(「【全文書き起こし1/4】 店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第2回)」からつづく)
前回に続き、金融庁にて2018年3月12日に行われた「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第2回)」の全文書き起こしをお届けします。
この有識者検討会(第2回)の参加者は以下のとおりです。
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池尾和人氏 | 慶應義塾大学経済学部 教授 | ||
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上柳敏郎氏 | 東京駿河台法律事務所 弁護士 | ||
勝尾裕子氏 | 学習院大学経済学部 教授 | |||
黒沼悦郎氏 | 早稲田大学法学学術院 教授 | |||
坂勇一郎氏 | 東京合同法律事務所 弁護士 | |||
永沢裕美子氏 | Foster Forum 良質な金融商品を育てる会 事務局長 ※少し遅れて参加 |
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松井秀征氏 | 立教大学法学部法学科 教授 | |||
弥永真生氏 | 筑波大学ビジネスサイエンス系 教授 | |||
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星野昭氏 | 三菱東京UFJ銀行 金融市場部長 | ||
伊藤渡氏 | 東京金融取引所 代表取締役専務 | |||
山崎哲夫氏 | 金融先物取引業協会 事務局長 | |||
鬼頭弘泰氏 | GMOクリック証券 代表取締役社長 | |||
小川裕之氏 | SBI証券 取締役経営企画部長 ※本来は高村正人社長がオブザーバーだが、今回は欠席。小川氏が代理として出席 |
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松田邦夫氏 | セントラル短資FX 代表取締役社長 | |||
緒方健太郎氏 | 財務省国際局為替市場課長 | |||
重本浩司氏 | 日本銀行金融市場局為替課長 |
※金融庁配布の資料を基本としつつ、ザイFX!編集部が一部実情にあわせて、追記、変更を行っています。
※メンバー、オブザーバーの所属先は、第2回「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」時のもの。
今回の書き起こしは全4回のうちの2回目であり、店頭FX会社、GMOクリック証券、SBI証券、セントラル短資FX、くりっく365から出席したオブザーバーが説明を行っている部分を対象としています。
書き起こしについては細心の注意を払っておりますが、録音した音声が必ずしも鮮明ではない部分もあり、書き起こした文に誤りのある可能性もないとは言えません。その点はあらかじめ、お断りさせていただきます。そして、話し手の言い回しを厳密にそのまま再現しているとは限らず、意味が違ってしまわない範囲で、どうしても冗長となりがちな話し言葉を簡潔な表現にしている部分もあります。
文中に挿入した小見出しはザイFX!編集部で作成したものです。
有識者検討会は配布された資料に基づいて行われています。文中にはその資料を適宜挿入しました。資料は金融庁の以下のウェブページでも見ることができます。
【参考ページ】
●店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(金融庁公式サイト)
また、有識者検討会(第2回)の議事録も上記、金融庁のウェブページで公開されています。にもかかわらず、ザイFX!がこの全文書き起こしを公開している経緯については、前回記事をご参照ください。
【参考記事】
●【全文書き起こし1/4】 店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会(第2回)
なお、著作権法第三十二条では、国などが一般に周知させることを目的として作成した著作物は、説明の材料として新聞などに転載してよいとされています。
では、全文書き起こしの続きをどうぞ(ザイFX!編集部)。
池尾和人座長(慶応大学経済学部 教授。以下、「池尾座長」と記載) それでは引き続きオブザーバーから、配布資料につきましてご説明いただきます。まずはセントラル短資FXの松田オブザーバーから、資料2のご説明をお願いします。
■店頭FX業者:外為市場は24時間、無数の主体が取引している巨大で奥行きの深い市場。FX業者の破綻でシステミックリスクが起こるのか想像しがたい
松田邦夫オブザーバー(セントラル短資FX 代表取締役社長。以下、「松田オブザーバー」と記載) 資料2につきまして、当業界の本件に関する基本認識をお答えします。これは大手業者すべてを含む店頭業者約20社の意向を、今回の検討会に向けて集約したものです。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料2「GMOクリック証券・SBI証券・セントラル短資FX 資料」より、1ページの「議論にあたっての業界認識」を掲載
松田オブザーバー 第1に、先ほどの説明のとおり、店頭業者はこれまで協会を通じて当局とも密接に連携しながら、決済リスクを含むさまざまなリスクを顕現化させないための相当高度な手法を整備してきました。
第2に、とかく店頭FX市場の大きさが強調されますけれども、それと業者が負っているリスクの規模とは同義ではありません。リスクの大きさはさまざまな取引をネットアウトして、圧縮されたポジションの大きさと基本的に相関します。
しかもこれイコールリスクですらなく、リスクにさらされる対象はこれをわずかに下回ります。市場が拡大しましたのは、むしろルールの整備やリスク管理の向上、サービスの改善に関係者が努めた結果、利便性や安心感が高まったことで、投資家に好まれたからという面も大きいと思います。
