ここに1枚のチャート画像がある。
(出所:サクソバンク証券)
中央に刻まれた真っ赤な大陰線。血に染められたかのような、その大陰線は短時間のうちにトルコリラ/円に起こった惨劇を鮮やかに記録している。
2017年10月9日(月)、体育の日。いつもなら忙しい月曜日の朝だが、この日、日本は祝日で、ゆったりまどろんでいる人もきっと多かったことだろう。そんなゆったり気分だったはずの日本時間朝方に、いきなり襲ってきたのがトルコリラの暴落だった。
■約2円半も異なる安値のレートは市場の混乱の反映か
暴落の理由はなんだろう?
各マスメディアはトルコと米国が相互にビザ発給を停止し、トルコと米国の関係が悪化することを懸念したためだと報じていた。
トルコリラ/円、前週末、10月6日(金)の終値は31.10円台付近。そして、トルコリラ/円を取り扱っているおもなFX口座および取引所がこの朝つけた安値はざっと以下のとおりだった。
FX口座 | 10月9日安値 |
セントラル短資FX [FXダイレクトプラス] |
29.649円 |
マネーパートナーズ [パートナーズFX] |
29.302円 |
外為どっとコム [外貨ネクストネオ] |
29.233円 |
SBI FXトレード | 29.0610円 |
くりっく365 | 28.77円 |
FXプライム byGMO [選べる外貨] |
28.405円 |
GMOクリック証券 [FXネオ] |
28.233円 |
ヒロセ通商 [LION FX] |
27.173円 |
※安値はBID(FX会社側の買値、投資家側の売値)の1時間足チャートで確認
この中で安値のレートが一番低かったのはヒロセ通商[LION FX]。その安値、27.173円で計算すれば、トルコリラ/円は前週末から12.8%も下落したことになる。これはかなりの下落率だ。
そして、各社の安値を見ると、29円台半ばから27円台前半まで、約2円半もの差があることがわかる。
トルコリラはただでさえ、取引量の少ないマイナー通貨。そして、日本時間早朝は1日の中で特に取引量が少ないと思われる時間帯だ。さらに、この日は日本が祝日だったから、輪をかけて取引量が少ないものと思われた。
そんな状況に襲いかかったトルコリラ急落だけに、各FX会社で安値のレートにかなりの差が出ているのは仕方がない現象だとも思える。約2円半もの差があること自体が、市場の混乱を映し出しているとも言えそうだ。
■「トルコと米国のビザ発給相互停止」は大問題なのか?
各FX会社の安値を調べるため、各FX会社のトルコリラ/円チャートをいろいろと見ているうちに、ふと疑問がわいてきた。
以下は先ほどとは別の会社、FXプライム byGMO[選べる外貨]の取引ツール「PrimeNavigator」に表示されたトルコリラ/円の10分足チャートだ。
(出所:FXプライム byGMO)
中央に黒々と描かれた2本の大陰線が衝撃のすさまじさを物語っている。しかし、その上に開いている窓が存外小さい。
この窓の大きさ──つまり、前週末の終値とこの週の始値の差はどれぐらいだろうか?
FXプライム byGMO[選べる外貨]の前週末、10月6日(金)の終値は31.133円。この週、10月9日(月)の始値は30.652円。
その差、0.481円。下落率1.5%という計算になる。
この数字は大きいと言えば大きいが、といっても、たまにはある変動の範囲内だろう。大事件というほどではない。
そもそも今回、ニュースとなった「トルコと米国のビザ発給相互停止」とは、トルコに行きたい米国人、米国に行きたいトルコ人にとっては大問題だろうが、トルコリラ相場にとっては、どれほど重大な問題なのだろうか?
トルコ情勢の門外漢である筆者には今一つピンと来ないが、それは筆者だけでなく、世界中の市場関係者や情報ベンダーの記者たちも、もしかしたら、よくわかっていないということはないだろうか? トルコリラ相場下落の値幅が大きなものだったから、そこから逆に考えて、「トルコと米国のビザ発給相互停止」が大変なニュースだと思った──ということはないだろうか?
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