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田向宏行
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【仮想通貨激論!】広瀬隆雄vs大石哲之(3)
マイニングという重労働を忘れてはならない

2017年12月05日(火)17:04公開 (2017年12月05日(火)17:04更新)
ザイFX!編集部

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「【仮想通貨激論!】広瀬隆雄vs大石哲之(2) 本当にトラストレスの意味を理解してます?」からつづく)

 ツイッター上での論争に端を発した本企画。舞台をツイッターからザイFX!「やさしいビットコイン・仮想通貨研究所」に移し、ここまで「トラストレス」という言葉を巡って広瀬隆雄さん@hirosetakao)と大石哲之さん@bigstonebtc)が、それぞれの持論を展開してきました。

 第1回目の記事で広瀬さんは、「ビットコインがトラストレスな状況でも機能することは認めるし、美点だ」としつつも、それが「社会的に受け容れられるかは別問題」と指摘。

【参考記事】
【仮想通貨激論!】広瀬隆雄vs大石哲之(1) トラストレスを巡る筋書きのない議論開始!

 これを受けて大石さんは、「暗号通貨の世界でのトラストレスという言葉は技術的な用語であり、一般の辞書的な意味とは異なる」とし、さらに、「第三者を介さず、人々の力によって支えられるトラストレス性こそがビットコインの価値を生む」と主張。そして、そんなビットコインの利便性に気づいて「社会は追いついてくるものだ」とも言います。

【参考記事】
【仮想通貨激論!】広瀬隆雄vs大石哲之(2) 本当にトラストレスの意味を理解してます?

 金融の世界の専門家と仮想通貨界の大御所。立場の違いが考え方の相違を生んでいるようにも見えますが、果たして、大石さんの主張を受けて、広瀬さんはどう反応する…?(ザイFX!編集部)

広瀬隆雄氏プロフィール

■「第三者の仲介者」不要だが、縁の下には「マイナー」がいる

 大石氏は「トラストレス」の技術的な意味として「第三者の仲介が不要である」と言いました。その点には、異存はありません。

 ここで、「第三者の仲介者」は、トラステッド・サードパーティーを指します。たとえば、JPモルガン・チェースのような金融機関が、トラステッド・サードパーティーの例だと言えるでしょう。

 なるほど、ビットコインには、「第三者の仲介者」が必要ないけれど、しかし、それに代わって、大変な労力をかけて仮想通貨取引の純正さをチェックしている「縁の下の力持ち」が実は存在します。それが「マイナー」と呼ばれる人たちです。

 マイナーという言葉は、マイニング(mining)をする人という意味。元々は「鉱夫」という意味の英語です。その言葉のイメージどおり、これは重労働です。ただ、人間がそれをやっているのではなくて、コンピュータが途方もない電気代をムダに使いながら、取引の純正さのチェック作業をしているのです。

 だから、「ビットコインは効率的だ」という主張は眉唾モノです。むしろ我々の目の届きにくいところに、大きなムダがあると言った方が正確でしょう。

 それが見えていないから、まるで魔法のように第三者の介在なしにビットコインがやりとりできているような錯覚に陥るのです。

■現状、「交換の手段」としてのビットコインは絶望的

 たしかに現在の金融システムが、もし、仮想通貨に置き換わったとすると、JPモルガン・チェースのような金融機関の仕事の少なからぬ部分は不必要になります。

 しかし、マイニング作業という途方もなく非効率な、新しい負荷を背負い込む点は、忘れてはならないと思います。実際、ビットコインは、このマイニング作業のために処理速度がお話にならないくらい遅いです。

 商店やレストランで支払いをする時、ビットコインによる支払いを受け付けてくれないお店がほとんどである理由は、それが日々のビジネスで使いものにならないほど遅いからに他なりません。

東京都心部周辺でビットコインが使える店舗を示した地図
東京都心部周辺でビットコイン

(出所:CoinMap)

 通貨には「交換の手段」と「価値の保存」という特徴がありますが、このうち「交換の手段」、すなわち商店やレストランで、どこでも支払いができるという機能に関しては、現時点ではビットコインは絶望的です。

 すると、ビットコインの残された取り柄は、「価値の保存」だけになってしまいます。

 「価値の保存」とは、たとえば金の延べ棒を金庫に退蔵するような行為を指しますが、ビットコインも、そういう「使わずに、とっておく」利用方法しかないのが現状です。

■法定通貨と交換できる前提があるから価値を維持できる

 ビットコインで容易に買い物ができないということが何を意味するか? というと、それは、ビットコインの価値を確認する方法は、「円やドルなどの法定通貨と、いつでも交換に応じてもらえる」ということしかないということを表します。

 大石氏は、「特定の機関や国家に依存するのではなく、人々の力によって支えられるトラストレス性」がビットコインの価値だと主張されていますが、現実には法定通貨との交換においてのみ、ビットコインの価値が表現できるという点で、大石氏の議論は堂々巡りしています。

【参考記事】
【仮想通貨激論!】広瀬隆雄vs大石哲之(2) 本当にトラストレスの意味を理解してます?

 仮想通貨ファンは、あたかもビットコインが既存の社会システムに対し、超然とした存在であるかのように主張しますが、その価値は、円や米ドルなどの法定通貨といつでも交換できるという大前提があってのみ維持できます。

 だからこそ、各国の政府や監督当局が、ビットコインについてどう感じているか? そして、今後、どういう規制に乗り出してくるか? ということを注意深く観察する必要があるのです。

(編集担当:ザイFX!編集部・井口稔&向井友代)


 広瀬隆雄さんと大石哲之さんが対論する本シリーズ企画は多くのアクセスをいただいておりますが、大石さんから「本企画を終了させていただきたい」との連絡がありました。

 これを受けて、残念ながら、本企画は今回でいったん打ち止めとさせていただきます。

 これに代わる新企画をやろうか、どうしようか、目下、検討中です(ザイFX!編集部)。

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