■10月解散総選挙、11月トランプ来日で円安へ向かうか
今月(9月)8日(金)に108円を割り込んで下落基調が強まるかと思われた米ドル/円ですが、安値更新がダマシとなる「ベアトラップ」(※1)に。
チャート的には「アイランドリバーサル」(※2)を形成しており、底打ちと考えてよさそうです。
(※編集部注1:「ベアトラップ」とは、安値を更新して下落トレンド継続になると思われたのに、それが反転上昇すること)
(※編集部注2:「アイランドリバーサル」とは、窓を開けた後に相場が反転し、再び窓を開けて元の水準へ戻った際に形成される「離れ小島」の様な形のこと)
【参考記事】
●ドル/円下げ止まりを示唆するサインとは? ユーロ/円は中期的に140円を目指す動きに(9月14日、西原宏一)
米ドル/円は9月8日(金)の大底からもう4円も巻き戻しているんですよね。
【参考記事】
北朝鮮リスクでドル/円下落も急反発警戒! 上昇再開のユーロ/米ドルは新ステージへ(9月11日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
さらに週末に流れてきたのが、政府与党が「10月10日公示・22日投開票」を軸に解散総選挙の調整に入ったとのニュース。
選挙へ向けて政府が何か対策を打ってくる、との思惑から米ドル/円には上昇バイアスがかかりそう。
11月上旬にはトランプ米大統領の来日も予定されており総選挙、トランプ来日と続く大イベントで安倍首相がうまく立ち回れば株高・円安を演出できそうです。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
■利上げ期待で英ポンド急騰、まだ上昇余地は残る
先週(9月11日~)の主役は英ポンド/円でしたね。
9月14日(木)のMPC(イングランド銀行金融政策委員会)では金利こそ据え置きでしたが、金融緩和解除を示唆したことで英ポンド高へ。翌日(9月15日)にはブリハMPC委員の早期利上げ発言で、さらにもう一段の英ポンド高に。
結果、先週(9月11日~)の英ポンド/円は9円近く上昇しました。11月の利上げ織り込み度は61%まで上昇しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 4時間足)
9月18日(月)24時からはBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])カーニー総裁の講演が予定されています。
発言がブレやすい人ですが、もし発言が迷走して英ポンドが下がる場面あれば買い増すチャンスかもしれませんね。
IMMポジションを見ても英ポンドは4.6万枚のショート。先週(9月11日~)末の上昇で整理は進んでいるでしょうが、まだ市場はショートでしょう。
61%の織り込み度はまだ不充分だし、100%に近づいてセル・ザ・ファクト的な動きが出るまでは英ポンド買いでよさそうです。
(出所:Bloomberg)
■ユーロ/英ポンドの売りがペイントレードとなる
米ドル/円が底打ちして円安基調が強まるなら、対円での英ポンド買いがよさそうですね。
2.3兆円の日本国債を保有するノルウェー政府年金基金は円建て債のウェイトを減らし、米ドル、ユーロ、英ポンド建てへとシフトしていくようです。
こうした動きも円安材料となりますよね。
ただ、このまま円安が進んで米ドル/円が115円へと向かうかというとクエスチョン。
北朝鮮などによるリスクオフの円高は、瞬発力があっても持続力がない。ミサイル発射の一報で瞬間的に円が買われますが、数時間後にはもとに戻ってしまう。
こうした傾向をわかっている機関投資家ならば、上値を追って買わずともリスクオフの円高を待てばいい、という発想になる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
そう考えれば米ドル/円は底打ちしたものの上値は限定的、108円から112円程度でのレンジなのかもしれません。
(出所:Bloomberg)
西原さんが英ポンドを買うとしたら通貨ペアは?
ユーロ/英ポンドでしょうか。市場はユーロロング、英ポンドショートですから投資家がもっとも痛みを感じるのが、保有ポジションの反対に動くこと。
つまりユーロ/英ポンドの下落でしょう。
市場は得てして投資家が望まない方向に動きますよね。
そう考えると最たる「ペイン(痛み)トレード」がユーロ/英ポンドの売り。
チャート的にも0.93ポンドが重たくなっており、おもしろいと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/英ポンド 日足)
■日米の中銀会合、ドイツ、NZでは総選挙も
今週(9月18日~)はイベントが多いですね。9月20日(水)深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)、21日(木)に日本銀行の金融政策決定会合が控えています。
FOMCではバランスシートの縮小が決定されるのでしょうが、すでに6月にプランを発表済み。
材料となりそうなのは経済見通しや今後の利上げペースでしょう。日銀会合は政策変更もなく、今のところは無風となる可能性が高い。
週末になると、9月23日(土)にニュージランド、24日(日)にドイツで総選挙が行われます。
ニュージランドでは党首が変わってから野党・労働党の支持率が急伸、NZドルが売られる場面もありました。
選挙を迎えるまでは野党躍進の報道がNZドル売りをもたらす可能性がありますが、現状では与党優勢でNZドルは上昇しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 日足)
■今年は金利正常化へ向かう通貨を買っていれば報われる
ドイツではメルケル率いる与党が優勢と伝わっており、とくに波乱要因とはならなさそうな風向きです。コモディティはどうですか?
気になっているのがメタル系の下落。銅、プラチナ、パラジウムなどがこぞって下げ始めています。
9月上旬まで急騰していた反動もあるのでしょうが、「ドクター・コッパー」と呼ばれる銅価格の下落が「炭鉱のカナリア」(危機の前兆)となるなら、気になるのは楽観が広がりだした米国株の下落。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
今週(9月18日~)はFOMCもあるし、気をつけておいたほうがよいかなと思います。
ただでもイベントが多い1週間なのに日本の解散総選挙も加わって材料には事欠かなそうですね。
個々のイベントへの反応はメルマガ「FXトレード戦略指令!」でフォローしていくとして、注目はやはり英ポンド。
今年(2017年)の傾向として、金利が正常化に向かう通貨の上昇トレンドが顕著です。
ユーロ、加ドルときて、続こうとしているのが英ポンド。ユーロ/英ポンドの戻り売り、あるいは英ポンド/円の押し目買いでいいのではないでしょうか。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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