■トランプ氏の発言が良いタイミングで調整の「きっかけ」に
では、表面上のファンダメンタルズではなく、市場の「行きすぎ」がどのような内部構造に基づいて発生したかと聞かれると、回答するのはそう難しくないと思う。一番わかりやすい答えは米国株や米国株の変動率から探り出せると思う。
言ってみれば、周知のとおり、少し前まで米国株は連騰が続き、NYダウは連日のように史上最多値を更新、オーバーボートの度合いを深めていた。
(出所:Bloomberg)
連騰しながらも、毎日の値幅は限定的だったので、市場の変動率を図るVIX指数は7月末にて9.0のレベルを割りこみ、「史上最低」水準に落ち込んでいたほどだ。
(出所:Bloomberg)
要するに、マーケットはそもそもスピード調整を必要とし、また、極端な変動率の低下に対する反動をはらんでいたわけで、トランプ氏の発言は調整のよいきっかけとなったわけだ。
米ドル/円の調整が「深押し」の様子を見せているところも、相応な背景があった。
7月後半まで円のショートポジションが積み上げられ、一時、2014年の水準を超え、記録的だった2013年の円売りを超えるレベルに接近していたから、「振り落とし」が「必要」とされた。
換言すれば、あまりにも多くのトレーダーが円売りのポジションを持っていたから、トランプ氏の発言がポジション整理のきっかけとなり、円ショート筋の踏み上げを発生させたわけだ。
■米ドル/円は4月安値に最接近する可能性もあるが…
となると、先週末(8月11日)の値動きをもって今回の騒動が収まったかというと、まだ、油断はできないだろう。
トランプ氏が何を話すかわからない上、米国株調整継続の可能性とともに、米ドル/円の場合、いったん6月安値を割り込んだから、続落する場合は4月安値にもう一回接近、または打診する可能性もなくはない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
しかし、細かい値動きはともかく、大まかな見方をすれば、今回、トランプ氏が発した「殿のご乱心」発言がもたらした効果は、目下の値動きにだいぶ織り込まれていると思う。北朝鮮との戦争が発生しない限り、米国株にしても、米ドル/円にしても、ここからたちまちベア(下落)トレンドへ復帰することはないと思う。
このような結論が得られる根拠として、前述したこと以外では、VIX指数の値動きが大変示唆に富む。この変動の詳説はまた次回に譲るが、今回の「トランプ発言ショック」は、VIX指数で測れば、あくまで「コップの中の嵐」にすぎない。
だから、米ドル/円にしても、クロス円にしても本格的な円高トレンドへ転換しないのである。市況はいかに。
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