第3に、多彩な通貨を機動的かつ低いコストで投資できる手段、また、為替リスクをヘッジする手段としてのFX取引の効用は広く認知されています。
第4に、前回検討会で問題提起がありました社会的・経済的効果としましては、外国為替市場に高い流動性を提供することで、東京国際金融市場の発展に寄与していると考えています。
第5に、経済の実態を反映しない形で相場が一方的に振れる、いわゆるオーバーシュートに歯止めをかけて市場を安定させることになると申し上げています。
最後に、業界から本席の皆さまへのお願いでございます。全体資料にもありましたFMI原則(※)の中には、個別の金融業者が考慮すべき点ももちろん含まれています。しかし本来は清算機関や取引所といった、多数の業者の取引を1カ所にまとめて取り扱うインフラを担う主体を対象にしたものだと認識しています。
(※編集部注:「FMI原則」とは日本語では「金融市場インフラのための原則」と呼ばれるもの。支払・決済システム委員会(CPSS)と証券監督者国際機構(IOSCO)が制定した)
また、システミックリスクにつきまして、預金取扱金融機関の破綻なり支払い不能が、いわば金詰りを起こして、連鎖的に決済が滞ってしまうといった古典的なパターンだけを、そう呼ぶべきと申し上げるつもりはありません。
しかし、外為市場のような24時間、無数の主体が取引している巨大で奥行きの深い市場で、仮に1つあるいは複数の店頭FX業者が破綻したときに、システミックと呼ぶべきリスクの拡散が生じる事態は、正直なところ当業界や外為関係者にはなかなか想像し難いところです。
僭越ではございますけれども、どんなリスクを懸念するのか、いまそのために何が不足しているのか、いないのか。そういった見極めを出発点としていただき、他の業界や、ある程度性格を一にする金融商品等に対する規制とバランスを含む形での議論をお願いしたいと思います。以上です。
池尾座長 どうもありがとうございました。
それでは続きましてGMOクリック証券、鬼頭オブザーバーよりご説明をお願いいたします。
■GMOクリック証券:カバー先は破綻リスクが極めて低いG-SIFIs(グローバルな金融システム上、重要となる金融機関)に限定している
鬼頭弘泰オブザーバー(GMOクリック証券 代表取締役社長。以下、「鬼頭オブザーバー」と記載) GMOクリック証券の鬼頭でございます。今回はご説明の機会をいただき、ありがとうございます。資料3に沿ってご説明をいたしますが、内容が多岐にわたりますので、的を絞ってご説明させていただきます。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、「有識者検討会・業者説明資料」を掲載
鬼頭オブザーバー なお、当社は業界最大手であり、顧客取引が非常に活発である点、事業のなかで未カバーポジションリスクを負っていて、店頭、取引所の双方で大きなシェアを頂戴してきたのが特色でございます。
前回挙がってきた3つのご質問に関し、当社の対応ということをご説明します。未収金リスクの対応について6ページをご覧ください。なお、7ページ、8ページに参考資料を添付しています。
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、6ページの「当社の決済リスクへの対応状況」を掲載
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、7ページの「顧客向けリスク管理策の実例」を掲載
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、8ページの「顧客向けリスク管理策の実例」を掲載
鬼頭オブザーバー まず未収金抑制につながる自動ロスカットにつきましては、2016年に店頭FXシステムを全面リニューアルし、高速化するなどシステム性能の改善に注力をしています。
建玉条件の引き下げにつきましては、昨年末にくりっく365で新興国通貨ペアの建玉条件を引き下げました。
また、ブレグジットの際には、ポンドの価格が大幅に変動することが想定されたため、店頭、取引所とともにポンド系の通貨ペアで一時的に建玉上限の引き下げを実施いたしました。
証拠金率の引き上げにつきましては、店頭の法人取引において、法令上の証拠金率が1%を下回る場合は、一律で1%を適用しております。
未収金リスクについては店頭、取引所の共通課題のため、対策も店頭、取引所、双方のものを取り上げています。
9ページ、次に当社のカバー先破綻リスクの対応策をご説明します。まずカバー取引における決済先の対象は、他の金融機関よりも厳しい規制が適用されるG-SIFIs(※)に限定しております。
(※編集部注:「G-SIFIs」とはグローバルな金融システム上、重要となる金融機関のこと)
※「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第2回)の資料3「GMOクリック証券資料」より、9ページの「当社の決済リスクへの対応状況」を掲載
鬼頭オブザーバー G-SIFIsであれば、破綻リスクが極めて低いものと考えています。カバー先の格付けをモニターし、投資適格を満たさなくなった場合など、他のPB(※)に付け替えるかを判断することとしています。
(※編集部注:「PB」とはプライムブローカーのこと。詳しくは下記、【参考記事】を参照)
【参考記事】
●有識者検討会に新メンバー参加もレバレッジ規制強化の声はなく…!?)
またPBの破綻時に、現金担保が返還されないリスクへの対応として、LG(※)の活用によりPBへの現金預託を最小化するよう努めています。
(※編集部注:「LG」とはレター・オブ・ギャランティー(保証状)のこと。詳しくは下記、【参考記事】を参照)
【参考記事】
●有識者検討会に新メンバー参加もレバレッジ規制強化の声はなく…!?)
続きまして11ページ、未カバーポジションリスクの
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