■米雇用統計後、確かに予想どおり、米ドルは上昇したが…
前回(10月6日)の本コラムでは、「米雇用統計に悲観しなくてもよく、米ドル/円は75%の確率で上昇する」と予測していたが、当たったかどうかは微妙なところだ。
【参考記事】
●今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!?よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!?(2017年10月6日、陳満咲杜)
9月米雇用統計に対する市場の反応のみに限定すれば、予測は当たったと思う。何しろ、予想より極端に悪い雇用者数がリリースされても、米ドル全体はほぼ売られずに上昇し、米ドル/円も一時113.44円まで高値にトライした。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
市況に合わせたような、「ハリケーンの影響を織り込んでいたから」、「雇用者数より時給」、「失業率が悪くなかった」といった「後解釈」の氾濫も、いつものとおりだった。
もっとも、市場の事前調査では、ウォール街の平均コンセンサスは8万人増だった。当然のように、この数字自体もハリケーンの影響を織り込んだ上の予想だった。
が、ふたを開けてみると、3.3万人減という数字だったので、本当はショックを受けてもまったくおかしくなかった。ゆえに、前述の「後解釈」の多くがいかに「インチキ」かがおわかりいただけるだろう。
■北朝鮮情勢の影響で、一転して米ドル安に
それでも米ドル全体は上昇していたので、このまま米ドル高で大引けかと思っていたところ、一転して米ドル安に転じた。北朝鮮を訪問したロシア下院議員の、「北朝鮮が長距離ミサイル発射実験を計画、米西海岸が射程圏に入る」といった見方が報道されたからだ。
米ドル/円は一転して大きく反落し、当日ほぼ最安値の112.63円で大引けした。これに関して、通常の「リスクオフの円買い」といった解釈をすることは、大まかには妥当であると言えるだろう。この意味では、米ドル高の一服があっても仕方がない。
しかし、米ドル/円にしても、ドルインデックスにしても、10月6日(金)高値から反落し、目先まで軟調な推移に留まっている。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
■米ドルは転換期に向かっているが、今まだなお「底を形成中」
前回(10月6日)も指摘したように、北朝鮮の地政学リスクがあっても、それはメイントレンドを決定する要素ではないはずである。
【参考記事】
●今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!? よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!?(2017年10月6日、陳満咲杜)
もちろん、ミサイル発射がまだないために警戒され続けるので、米ドルの頭を抑え込んでいる側面があるが、本当のところは、やはり、まだ本格的な米ドル高の地合いができていない、というテクニカル上の理由が大きいのではないかと思う。
言ってみれば、ドルインデックスは2017年年初来ほぼ一本調子で下落してきた分、修正されるのにも時間がかかり、また、底打ちのパターンは煮詰まってから効いてくる公算が大きいから、今はなお、底を形成する段階にある。この視点を大事にすれば、最近の市況をより理解できるのではないだろうか。

(出所:Bloomberg)
米ドル安のトレンドがすでに一服し、また、米ドル高へ転換する時期に差し掛かっているから、「予想よりだいぶ悪かった米雇用者数が出ても、まず、米ドル高に反応した」ということが、これからのトレンドを暗示する値動きだとみる。
一方、その後、一転して反落してきたのは、地政学リスク云々というよりは、米ドル全体はなお底を形成する途中なので、一直線にはいかないからではないだろうか。
■ドルインデックスは日足で「三尊底」が形成されつつある
実際、ドルインデックスの日足を見る限り、いわゆる「三尊底(※)」(ヘッド&ショルダーズ・ボトム)のパターンが形成されつつあることがわかる。底打ちのパターンとしてもっとも有力なので、成功すればこれからの米ドル高をもたらすだろう。
(※編集部注:「三尊底」とはチャートのパターンの1つで、大底を示す典型的な形とされている。「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」とも呼ばれる。また、「三尊底」の逆で、天井を示す典型的な形が「三尊型」(ヘッド&ショルダーズ))

(出所:Bloomberg)
■ユーロ/米ドルは二重に「三尊型」を形成中
対照的に、ユーロ/米ドルの1.1669ドル(10月6日)の打診、また同安値からの切り返しもそれぞれ「規則正しかった」とみる。
10月6日(金)の安値打診は、先日形成された「三尊型」(※1)が示すとおりの動きだったと見られる。そして、昨日(10月12日)までの切り返しは、8月初頭から形成してきた、より大きい「三尊型」(※2)の一部と見なすことができる。
(※1 執筆者注:この「三尊型」は、以下のチャート上に黄色の丸を3つ描いて示した)
(※2 執筆者注:この「三尊型」は、以下のチャート上に緑の丸を描いて示した)
(出所:FXブロードネット)
昨日(10月12日)の高値は先日の「三尊型」のネックラインの延長線を再度トライしていただけに、ここからの戻り余地が限られれば、前述の大型「三尊型」構築の可能性も一段と高まるだろう。
■米ドル/円の「ダマシ」のサインが有効かは微妙なところ
米ドル/円に関しては、10月6日(金)の高値更新、また、当日一転して安く大引けした日足自体が「フェイクセットアップ」、つまり、「ダマシ」のサインを点灯した。これが大幅反落をもたらしてもおかしくなかったが、目先なお112円台に留まり、このサインが効いてくるかどうかは微妙だ。
(出所:FXブロードネット)
仮に効ききれない場合、10月6日(金)日足のサインに関する解釈がまったく違うものになるから、注意が必要だ。このあたりはまた、市況の進展に合わせて説明したいと思う。
■ユーロ/円は上昇の可能性が高い
米ドル/円よりユーロ/円の市況は明白であろう。
円安トレンドはクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)がリードし、また、クロス円の中でもユーロ/円がリードしてきた経緯に照らして考えると、ユーロ/円の市況は示唆に富む。具体的なヒントは筆者の10月11日(水)のレポートを見れば、おわかりいただけるかと思う。本文は以下のとおり。
ユーロ/円は131後半のサポートを維持したことで続伸の条件を揃えつつある。GMMAにおける長期移動平均線のサポートの確認と合致するが、プライスアクションのサインとの整合性も示唆されている。
9月26日罫線が示した「スパイクロー」のサイン、同日安値の維持のみではなく、8月2日から引けれてきた元抵抗ラインが支持ラインと化していたことを証左していた。もっとも、同ラインは8月18日安値を「ヘッド」とした「三尊底」というフォーメーションのネックラインとして機能していたから、同延長線がサポートになること自体、押し(反落)の一服を示す。
更に、直近の安値は5日にて確認されたが、9月26日の「スパイクロー」を下回らず、また同日から9日まで形成された「インサイド」のサインが上放れを果たしたことで、目先のレジスタンスゾーンに当たる133.15~133.50を再トライする機運を高める。続伸の条件、同抵抗ゾーンのブレイクを挙げられるが、前記諸サインの整合性に鑑み、ブルシナリオの蓋然性が高いとみる。
前述のように、ユーロ/円は円安トレンドをリードしているから、これから英ポンド/円、豪ドル/円も追随してくるだろう。このあたりの分析はまた次回、市況は如何に。
(13:00執筆)
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