■米中貿易戦争は長い米中対立の始まりにすぎない
注意していただきたいのは、米中貿易戦争はあくまで米中対立の始まりにすぎないことだ。
中国の勃興や高度経済成長、さらに習近平氏の長期政権が想定される中、結果的に中国に全体主義のリーダーとして、民主主義のリーダーである米国にとって代わって覇権を握る野心を抱かせ、また、中国はすでに自ら世界の覇権を握る長期戦略を力強く推進してきた。
ゆえに米中対立の、スケールの大きい、また、長期に渡る対立の構図が、これからより鮮明になっていくだろう。長期的にはこれが国際金融市場に大きな影を落とし、その行方によって国際金融資本の再評価や勢力再編もあり得るから、このことが市場に激変をもたらすに違いない。
■短期スパンでは、中国以外の金融市場に大きな影響はない?
一方、短期スパンで見る限り、中国以外の金融市場に足元、大きな影響があるかと聞かれると、そうではない気がする。
確かに米国株も日本株も調整してきたが、暴落した上海株につれてベアトレンドへ突入していく気配は感じない。何より証拠となるのは、あの2015年の人民元切り下げがもたらした世界金融市場の混乱が、今回の人民元安では見られていないことだ。
が、今回の人民元安は、値幅にしてもスピードにしても2015年「人民元ショック」時を上回っているから、マーケットの反応を見る限り、かなり冷静だと思う。
その原因について、いろいろな解釈が行われているが、問題の核心は以下の2つの要素にまとめられるのではないかと思う。
まず、米中対立はスケールの大きい長期戦だと市場は悟っているから、逆に冷静にその推移を見守り、静かに値段に織り込んでいく可能性が大きいこと。
次に、米経済成長が堅調で、利上げサイクルも当面維持されるなら、悲観的な見方が大きくても市場は動揺しにくく、上海株や人民元の動向につられてパニック的な反応をしなくなったことだ。
だから、いろいろ見方はわかれるが、米ドル全面高が継続される公算が一番大きいのではないかと思う。
たびたび強調してきたように、ドルインデックスで見る限り、6月14日(木)の大陽線が示した強気リバーサルやフェイクセットアップのサインが否定されない限り、米ドル高の終焉や米ドル高基調の修正云々は時期尚早、また根拠が乏しいかもしれない。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円は118円をめざす!?
米ドル/円に関しては、今年(2018年)は米中間選挙年なので、経験上、よく動く年になりやすい。1980年以降の中間選挙年の年間変動率は、平均21円程度、また15円以上の値幅が多数だったことから考えて、米ドル高・円安が続くなら、118円程度の上値ターゲットが視野に入ってこよう。
(出所:IG証券)
では、なぜ円高ではなく、円安の予想をするかと聞かれると、答えはシンプルだ。人民元安や上海株暴落など、中国リスクにあまり反応していなかったので、円高より円安の確率が高い、ということに尽きる。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)