■ユーロ/円の反落が今後の相場の流れを暗示?
ユーロ/円は、一昨日(10月25日)、9月高値を更新したものの、昨日(10月26日)、大きく反落してきた。円安をリードしてきたユーロ/円の変化は、これからの相場の流れを暗示していると思う。

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昨日(10月26日)のユーロの急落は、ECB(欧州中央銀行)政策の決定がきっかけだった。ECBは量的金融緩和の規模半減と、2018年9月までの延長を決定し、また、将来の規模拡大・再延長の可能性も示唆した。
QE(量的緩和策)縮小自体は既定路線だったが、その内容が「緩やか」な出口戦略だったとして、ユーロ売りの口実に使われた模様だ。
というのも、ユーロの頭打ち、また反落は、日足では大型「三尊型(※)」天井の形成をもってすでに示唆されていた。ECB政策の発表は、下落の引き金を引いたにすぎないとみるべきであろう。
(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)
【参考記事】
●ひどい米雇用統計結果でも米ドルは予想どおり上昇! でも続かなかった理由とは?(2017年10月13日、陳満咲杜)
換言すれば、仮にECBが今回「急激」な政策を打ち出して、ユーロの切り返しがあったとしても、上値は限定的だったと思われる。
こういった構造的なポイントは、ユーロ/米ドルとドルインデックスを比較対照してみれば、よりわかりやすいだろう。
(出所:FXブロードネット)

(出所:Bloomberg)
■メインクロス円の上昇モメンタムは低下
ユーロ/円をはじめ、メインクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くはブル(上昇)トレンドをなお維持しているものの、上昇モメンタムの低下がみられてきた。
豪ドル/円は9月高値トライどころか、再度87円の節目割れの可能性も示唆され、英ポンド/円は切り返しを維持しているものの、9月高値まではなお距離あり、といった状況だ。

