■黒沼教授:GMOクリック証券は未カバーポジションを最小化していないように思えたが、だとしたら、どのような判断基準で未カバーポジションの処理をしているのか?
黒沼メンバー そしてGMOクリック証券さんにお伺いしたいのですが、11ページのところで社内規程によって未カバーポジションの監視体制を徹底している。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、11ページの「店頭FX取引の未カバーポジションの管理態勢」を掲載
黒沼メンバー これは、自己資本規制比率を保てる範囲で設定するということですが、この未カバーポジションは最小化するのではなくて、それ以外の基準で上限額を設定するというやり方をとられている、かなと思ったのですが。
もしそうだとしたら、その場合の判断基準を、どういうところに求めておられるのかをお聞きしたい、合理性をいただければと思います。とりあえず以上です。
池尾座長 では、お願いできますか。
■金先協会:顧客が逆指値を入れておけば、業者が強制ロスカットをする前に損切りが行われるだけの話。金先協会が定めるロスカット水準を下回ってよいという例外を認めているわけではない
山﨑オブザーバー 黒沼先生、ありがとうございます。ご質問にお答えさせていただきます。
例外というのは、もちろん私どもの業界の最低水準ということですので、その基準を満たしているのが例外、先ほどもいろいろと申し上げましたが、価格配信の約定の仕方でいろいろとやり方が業者ごとに異なっているというのが、1つ大きな特徴です。
そのために私どもが最低基準を提示させていただいて、その基準をクリアするようなやり方は別に構わない。
ここで例として出していますが、逆指値がございます。逆指値というのはあらかじめ投資家の方々が、この基準ではロスカットをしてくれよ、という約定を業者との間で注文をするということです。
業者は強制ロスカットに代わって、お客さまの意思で置かれた指値注文。要するに「ロスカットをしてくれ」という指値注文でロスカットをしていく。その水準が最低基準を下回らなければ、例外としてそれを認めていくということです。
もう1つはロスカットの監視間隔が1分以内と書いたのですが、ほぼリアルタイムというような状況が技術の進歩で、ある業者さんが、仮にいらっしゃったという場合は、そうなった場合はほぼリアルタイムですので、数字以上に証拠金の額を把握できますので、そのへんのところは【聞き取り不明】も構わないといいますか、この水準をむしろ守ると後退してしまいますので、そこのところは例外として認めても構わない、という趣旨がこちらです。
それの規則ができたときは、現状では業者さんの管理体制の能力がだいぶ変わりまして、先ほど申し上げました証拠金の水準を100%でやっている業者さんが半数以上ということでお話ししましたが、たぶんその部分で管理精度がかなり高まっているだろうと思っています。先生へのお答えとしてよろしいでしょうか。
黒沼メンバー そうすると、最低基準を下回っている業者はいないということですか。
山﨑オブザーバー はい、私どもはそのように理解しております。
池尾座長 鬼頭さん、お願いします。
■GMOクリック証券:未カバーポジションリスクをできるだけ最小化しているという発想は他社と変わらない
鬼頭弘泰オブザーバー(GMOクリック証券 代表取締役社長。以下、「鬼頭オブザーバー」と記載) まず自己資本規制比率が200%を割らない値の範囲内の考え方ですけれども、自己資本自体または毎月発生する経費の状況によって、未カバーポジション以外の要素が毎月変動しているので、そこを勘案した上で、この未カバーポジションに対してどれだけのポジション割合が設定できるか、といったところを決定しているので、基本的には、要は未カバーポジションリスクには対応するというと、そこの部分だけ検討しているということです。
黒沼メンバー なかなか難しくて分からないところもあるんですけれども。簡単に印象を、【聞き取り不明】で申し訳ないのですけれども、4社のご説明を聞いていて、SBI証券とセントラル短資FXのご説明では、自分たちでは未カバーポジションリスクをできるだけ最小化しているというご説明でしたが、それと違う政策もとっておられるのかなというふうに思ったものですから。
鬼頭オブザーバー いいえ、発想はまったく一緒です。
黒沼メンバー 分かりました。ありがとうございます。
池尾座長 その他ございませんか。では弥永さんから。
■弥永教授:複数のFX会社が特定のプライムブローカーへ取引を集中させ、ポジションが大きくなってしまうことのリスクをどう考慮しているのか?
弥永真生メンバー(筑波大学ビジネスサイエンス系 教授。以下、「弥永メンバー」と記載) ありがとうございます。非常に興味深いご教授をいただきました。いくつか質問させていただきたいと思います。
1つは、業者さん2社さんにお聞きしたいのですけれども。GMOクリック証券さんの3ページを拝見すると、プライムブローカー(※)を採用されています。
(※「プライムブローカー」は略すと「PB」。詳しくは下記、【参考記事】を参照)
【参考記事】
●有識者検討会に新メンバー参加もレバレッジ規制強化の声はなく…!?
