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田向宏行
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FX情報局

衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の
真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?
のかも…(2)

2017年11月01日(水)15:52公開 (2017年11月01日(水)15:52更新)
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「衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(1)」からつづく)

どんどん積み上がっていった建玉数量が丸わかり

 そして、これだけではないのだ。

 海外投機筋が舌なめずりしそうなデータが、この日本ではごていねいに公開されているのである。

 それがくりっく365におけるトルコリラ/円の建玉数量のデータだ。

くりっく365におけるトルコリラ/円・建玉数量の推移

(出所:東京金融取引所の発表データより、ザイFX!編集部が作成)

 ここ数カ月、くりっく365におけるトルコリラ/円の建玉数量(※1)はグングン積み上がっており、10月6日(金)には約30万枚(※2)に達していた。このデータは律儀に毎日公開されており、これを見ると、投機筋が売り崩したくなる気満々になってしまったのではないかと想像したくなるのだ。

(※1 この「建玉数量」は買い建玉なのか、売り建玉なのか、明記されていないのだが、おそらく100%近くが買い建玉であろうと推測される)

(※2 くりっく365のトルコリラ/円の場合、「1枚」とは「1万通貨」を指す)

 もう1つ、トルコリラ/円の建玉数量に加え、日足終値ベースのトルコリラ/円相場を重ね合わせたチャートも作ってみた。

くりっく365におけるトルコリラ/円・建玉数量の推移&トルコリラ/円相場

(出所:東京金融取引所の発表データより、ザイFX!編集部が作成)

 これを見ると、まず、2015年5月のくりっく365へのトルコリラ/円上場直後に人気が沸騰し、数カ月間で建玉数量が一気に増加したことがわかる。

 その後はトルコリラ/円が長期下落トレンドに入ってしまい、建玉数量がどんどん積み上がることはなかったが、逆にそれだけの下落トレンドだったにもかかわらず、建玉数量はおおむねレンジで推移しており、買いポジションがしぶとく残り続けていたことがうかがえる。

 そして、2017年に入って、どうもトルコリラ/円相場に底打ちの気配が出てくると、建玉数量はどんどん積み上がっていったということなのだった。

くりっく365のトルコリラ/円のスペックはまずまず悪くない

 実際、くりっく365トルコリラ/円のスペックはまずまず魅力的なものに思える。

くりっく365トルコリラバナー

くりっく365の公式サイトではトルコリラ/円、メキシコペソ/円、南アフリカランド/円などが大きく宣伝されているのが目につくが、そこに書かれているトルコリラ/円のスワップ金利(スワップポイント)は1万通貨あたり98円(2017年9月の平均値)だ。

 このスワップ金利の数値はFX業界最高水準ではないものの、まずまず良い水準だ。

【参考コンテンツ】
FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!「トルコリラ/円スワップ金利の高い順」

 また、スプレッドについては、くりっく365は原則固定制ではなく、変動制となっているため、ザイFX!のトルコリラ取扱い会社比較コーナーでは、現在、その数値を掲載していないが、くりっく365公式サイトでは4.1銭という数字が掲載されている。これは2017年9月の平均実績値とのことだ。

 こちらもザイFX!のトルコリラ取扱い会社比較コーナーで比較してみると、FX業界最狭水準ではないものの、まあまあ悪くない数値だとわかる。

【参考コンテンツ】
FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!「スプレッドの狭い順」

トルコリラ/円が米ドル/円に次ぐ第2位の建玉数量だって!?

 やや寄り道した。くりっく365におけるトルコリラ/円の建玉数量の話に戻ろう。くりっく365におけるトルコリラ/円の建玉数量が約30万枚といっても、それがどれだけスゴいことなのか、今一つピンと来ない人もいるかもしれない。

 そこで、次に見てみたいのはくりっく365における2017年9月の通貨ペア別建玉数量のデータだ。以下の円グラフをご覧いただきたい。

くりっく365における通貨ペア別建玉数量

(出所:東京金融取引所の発表データより、ザイFX!編集部が作成)

 なんと、トルコリラ/円は18.99%で堂々の第2位!!