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■米ドル上昇にともない、クロス円の値動きはどうなる?
上昇モメンタムの失速は、前述のドルインデックスのフォーメーションから大きなヒントを得られる。
前回のコラムでも暗示したように、クロス円の上昇モメンタムは、緩やかな米ドル高が最も重要な前提条件である。
【参考記事】
●現在のドル/円日足チャートはユーロ/ドルが6月に上昇し始めたときと同じサインが点灯!(2017年10月20日、陳満咲杜)
米ドル/円が上昇波を展開する一方、ユーロなど主要外貨が米ドルに対して保ち合いを保てれば、結果的にクロス円の上昇を加速させることになる。一昨日(10月25日)のユーロ/円の高値更新はその好例であった。
しかし、昨日(10月26日)のユーロ急落に照らして考えると、米ドル全体がこれから反騰のスピードを加速していく可能性が大きいから、クロス円の上昇スピードが外貨の下落加速で抑えられることも十分想定されるわけだ。
とはいえ、米ドル/円がブル基調を保つ限り、クロス円の多くがたちまちベア(下落)トレンドへ転換するとは思わない。場合によっては、いわゆる「深押し」したあと、再度ブルトレンドへ復帰する可能性が大きいから、次の押し目チャンスを狙えばよいだけの話だ。
■ユーロ、英ポンド、豪ドルのうち、上昇するのは?
ところで、ユーロ、英ポンド、豪ドルで、ファンダメンタルズの明暗が鮮明に分かれる可能性がある。
利上げ観測がくすぶる英ポンドの優位性が浮上し、相対的にユーロ、豪ドルの方が下がっていくと思われる。
出口戦略維持でも「タカ派」色を抑え込むECBや、CPI(消費者物価指数)の低下で利上げ観測が低下した豪州に比べ、「秩序なし」のEU(欧州連合)離脱といったリスクを抱えるものの、利上げに踏み切る公算の大きい英ポンドの優位性が突出している。
英ポンドはしばらく、対ユーロ、対豪ドルの優位性を保ち、その結果として、やはりクロス円の中では、英ポンド/円が円安をリードしていく可能性が大きい。ゆえに、9月高値に対する更新は、次は英ポンド/円の方が有望であろう。
■クロス円の上昇は米ドル/円の上昇なしではあり得ない
もっとも、ドルインデックスがすでに底打ちのパターンを完成し、これから上昇を加速していくと想定されるなか、クロス円の上昇は米ドル/円の上昇なしではあり得ない。
米ドル/円は今週(10月23日~)も堅調に推移していた。テクニカル上のポイントは、10月24日(火)に書いたレポートをご参照いただければ、わかりやすいと思う。
本文は以下のとおり。
(出所:FXブロードネット)
ドル/円は昨日一旦114大台をトライしてから反落、陰線引けとなったものの、デイリーの指摘通り、途中のスピード調整と位置づけ、過大評価すべきではかなろう。また、本日の値動き次第、調整が短命に終わり、ブルトレンドの継続でまた高値更新していく公算。
昨日陰線の評価、以下の2点からみれば、前記のような結論を付ける。まず、6日高値のブレイクを果たした20日の「長大線」の後に続いていること、次に、調整があっても、本日ザラ場の安値を含め、6日高値前後をキープしていること。
6日高値の再更新、トレンドの継続や加速を示すサインになることは繰り返し指摘してきた通り。同日罫線が示した弱気「リバーサル」のサインに鑑み、典型的な「スパイクハイ」でもあっただけに、長い「上ひげ」の部分があった。更に、9月27日からの日足の多くも「上ひげ」の形を示し、重要な抵抗ゾーンだったこと示唆。ごくシンプルな見方だが、元抵抗ゾーンが一転して支持ゾーンになるはずで、またなったところを重視すれば、昨日の陰線がもたらした調整が早期完成される蓋然性は高いとみる。
換言すれば、6月高値のブレイク自体を強気サインと見做しているから、同高値前後にて支持を確認できれば、強気サインの健在が証左され、ブルトレンドの維持が有力視される。再度高値更新があれば、7月高値114.51のトライにつながる。
■米ドル/円と日経平均の相関性が薄れているが…
しかし、米ドル/円と日経平均の相関性は、最近だいぶ薄れてきたようにみえる。日経平均の史上最長16連騰があったにもかかわらず、米ドル/円はいまだに7月高値をブレイクしていない(執筆時点)。
よりマクロの視点では、2015年高値から引かれるメインレジスタンスラインを打診する勢いが示され、このまま再度、そこがレジスタンスゾーンと化した場合、米ドル/円は日経平均に追随するのではなく、早期頭打ちになる、といった観測も聞かれる。
(出所:FXブロードネット)
さらに、そもそも日経平均が買われすぎなので、ここから日経平均が反落してくる形で米ドル/円との乖離が解消されていく、といったシナリオも一部市場関係者から提示されている模様だ。
結論から申し上げると、筆者は先月(9月)、チャートに点灯した強気「リバーサル」のサインを重視し、同サインが結果的に「フェイクセットアップ」のサインになる可能性が大きいから、7月高値の更新はもちろん、前述のレジスタンスラインのブレイクも十分想定されると思う。
【参考記事】
●現在のドル/円日足チャートはユーロ/ドルが6月に上昇し始めたときと同じサインが点灯!(2017年10月20日、陳満咲杜)
換言すれば、7月高値の更新はあくまで通過点であり、また、メインレジスタンスラインのブレイクをもって2017年年初来高値の再打診が視野に入るため、目先、弱気になる必要はないと思う。
このような結論になるので、当然のように、米ドル/円と日経平均の乖離がこのままずっと保たれていくと思っていない上に、株安で乖離が解消されるとも思っていない。要するに、米ドル/円は早晩上昇を加速して、その乖離を解消していくといった可能性が高いからだ。

(出所:Bloomberg)
その理屈については、また次回にて詳説したいが、米ドル全体が底打ちのパターンを完成した以上、今からでも素直に米ドル/円買い、ユーロ/米ドル売りを仕掛けて別に遅くないと思う。
ユーロ/米ドルに関しては、1.15ドルの節目を割り込み、2017年年内には1.13ドルの節目割れもあり得るとみる。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
市況はいかに。
(12:45執筆)
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