休暇を終えてマーケットに戻ってきました。
また、よろしくお願いします。
■日本の連休とSQを控えて、懸念されたリスクオフが勃発
シントラショック以降、マーケットの主役はユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)。
ユーロ/米ドルは一時1.1910ドル、ユーロ/円は131.40円、ユーロ/スイスフランは1.1538フランまで上昇しました。
【参考記事】
●ドラギ総裁はハト派でも買われたユーロ! 「シントラショック」以降、ユーロは新局面へ(7月24日、西原宏一&大橋ひろこ)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
ただ、今週(8月7日~)は日本の3連休とSQ(※)を控えていました。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと)
8月7日(月)の「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」でもご紹介させていただきましたが、この「日本の3連休とSQ」というのは、米系短期筋の仕掛けが入りやすく、今週(8月7日~)は「株安・円高」、そしてマーケットの主役であったユーロクロスの調整も危惧されていました。
昨年(2016年)2月のSQで米ドル/円が急落した相場について、当コラムでも紹介していますので、ご参考まで。
【参考記事】
●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2016年2月18日、西原宏一)
8月8日(火)までは夏枯れで静かなマーケットでしたが、SQ前日の9日(水)に懸念された調整相場がいきなりスタート。
リスクオフマーケットのきっかけとなったのが北朝鮮情勢の悪化。
トランプ大統領は9日朝ツイッターで、「大統領としての私の最初の命令は米国の核兵器を革新し最新化することだった。いまではかつてないほど強力だ」とコメント。その上で「この力を決して使う必要がないことを望む。しかし、米国が世界で最も強力な国家でなくなる日は決して来ない」と続けた。
これに先立ち大統領は北朝鮮を巡る緊張についてのFOXニュースの報道を幾つかリツイート。「米空軍の戦闘機は『今夜にも戦える』ようにグアムから飛び立ち演習している」とコメントした。
出所:Bloomberg
「日本の3連休とSQ」というタイミングに、北朝鮮情勢の悪化という材料を得た米系短期筋がリスクオフマーケットを演出。
米ドル/円、豪ドル/円、そして日本株といったリスクオフに感応するプロダクツは軒並み急落。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 1時間足)

(出所:Bloomberg)
加えて、リスクオフという意味は本来、「リスクを抑える」という意味になるため、先週(7月31日~)までマーケットの主役であり、多くの参加者がリスクを傾けていたユーロクロスは軒並み下落しました。
ユーロ/米ドル、ユーロ/円、ユーロ/スイスフランと、先週(7月31日~)まで上昇していたユーロ絡みの通貨ペアは一気に調整へ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 1時間足)
■リスクオフでも調整が続かないと思われるスイスフラン
ただ、リスクオフマーケットになっても、調整が続かないと思われているのが、スイスフラン。
まず、先月(7月)末、東京市場でひさしぶりにスイスフランという通貨が話題になりました。
大手邦銀で、かなりまとまったスイスフラン/円の取引が出た模様で、東京市場でスイスフラン/円が急落したことがマーケットで大きな話題となりました。
【参考記事】
●今週はSQ絡みの「円高・株安」にご用心! ドル/円よりユーロ/円を買うべき理由とは?(8月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
これは、スイスにある東芝傘下の企業、ランディス・ギアの株式売却によるものと思われています。
スイスフラン急落 対ユーロ、2年半ぶり安値
スイスフランが急落している。28日の東京外国為替市場で1ユーロ=1.13スイスフランと約2年半ぶりの安値を付けた。金融引き締めに向かう米欧と比べ、スイスは金融緩和の継続が確実視されている。加えて市場では「東芝が傘下のスイス企業ランディス・ギアの株式を売却すると公表したことが影響している」(欧州銀行)との声が出ている。
東芝は株式の譲渡日を25日としており、スイスフランは26日から急落している。市場では売却金額1617億円がスイスフラン建てで支払われ、東芝が円やドルに替える際にフラン売りが膨らむとの見立てが出ていた。
出所:日経新聞
これにより、スイスフラン/円は急落。この取引が相場的に戻り基調を演じていたユーロ/スイスフランの急騰を誘引します。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:スイスフラン/円 4時間足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 4時間足)
ユーロ/スイスフランは2年前、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が設定した1.2000フランのフロアが決壊して大暴落したことで、マーケットに大きな影響を与えました。
ユーロ/スイスフランを取引している顧客はもちろんのこと、流動性の枯渇により、多くのFX会社も少なからず痛手を受けました。
【参考記事】
●通貨安戦争からスイス脱落、カナダ参戦! ECBのQEが予想どおりならユーロ反発も(2015年1月22日、西原宏一)
それ以降、ユーロ/スイスフランという通貨ペアは、まったく相場として機能しない通貨ペアとなってしまいます。
SNBがフロアーとしていた1.2000フランの死守をあきらめたのは、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和を開始を知ったためといわれています。
ECBが量的緩和を始めれば、ユーロ安が進み、SNBが死守していたユーロ/スイスフランの1.2000フランというフロアをサポートできないからです。
■ユーロ/スイスフランは1.20フランが視野入りか
それから、2年半が経過。
マーケットでは過去2年半、通貨ペアとして機能していなかったユーロ/スイスフランがじわじわと上昇。
この背景は、ECBの緩和解除のウワサ。
2年半前、SNBがユーロ/スイスフランの1.2000フランのフロアをあきらめたのは、ECBの量的緩和の開始でした。
現在のマーケットでは、ECBの緩和解除がマーケットのコンセンサスになりつつあり、それに伴ってユーロ/スイスフランは、2年半前にSNBが設定していた1.2000フランに向けてじわじわと上昇。
一時、1.1538フランまで回復しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 月足)
それが、前述の北朝鮮情勢の悪化をきっかけにしたリスクオフでいったん1.12フラン台まで戻されていますが、ECBの緩和解除へ向けて、ユーロ/スイスフランの上昇基調は変わらず。
某フランス系の銀行は、仮にリスクオフでユーロ/スイスフランが急落すれば、SNBの介入の可能性があることにも言及しています。
北朝鮮情勢の悪化により、ユーロ/スイスフランはいったん調整に入っていますが、ECBの緩和解除に向けて、1.2000フラン回復への上昇基調は変わらず。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 月足)
米ドル/円がレンジに陥っているため、対円でのスイスフランの下落余地も拡大。
1.2000フランに向けて、回復基調に入ったユーロ/スイスフランの動向に注目です。
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