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西原宏一_メルマガ取材記事
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有識者検討会に新たな参加者も
レバレッジ規制強化の声はなく…!?

2018年04月02日(月)16:32公開 (2018年04月02日(月)16:32更新)
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■第3回は新しい参加者を加えて開催!

3月29日(木)、「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」の第3回会合が開催された。

 この有識者検討会では大学教授や弁護士などの「有識者」によって、店頭FX取引に対するレバレッジ規制について、改めて議論が行なわれている。

 前回、第2回検討会が開催されたのが2週間ほど前の3月12日(月)だったので、およそ2週間ぶりに開催されたわけだ。

 第1回から第2回が1カ月空いたことを考えると、開催されるペースが早くなった。

【参考記事】
日経は新レバレッジ規制の結論を知ってる!? 「第1回有識者検討会」で話されたこととは?
有識者から新レバレッジ規制必要なしとの声も!?春に規制ありとした日経新聞は誤報?

 第3回会合への参加者は以下のとおり。

第3回「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」参加者

 
池尾和人氏 慶應義塾大学経済学部 教授



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上柳敏郎氏 東京駿河台法律事務所 弁護士
勝尾裕子氏 学習院大学経済学部 教授
黒沼悦郎氏 早稲田大学法学学術院 教授
坂勇一郎氏 東京合同法律事務所 弁護士
永沢裕美子氏 Foster Forum 
良質な金融商品を育てる会 事務局長
松井秀征氏 立教大学法学部法学科 教授



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星野昭氏 三菱東京UFJ銀行 金融市場部長
伊藤渡氏 東京金融取引所 代表取締役専務
山崎哲夫氏 金融先物取引業協会 事務局長
鬼頭弘泰氏 GMOクリック証券 代表取締役社長
高村正人氏 SBI証券 代表取締役社長
松田邦夫氏 セントラル短資FX 代表取締役社長
緒方健太郎氏 財務省国際局為替市場課長
重本浩司氏 日本銀行金融市場局為替課長
     


 
岩壷健太郎氏 神戸大学大学院経済学研究科 教授
荒井哲朗氏 あおい法律事務所 弁護士

 今回は参考人として、神戸大学大学院の岩壷健太郎教授と弁護士の荒井哲朗氏が参加した。

■各国の規制動向を事務局が説明したのだが…

 会合の様子を簡単に振り返っておこう。前回からの続きで、メンバーからの質問に対し、事務局(金融庁)、オブザーバーであるFX会社などが回答する形で進められた。

 はじめに事務局より、店頭FX取引に関する各国の規制動向についての説明があった。

 これは前回、座長の池尾和人氏が事務局に要望していたものだ。

 事務局の説明資料には、米国、欧州、英国、韓国の店頭FXの規制動向が掲載され、資本要件、レバレッジ規制、ストレステストといった項目が記載されていた。

 以下は事務局の説明資料にあった、各国の店頭FXのレバレッジ規制の状況を簡単に表にまとめたものだ。

レバレッジ規制の状況

(出所:金融庁の資料よりザイFX!編集部が作成)

 現在、日本のFXのレバレッジが最大25倍ということはみなさん、ご存じのとおり。それと比べ、米国、欧州、英国のレバレッジ規制については、一番厳しいケースで20倍となっており、日本よりやや厳しい規制になっている。ただ、米国や英国では条件によって50倍までOKとなっており、日本よりだいぶ緩い数字になっている部分もあることがわかる。

 一方、韓国については、一律10倍となっている。これは、日経新聞などでも報じられている、日本の店頭FXのレバレッジ規制が強化された場合に適用されると言われている上限と同じ数字だ。

 ちなみに、この事務局の説明、米国、欧州、英国、韓国の順番で行われたのだが、最後に店頭FXのレバレッジを一律10倍にしている韓国を持ってきている

 レバレッジ10倍の韓国の説明を最後にするあたり、何かワケでもあるのかと思ってしまう…。これは記者の勘ぐりすぎだろうか。

金融庁の説明資料

(出所:金融庁の資料より抜粋)

■金先協会から過去2回のストレステストについて説明あり

 続いて、一般社団法人・金融先物取引業協会(金先協会)の担当者から、前回メンバーから質問があがっていた店頭FX会社に対するストレステストについて、さらに詳しい説明があった。

 ストレステストとは、その企業が健全で安定した経営状態であるかどうかについて、想定されるさまざまなリスクを考慮してシミュレーションするというもの。

 ストレステストは、2016年1月と2017年3月の過去2回、FX会社に対して実施されているが、前回の検討会ではストレステストがどういった経緯で実施されたのかについて説明があった。

 今回はさらに踏み込んで、「G-SIFIs」の破綻リスクを考慮したストレステストの結果が示され、それについての説明があった。

「G-SIFIs」とは、グローバルな金融システム上、重要となる金融機関のことで、日本だと、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループが認定されている。

 今回は、世界的な金融機関の破綻を考慮した場合と考慮しなかった場合、それぞれのケースでストレステストを実施したとき、どういったリスクが生じたのかが示され、それについての説明があったというわけだ。

■FX会社はプライムブローカー、保証状について詳しく説明

 そして、GMOクリック証券セントラル短資FXからは、自己資本に絡んだ質問についての回答として、プライムブローカー(PB)とレター・オブ・ギャランティー(LG、保証状)についての説明があった

 顧客の注文を受けた店頭FX会社は、顧客の売りと顧客の買いを相殺して、はみ出た部分について、カバー取引をインターバンク市場で行うが、このカバー先金融機関はたくさんあることが多い。たとえば、GMOクリック証券には19ものカバー先金融機関がある。