 さすがに米ドル/円にはかなわないものの、くりっく365におけるトルコリラ/円は米ドル/円に次ぐナンバー2のポジションにあるのだ。ユーロ/円、豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/米ドルといった主要通貨ペアよりも、トルコリラ/円の建玉数量が多いのである。

 もう1つ、くりっく365の通貨ペア別建玉数量ではなく、通貨ペア別取引数量についても見てみよう。こちらも2017年9月のデータだ。

くりっく365における通貨ペア別取引数量

(出所:東京金融取引所の発表データより、ザイFX!編集部が作成)

取引数量でのトルコリラ/円のシェアは13.72%となっている。建玉数量に比べると小さい数字だが、通貨ペア別でシェア第2位というポジションはこちらでも変わらない。

日本の店頭FXでのトルコリラ/円の取引金額は0.2%だけ

 このくりっく365におけるトルコリラ/円のシェアはどれだけ風変わりなことなのか、他のデータと比較して確認したい。

 今度は金融先物取引業協会(金先協会)が発表した、2017年9月の日本の店頭FXにおける通貨ペア別取引金額のデータを見てみたい。

日本の店頭FXにおける通貨ペア別取引金額

(出所:金融先物取引業協会のデータより、ザイFX!編集部が作成)

 こちらを見ると、米ドル/円が約74%と圧倒的シェアで、以下、英ポンド/円、ユーロ/米ドルと続いている。そんな中、トルコリラ/円は第9位で、割と多い感じもするが、それでもシェアは0.2%ほどにすぎない。

くりっく365のデータは取引数量であり、金先協会のデータは取引金額なので、1リラ=30円程度と絶対的なレートが低いトルコリラ/円の数値はその分、低くなると考えられるが、そのことを考慮しても、くりっく365におけるトルコリラ/円のシェアが異様に大きなものになっていることがわかるだろう。

 ちなみに金先協会ではトルコリラ/円については、建玉金額のデータは公表されていない。

世界の外国為替市場ではトルコリラ/円の取引金額は0.1%

 さらに、世界の外国為替市場において、トルコリラはどんな取引状況になっているか、見てみよう。

国際決済銀行(BIS)が発表した、2016年の世界の外国為替市場における通貨ペア別取引金額が次の円グラフだ。

世界の外国為替市場における通貨ペア別取引金額

(出所:国際決済銀行のデータより、ザイFX!編集部が作成)

 シェア第1位はユーロ/米ドル。以下、米ドル/円、英ポンド/米ドルと続き、米ドルが絡んだ、いわゆるドルストレートの通貨ペアが上位を占めていることがわかるが、トルコリラ/円は第37位で、全体のわずか0.1%に当たる取引金額しかない。これは建玉金額ではなく、取引金額のデータではあるが、建玉金額もおそらく非常に少ない数字になるものと思われる。

 これらのデータを見ると、建玉数量が18.99%で第2位、取引数量が13.72%で第2位という、くりっく365におけるトルコリラ/円が実に特異なものであることがわかるだろう。

 世界的にも珍しい為替の取引所取引を提供するくりっく365。この取引所では、マイナー通貨ペアであるはずのトルコリラ/円のシェアが米ドル/円に次ぐ第2位というポジションにあるのだ。その特異性は世界のFX業界の中でも際立ったものになっていると思われる。

約160億円分ものポジションが一気に消滅した!?

 ここで前回の記事で取り上げたトルコリラ/円の1分足チャートに今一度、戻ってみよう。

【参考記事】
衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(1)

トルコリラ/円 1分足(10月9日、クリックで拡大)
トルコリラ/円 1分足(10月9日)

(出所:サクソバンク証券

 トルコリラ/円は7時4分の大きな下げのあとも、乱高下しつつさらに大きく下落した。ただ、どこまでも奈落の底に沈んでいったわけではなかった。7時10分を少し過ぎたあたりで反転し始めている。このサクソバンク証券のチャートでは安値をつけたのが7時13分となっている。

 このときの市場は混乱していたようだから、安値をつけた時刻はFX会社によって少し違っているかもしれないが、おおよそ7時10分過ぎぐらいから反転し始め、その後、2~3日で30円台後半まで戻す展開となったことは変わらない。

トルコリラ/円 1分足(10月9日、クリックで拡大)
トルコリラ/円 1分足(10月9日)

(出所:サクソバンク証券

 ここでポイントになると思われるのは「7時10分」という時刻だ。

 7時10分には何があるのだろうか?

