■米ドル全体に底打ちの兆し、安値追いは避けたい!
トランプ氏の、いわゆるロシアゲート疑惑がくすぶり、米ドル全体も大きく落ち込んできたが、最近底打ちの兆しが現れ始めた。ドルインデックスの値動きから考えると、97の節目割れをもって2017年年初来の反落が一服する可能性が浮上し、夏場に近づくにつれ、米ドル全体の回復が見込めるとみる。
ドルインデックスの2017年年初来の下落は、きれいな下落チャネルを形成し、また、ダブルジグザグ変動構造を示している。
(出所:Bloomberg)
同チャネルの下限を打診したこと、また、ダブルジグザグ変動構造の完成(Y≒W、c≒a)から考えると、足元は大型調整変動の最終段階にあると思われる。
このような見方が正しければ、足元強い変動を保ち、また、5月23日(火)にて2017年年初来高値を更新したユーロ/米ドルも、すでに頭打ちになったか、近々頭打ちになるだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
さらに、前回のコラムで指摘したように、ユーロのブル(上昇)トレンドを認定するには、少なくとも昨年(2016年)、トランプ氏が米大統領に当選した11月9日(水)高値の1.13ドル以上の推移が前提条件となるから、目先慎重なスタンスを持ちたい。
結論を強調するなら、米ドルの安値追いを避けたいということに尽きるだろう。
【参考記事】
●トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!(2017年5月19日、陳満咲杜)
■予算教書リリースで政治リスクが緩和
ファンダメンタルズ面では、トランプ氏が弾劾されるリスクが低下している。トランプ米政権が5月23日(火)に2018年度予算教書の概要をリリースしたことで政治リスクがやわらぎ、米国株の回復から考えると、マーケットはリスクオンのムードに復帰した可能性が大きい。
(出所:Bloomberg)
予算教書では、今後10年で3兆5630億ドルという過去最大規模の歳出削減が提案され、低所得者向け医療保険や生活保護も減らす上、医療保険制度改革法(オバマケア)の見直しや政府機関の再編などを通じて支出の圧縮を図るとされている。
一方、個人所得税率の簡素化や法人税率の大幅引き下げ(35%~15%)など大胆な税収改革を宣言、経済成長率を3%に高めることをめざし、財政収支を黒字転換させる目標も掲げられている。
■トランプ氏の政策はほとんどが米ドル高を誘導するもの
トランプ氏の主張どおりの過去最大規模の歳出削減と大型減税は、見通しの甘さが指摘されている上、皮肉にもトランプ氏のコア支持者(低所得層)に不利、富裕層に有利とされるこの予算案に対する批判も多いが、仮に全部ではなく、一部が実現されても景気に大きなプラス要素であることは間違いない。
たびたび指摘してきたように、トランプ政権は米ドル高を牽制しているものの、推進する経済政策のほとんどが米ドル高を誘導する内容であり、事実上、米ドルの支えになるはずだ。
【参考記事】
●トランプ氏が失脚してもしなくてもドル安は続かず。大統領辞任なら大幅なドル高に!(2017年5月19日、陳満咲杜)
特に企業に対する大型減税は、米経済成長を刺激するだけでなく、「米企業が海外で稼いだ多額な利益を海外に留まらせず、米本土に回帰させる」という今まで問題となってきた点を解消する意味で大きなインパクトを持つ。トランプ氏が商人としての本領を発揮するなら、ここは勝負どころだと思われる。
今後10年間で2000億ドルのインフラ投資も提案されており、インフラ投資が盛んになれば、米ドルも自然に強くなっていくことが想定される。
今のところ、予算教書は「たたき台」にすぎないが、米上下院に正式に提出されていることは見逃せない。トランプ氏が当選したあとの「トランプ・ラリー」、その背景が氏の経済政策に対する期待であったなら、現在やっとその中身が見えてきたのだから、マーケットはそろそろ評価してくるのではないだろうか。
ロシアゲートで政治リスクばかり注目されてきたが、弾劾リスク自体の後退で、トランプ政権が押し進める経済政策に対する評価も徐々に持ち直してくるだろう。この意味では、米ドル全体の持ち直しは間近だと思う。
■マンチェスターテロ後の金の値動きからわかること2点
5月22日(日本では23日朝)に、イギリスのマンチェスターにてテロ事件が発生したが、金(ゴールド)の切り返しは鈍かった。
(出所:Bloomberg)
金の値動きから考えると、少なくとも以下の2点を認識できるのではないだろうか。
まず1点は、今はリスクオフの局面ではないこと、次に、米ドルはだいぶ安くなっているのでこれ以上は下げにくいことだ。
ところで、米ドル全体の底打ち、また、切り返しがあれば…
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