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、3ページの「カバー取引(プライムブローカーを利用した決済リスクの軽減」を掲載
弥永メンバー このプライムブローカーの方というと、要するに非常に大きなポジションが形成されることになると、もちろんGMOクリック証券さん自体は、それほど大きくなくても、他の業者さんがここに集中してしまう可能性は、どういうふうに考慮されるのかを教えていただきたいと思います。
■弥永教授:SBIリクイディティ・マーケットはプライムブローカーみたいなものは使っていないのか?
弥永メンバー SBI証券さんの資料5ページ、こちらのブローカーを利用しているということは書かれていない。こちらはそういう、このいったん、このLM(※1)……、この子会社さんがこの30社の中から適当に、適切なところをカバー取引として選んで、その先はこのG-SIFIs(※2)以外のところでも、その先はプライムブローカーみたいなものは使っていらっしゃらないのかを教えていただきたいということです。
(※1 編集部注:「LM」とはここではSBI証券の100%子会社である「SBIリクイディティ・マーケット」のこと)
(※2 編集部注:「G-SIFIs」とはグローバルな金融システム上、重要となる金融機関のこと)
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料4「SBI証券資料」より、5ページの「FX事業のビジネススキーム_リスク管理(2)(3)」を掲載
■弥永教授:小規模な業者はビジネスモデルから考えて、未カバーポジションリスクはないと考えられるのか?
弥永メンバー あと金先協のほうについて、非常に幼稚な質問で申し訳ないのですが、2つほどお聞きしたいと思います。
35ページのところで、このストレステストが確実に行われているかどうかという点については、現時点ではこちらは業者さんが一応やったストレステストの結果について対応はしているけれども、まだ監査とかで確認しているという、そういう状態ではないということなのか。
それともすでに監査等でこういうストレステストを、会員企業さんがされているのかというところまでチェックされているのかという点をお伺いしたい。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料1「金融先物取引業協会資料」より、35ページの「ストレステスト⑥」を掲載
弥永メンバー 36ページのところでいうと、ここで挙げられている対象会員は非常に大きな企業さんなので、ほぼカバーされていると思いますが、対象会員が業者さんにおいて、未カバーポジションリスクでどうなっていると、協会として理解されているのか。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料1「金融先物取引業協会資料」より、36ページの「ストレステスト⑦」を掲載
弥永メンバー モデルⅤ、Ⅵみたいなものを小規模な業者さんは選ばれていると、最初ご紹介があったので、そういう小さいところは、あまり未カバーポジションリスクはない。そういう理解でいいのか。このあたりを教えていただきたいと思います。
池尾座長 では、ご質問いただいた順にご説明を。まず鬼頭さんから順に。
■GMOクリック証券:プライムブローカーは特に信頼性が高い複数の金融機関に限定することでリスクを軽減している
鬼頭オブザーバー まずプライムブローカーの効果ですけれども、これはカウンターパーティー各社と取引をしています。そのカウンターパーティー自体のリスクを軽減することを狙っております。
今度、逆にプライムブローカーに集中するというリスクについては、もともとこのプライムブローカーについてはG-SIFIs、先ほどちょっとご説明させていただきましたけれども、もともと安全性が高いというか、厳しい基準にのっとって運用されているという金融機関に限定することで、リスクを極小化しています。
かつ、これはプライムブローカー1社ですとリスクが高まりますので、プライムブローカーを複数契約することで、プライムブローカーのリスクも軽減しているということになって、やっています。以上です。
池尾座長 では小川さん、お願いします。
■SBI証券:SBI証券のカバー先であるSBIリクイディティ・マーケットは現在、プライムブローカー2社と契約している
小川裕之オブザーバー(SBI証券 取締役経営企画部長。以下、「小川代理オブザーバー」と記載) 資料5ページ目に…。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料4「SBI証券資料」より、5ページの「FX事業のビジネススキーム_リスク管理(2)(3)」を掲載
小川代理オブザーバー 説明不足で恐縮ですが、弊社としましては、リクイディティ・マーケット社ですが、その先につきましては現在プライムブローカー2社と契約をしていまして、その下にスポークバンクがつながっていくという形になっています。
ちなみにG-SIFIsとの実際、取引ですが、約9割がG-SIFIsとの取引となっています。
また、銀行のリスクというところでは、CDS(※)ですね。クレジット・デフォルト・スワップの確認をLM社のディーラーと行っていまして、過去にもCDSが高まった銀行のポジションを減らすなどの調整を、随時行っております。以上です。
(※編集部注:「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」とは、当該企業の破綻に備える保険のような金融派生商品)
池尾座長 それでは山﨑さん、お願いします。
弥永先生、ありがとうございました。まず…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)