 このようなたくさんのカバー先金融機関との取引を付け替えて、大きな金融機関との取引にまとめ、大きな金融機関で資金決済を行うやり方があるのだが、この大きな金融機関がプライムブローカー(PB)だ。

 そして、現状ではプライムブローカーは「G-SIFIs」に限られているとのこと。「G-SIFIs」は世界的に大きな金融機関であり、厳しい規制が課されていて、滅多なことでは破綻などしないと考えられる。

 たくさんあるFX会社のカバー先金融機関には相対的に規模の小さなものも含まれる。FX会社にはカバー先金融機関が破綻するという決済リスクがあるわけだが、プライムブローカーを利用すれば、そのリスクが低減できるわけだ。

 今回、GMOクリック証券セントラル短資FXからはこのようなことに関する説明が行われた。

 どうしても、この有識者検討会は「レバレッジ規制」に関するものと考えてしまうが、その正式名称を今一度確認すると、「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」というものになっている。つまり、これは「決済リスクへの対応」を検討する場であり、プライムブローカーの件はまさにその1つということなのだ。

 ちなみに、レター・オブ・ギャランティー(LG、保証状)とは、銀行がFX会社から手数料をもらって発行するもの。FX会社はプライムブローカーに現金を預託する代わりに、このレター・オブ・ギャランティーを差し入れることができる。

PB・LGの利用と自己資本を巡る論点

(出所:金融庁に提出したGMOクリック証券セントラル短資FXの資料より抜粋)

■プライムブローカーのメリットとは?

 そして、今回は、オブザーバーを務める三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)の金融市場部長・星野昭氏からも店頭FX取引の東京為替市場における影響について説明があったのだが、その中で、プライムブローカーの説明に時間を割いていた。

 星野氏は、カバー先金融機関との直接取引と比較して、FX会社がプライムブローカーを使うメリットとしては、許容された与信枠の範囲内で、カバー先金融機関、10~20行と取引が可能なことを挙げていた。また、信用力の高いプライムブローカーに取引を集約することによる決済リスクの低減、さらにはオペレーションリスクの効率化が期待できるそうだ。

<FX会社がプライムブローカーを使うメリット>

●プライムブローカーから許容された与信枠の範囲内で、複数のカバー先金融機関(10~20行)と取引が可能

●信用力の高いプライムブローカーに取引を集約することによる決済リスクの低減、決済関連事務負荷の低下(オペレーション効率化)

●プライムブローカーでポジション・ネッティングが行われることによる現金預金の最小化、担保管理負荷の低下

■またしても、レバレッジ規制強化反対寄りの意見が…

 また説明に長い時間を使ったのが、参考人として参加した神戸大学大学院・岩壷健太郎教授だ。

 これまで開催された2回の検討会では、レバレッジ規制はいらないのでは……なんて声が出るほど、なんだかフワフワした空気になりかけていたので、ついにゴリゴリのレバレッジ規制強化推進派の登場か……なんて思った記者。

【参考記事】
日経は新レバレッジ規制の結論を知ってる!? 「第1回有識者検討会」で話されたこととは?
有識者から新レバレッジ規制必要なしとの声も!?春に規制ありとした日経新聞は誤報?

 ところが、フタを開けてみると、岩壷教授からは「レバレッジ規制は投資の自由、ヘッジや資産形成の需要を制約することになりかねない」「レバレッジ規制が強化されると金融商品としての価値が大きく低下する」というように、レバレッジ規制強化について、反対寄りの発言が多く聞かれた

 さらに、レバレッジ規制強化によって我慢できなくなった投資家は、日本の店頭FXから海外FX、仮想通貨取引へと取引の場を移す可能性が高いとし、規制の手が届かない市場などに国内投資家を向かわせることは投資家保護の観点からみても問題だと指摘していた。

投資行動への影響

(出所:金融庁に提出された神戸大学大学院・岩壷健太郎教授の資料より抜粋)

 もうひとり、今回の検討会に参加したのが、弁護士の荒井哲朗氏。

 荒井氏は以下の3点について説明した。

(1)FX取引の不透明性

(2)不透明性から生ずる不健全性

(3)決済リスクとレバレッジ規制

 3つの項目を見ると、レバレッジ規制強化に賛成か?とも思える。しかし、こちらについてはレバレッジ規制を強化すべきか…といった点にはあまり触れられず、荒井氏が担当した過去の事案をもとにFX会社とのトラブルにより訴訟になったケースなどの説明が中心だった。

 今回の会合では、前回に続き、店頭FX会社へのヒアリングが行われた。また、新たに参加したメンバーによる解説、説明などもあったが、レバレッジ規制を強化して10倍へ引き下げるべきといった積極的な発言はまったくなかった…。

 さらに複数のメンバーからは、決済リスクもそうだが、FXの公正性について疑問があるので議論する時間があってもいい……という意見が出るなど、今後の方向性がどうなるのか、不透明な部分も出始めている。

 ちょっと先行きがわからなくなってきた議論の行方、ザイFX!では次回の会合についても情報が入り次第、お伝えしたい。

(ザイFX!編集部・庄司正高&ザイFX!編集長・井口稔)


 本記事でお伝えした「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第3回)に続き、2018年4月13日(金)に行われた「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第4回)の模様については、以下の【参考記事】をご覧ください。

【参考記事】
風雲急! 店頭FX原則禁止論まで飛び出した第4回検討会。レバ規制強化派が優位に!?

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