でマーケット環境はゴルディロックス(※)状態。米国株は続伸中。

(※編集部注:ゴルディロックスとは、過熱もしすぎず、低迷もしていない、居心地のいい状態のこと)

NYダウ 日足
NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

■短期での調整に警戒も、ユーロ/豪ドルは下落継続へ

 結果、資金は高金利の通貨に流れ、呼応して豪ドルが堅調な推移に。

 短期では上記の流れの中、今月(2月)の豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は堅調な展開。豪ドル/円、ユーロ/豪ドル、豪ドル/NZドルと軒並み豪ドルが底堅い動きに。

注目はユーロ/豪ドル。

 フランス選挙情勢の混乱からのユーロ売り圧力とゴルディロックスからの豪ドルへの資金還流の流れが相まって、今月(2月)のユーロ/豪ドルは大きく値を下げています。

 直近ではかなり売られすぎ状態となっているため、戻りを待ちたいところです。しかし、混沌としたフランス情勢と、堅調な米国株の動向から考えれば、中期でのユーロ/豪ドル下落の流れは続きそう。

ユーロ/豪ドル 日足
ユーロ/豪ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/豪ドル 日足

■驚くべき税制改革が出れば米ドル/円は動意づくか

 リスク許容度を測る通貨ペアでもある豪ドルが堅調な中、米ドル/円も下値余地は限定的。

 ただ、前述のように米金利がなかなか上がってこないことも影響し、今月(2月20日~)は111~115円のレンジで膠着。

 一方、トランプ米大統領が税制改革で「驚くべき」提案をするといった期限が迫ってきており、それが米ドル/円相場を動意づかせるきっかけとなることが期待されています。

トランプ米大統領は9日、航空大手首脳とホワイトハウスで会談し、今後数週間に税制改革に関する抜本的な提案を明らかにする考えを示した。

大統領は「向こう2、3週間に税、および航空インフラ開発に関して、目を見張るような発表を行う」と述べた。ただ詳細には踏み込まなかった。

出所:ロイター

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 この報道がなされたのが2月9日(木)。向こう2~3週間とは、2月下旬から3月初旬。

 トランプ米大統領が予告した「目を見張るような税制改革」の発表を前にして、米国株は堅調に推移。

 米ドル/円と日経平均は「東芝ショック」から来る売り圧力が効いているため、米国株に周回遅れの展開ですが、高値圏で張り付いたままの米国株の動向を横目に「米ドル/円と日経平均」の下値余地も限定的。

【参考記事】
東芝1兆円損失の可能性がドル/円に波及。115円付近が当面の高値となるかも…(2月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

■米ドル/円のレンジ上抜けは3月上旬ごろ?

 米ドル/円の動きをテクニカルで確認すると、米ドル/円は1月後半に日足・一目均衡表の厚い雲の中に突入しており、この雲を抜け出すのに一定の時間を要するのでしょうが、トランポノミクスの方針が具体化する過程で米ドルはどうしても米ドル高の方向に向かわざるを得ない展開。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 3月の本邦期末を控え、本邦機関投資家から手当ての遅れている米ドル買いがマーケットに投入される可能性もウワサされています。

 期末に照準を合わせるのであれば、彼らからの米ドル買いがマーケットに投入されうる時期も2月後半から3月上旬となります。

 こうした背景から、米ドル/円がレンジを抜け出すのは3月上旬ごろの公算が高まります。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

■仏情勢混沌+ゴルディロックスでユーロ/豪ドルに注目

 そして、短期では極めて売られすぎているため、戻りを待ちたいところですが、フランス情勢が混沌とする中でのユーロ売り圧力と、ゴルディロックス環境下での豪ドル買いの流れからのユーロ/豪ドルの動向に注目です。

ユーロ/豪ドル 日足
ユーロ/豪ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/豪ドル 日足


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