■中東問題に深刻な影響を与えるリスクも…
しかし、この問題は長期化しそうです。
米大使館がエルサレムに移転されることは、「エルサレム大使館法」として、米議会が成立させています。
成立されたのは、20年以上もさかのぼる1995年。この成立には期限がついており、1999年5月31日までに実施することになっていました。
しかし、この米大使館のエルサレムへの移転は、中東問題を悪化させることが明白なので、大統領権限で半年ごとに延期してきました。
ところが、今回、トランプ大統領は延期せず、エルサレムへの大使館移転を決定。
これは、いかにもトランプ的。
20年前の「エルサレム大使館法」は、圧倒的多数で米議会で決定されています。それを廃案にするわけでもなく、長期に渡って延期してきただけの法案。別に延期したからといって、中東問題にプラスになっているわけでもありません。
そこで、トランプ大統領は、公約でもあるこの法案を実施することを決定。この決定の裏には、トランプ大統領の娘婿であるクシュナー(ユダヤ教徒)氏の存在が影響しているとウワサされています。
ただ、彼の今回の判断は大間違いで、マーケット参加者が危惧しているように中東問題に深刻な影響を与えるリスクは少なくありません。かといって、ただ半年ごとに延長し続ければいいのかと言われれば、それがいいとも言えません。
このエルサレム移転の話題は、これからマーケットに、徐々に影響を及ぼすのでしょう。
トランプ大統領が公約を実行したことで「代償を払わせられるリスク」が高まったことから、この報道は、米ドル/円と日経平均にとっては、ネガティブ材料になりそうです。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
■銅急落で中国経済減速、豪ドル/円下落を連想
今週(12月4日~)のマーケットのもうひとつの話題は、銅の急落。
一時4.7%もの急落を演じています。
(出所:Bloomberg)
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の銅先物3月限は前日比4.7%安の2.946ドルで終了。
約3年ぶりの大幅下落となった。中国の需要鈍化の見通しやドル高、在庫増が響いて1ポンド=3ドルを割り込んで取引を終えた。
出所:Bloomberg
銅が急落すると、中国経済の減速、ひいてはグローバルの株価調整、そして、豪ドル/円の下落という連想が働きます。
今年(2017年)の豪ドル/円は、9月に一時、90円台まで反発したのですが、本邦個人投資家から、まとまった豪ドル/円の売りが持ち込まれたこともあり、その後、じり安の展開。
(出所:Bloomberg)
前述のように、米国大使館のエルサレム移転問題のような地政学的リスクや、銅の急落など、マーケットに不安定要因が少しずつ増えてくると、株の代替でもある豪ドル/円は、あっさり値を崩す傾向があります。
11月初旬にトップアウトして上値が重くなってきている米ドル/円に加え、銅の急落もあり、じり安の展開になっている豪ドル/円の行方に注目です。
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