 それはくりっく365の取引開始時刻なのである。

 月曜朝は7時から取引が始まるFX会社が非常に多い中、なぜかくりっく365は10分だけ少し遅れて、中途半端な時刻から取引が始まるのだ。

 土日のうちに何か大きな出来事があり、月曜日オープンから相場が一方向に大きく動いたときなどは、くりっく365でポジションを持っていると、一歩遅れて対応しないといけないことになる。

 そして、今回のようなケースで取引が開始されれば、7時10分の取引開始直後にくりっく365ではストップロス注文が執行されたり、強制的なロスカットが行われたりすることだろう。何しろトルコリラ/円の買い建玉は大きく積み上がっていたのだ。

 そして、それによって、さらに相場は下落することになるだろう。

 そう考えて、投機筋は7時10分の少し前に大規模な売り仕掛けを行うのではないだろうか? 7時10分というくりっく365の取引開始時刻は絶好のターゲットになってしまうのではないか。

 実際、この日、くりっく365のトルコリラ/円は1日で約5万3000枚も建玉数量が減少している。トルコリラ/円のレートを仮に30円とすれば、約5万3000枚とは日本円にして約160億円分ものポジションということになる。それがおそらく7時10分の取引開始直後の数分のうちに一気に減少したのだ。

くりっく365におけるトルコリラ/円建玉数量の推移

(出所:東京金融取引所の発表データより、ザイFX!編集部が作成)

 この流れは店頭FXの方にも波及し、また、そこでストップロス注文が執行されたり、強制的なロスカットが行われたりすることもありそうだ。

 そのとき、相場はパニックの頂点に達する。そして、そのときこそが売りを仕掛けたと筆者が想像する投機筋が買い戻しを入れるチャンスである。こうしてパニックの中、買い戻しが入り、相場は反転していったのではないだろうか?

原因とされるニュースで下がった分は数十銭だけ?

 まとめると、トルコリラ/円を売り崩す諸条件が揃ったと考えた海外投機筋がパンパンに膨れ上がったくりっく365のトルコリラ/円買い建玉を狙い、7時10分のくりっく365取引開始前に大きくトルコリラを売り(その前からも少しずつ売っていたかもしれないが)、そして、くりっく365の取引開始後にさらに相場が急落するのを見て買い戻しに入った──これが筆者の想像の全体像である。

 10月9日(月)の暴落騒動があった翌週末、10月20日(金)時点でトルコリラ/円は30円台後半を推移していた。暴落騒動が起きる前のトルコリラ/円は31円台前半だった。だから、相場は戻しきらなかったのだが、この31円台前半と30円台後半の数十銭の値幅だけが「トルコと米国のビザ発給相互停止」というニュースを直接反映したものではないだろうか(※)。

(※その後のトルコリラ/円はまた下落し始めているが、それについては後述する)

トルコリラ/円 4時間足(2017年10月9日前後、クリックで拡大)
トルコリラ/円 4時間足(2017年10月9日前後)

(出所:サクソバンク証券

 実際、上のチャートに緩やかな右肩下がりの矢印で示したとおり、急落前の緩やかな下落トレンドを延長すると、ちょうどよく10月20日(金)あたりの実勢レートにたどりつくのだ。繰り返しになるが、ファンダメンタルズを反映した下落の値幅はこれぐらいなのではないだろうか。

10月9日(月)、体育の日に刻まれたトルコリラ/円の長い長い下ヒゲは、積み上がり過ぎたくりっく365における買いポジションと、それを情報開示していることによってもたらされた投機筋の売り仕掛けによって形成されたものであり、本来はなくてもよかったものではなかったのか──筆者はそのように想像している。

 そんなことも含めて、それが相場だと言われれば、たしかにそのとおりではあるのだが…。

スワップ金利の高さと今回つけた安値に逆相関の関係あり!?

 やや余談になるが、ここで今回のトルコリラ/円暴落で店頭FXを含め、各FX口座がつけた安値を今一度、掲載してみたい。これは前回の記事中で掲載したものだ。

【参考記事】
衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(1)

※安値はBID(FX会社側の買値、投資家側の売値)の1時間足チャートで確認

 さらに上表へ各口座のスワップ金利(スワップポイント)を並べて加えてみよう。すると、以下の表のようになる。スワップ金利はザイFX!の以下の比較コンテンツで確認できる数値を採用した。このスワップ金利の調査日は2017年9月26日~27日だ(調査日がトルコリラ/円暴落の日でないことはご容赦を)。

【参考コンテンツ】
FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!「トルコリラ/円スワップ金利の高い順」

各FX口座でのトルコリラ円の安値とスワップ金利

※安値はBID(FX会社側の買値、投資家側の売値)の1時間足チャートで確認。スワップ金利の調査日は2017年9月26日~27日

 これを見ると、スワップ金利の高さと今回つけた安値はちょっとした逆相関の関係にあるのではないかと思えてくる。安値が27~28円台と低かった口座のスワップ金利は99~106円と高水準のものばかりだったのだ。

 一方、安値が29円台と高めだった口座はそこまでスワップ金利が高くない。

 これはもしかしたら、今回、安値のレートが低かった口座は、スワップ金利の高さにひかれて、積み上がってきた買いポジションが多くなっており、その分、ストップロスや強制的なロスカットが激しいものになってしまったということなのかもしれない、と筆者は想像した。

 先に筆者はくりっく365がいかに特異な存在であるかを力説したが、この安値のデータについては、くりっく365は28円台後半であり、これは他社と比べたとき、最安水準ということはない。このことは公平を期して、付記しておきたい。

トルコリラ暴落騒動から得られる教訓とは?

 今回のトルコリラ暴落騒動から得られた教訓は何か。筆者は以下のようなことを思い浮かべた。以下、箇条書きで記しておきたい。


トルコリラのようなマイナーな高金利通貨の買いポジションを建てるなら、レバレッジはあまりかけない方がいい。欲張りは禁物だ。

くりっく365で発表されている高金利通貨の建玉数量は注意して見ておくと良さそうだ。積み上がりすぎていたら、危ないかもしれない。

くりっく365では10月30日(月)にメキシコペソ/円が上場された。くりっく365公式サイトではメキシコペソについて「政策金利は7.00%の高金利!」とうたっているが、将来的にトルコリラ/円と同じようなことが起こらないか、注意しておいた方がよいかもしれない。

・実勢レートより、ものすごく下のレートに買い指値を入れておくと、今回のような場合に運良く約定して、建て値の良いポジションが持てるかもしれない(このようなやり方は当然、リスクもあるので、必ずしもオススメするわけではないが…)。

サクソバンク証券にはとりあえず、口座を開いておくのがよいかも…。月曜早朝から相場状況を見ることができるし、今回のトルコリラ/円のケースでも、もしも「おかしいな」と思ったら、午前3~4時のまだレートが高い段階で、売りを入れられたかもしれない。仮に他社でトルコリラ/円を買っていたとして、月曜午前3時にそれをどうにかしようと思っても、取引開始前なのでそちらについては何もできないが、サクソバンク証券の口座があれば、そこで売りのヘッジを入れることはできる。


 なお、トルコリラ/円は10月下旬から再び下落し始め、急落はしていないが、再び30円の大台を割り込む時間帯が長くなっている。ドイツの銀行がトルコへの融資を削減するなど、ドイツとトルコの関係悪化が背景にあるなどと報道されているようだ。

 そして、急落で懲りてないというのか、急落をチャンスとみたのか、くりっく365におけるトルコリラ/円の建玉数量は再び積み上がっており、10月末現在で約29万枚まで膨れ上がっている。

くりっく365におけるトルコリラ/円・建玉数量の推移

(出所:東京金融取引所の発表データより、ザイFX!編集部が作成)

 本記事を公開した11月1日(水)、日経平均は408円超の大幅上昇となり、円安もある程度進んだリスクオンムードにある。

 この雰囲気が続くなら、トルコリラ/円が急落することもないのでは?と思えるものの、週末の11月3日(金)は文化の日で日本が祝日。月曜日ではなく、金曜日なので10月9日(月)とはやや状況が違うが、祝日のこの日、東京時間の取引量が少なくなるのは間違いないところ。急な相場変動を一応、警戒しておいた方がよいかもしれない。

トルコリラ/円 4時間足(クリックで拡大)
トルコリラ/円 4時間足

(出所:サクソバンク証券

日本発の市場混乱リスクを避ける。金融庁の考えに全面賛同

 日本経済新聞電子版は9月27日(水)に金融庁がFXの最大レバレッジを10倍に引き下げる規制見直しを検討中であると報じた(ここではこれを新レバレッジ規制と呼ぶ)。

【参考記事】
FXのレバレッジが25倍→10倍へ引き下げ!? 日経報道は真実? 個人投資家への影響は?

 さらに、日本経済新聞が発行する週刊金融情報紙・日経ヴェリタスの10月15日号には「放電塔 金融記者座談会」というコーナーに「寝耳に水 金融庁の証拠金倍率下げ案 FX業界、『死活問題』と大騒ぎ」と題された座談会形式の記事が掲載された。

新レバレッジ規制に関する記事をツイートする日経ヴェリタスの公式ツイッターアカウント
新レバレッジ規制に関する記事をツイートする日経ヴェリタスの公式ツイッターアカウント

 そこには「今回の規制案は『店頭FX』だけが対象らしいね」と書かれていた。つまり、一体全体どういうわけか、くりっく365は新レバレッジ規制の対象外ということのようなのだ。

 また、その記事では金融庁の真意について、ある記者が次のように述べていた。

……今回の規制案は、個人投資家の保護というよりも市場のシステム不安を取り除くことが狙いのようだ。いまや日本のFX市場は、年間の取引金額が5000兆円規模と世界最大。米トランプ政権や北朝鮮問題の動き次第で、相場が急変する潜在リスクは高い。日本発の市場混乱リスクを事前に摘みたい、というのが金融庁の本音だと思うよ。

新レバレッジ規制について、金融庁は何も公式発表をしていない。そして、日本経済新聞社はあくまで一民間企業だ。

 けれど、本件に関しては、日本経済新聞社は金融庁の意志をおそらくそのまま伝えているのだろうとFXファンは忖度していると思われる。日経系のメディアに載っている情報は金融庁の準公式発表と思われているということだ。

「日本発の市場混乱リスクを事前に摘みたい」ということは、間違いなく金融庁の考えなのだろう。筆者は金融庁のこの考えに全面的に賛同する。金融庁はすばらしい考え方に基づいて規制を進めようとしている。


くりっく365は通貨別建玉数量でトルコリラ/円というマイナー通貨ペアのシェアが18.99%にも達する、FX取引が行われる場としては真に特異な存在である。そして、その建玉数量は日々、赤裸々に公開されている。建玉が積み上がり過ぎれば、投機筋に狙われることもあるかもしれない。

 そして、このくりっく365は新レバレッジ規制の対象にならないという。店頭FXが新レバレッジ規制の対象になる一方で、だ。

 日本発の市場混乱リスクを事前に摘みたい──筆者は金融庁の考えに静かに賛意を示し、もしも規制が行われるのなら、それが合理的な内容になることを期待して、本稿を終わりたいと思う。

(文/ザイFX!編集長・井口稔 編集協力/ザイFX!編集部・庄司正高)

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