■EUへの20%自動車関税をツイッターで表明
週末(6月24日)に行なわれたトルコの大統領選、議会選ではエルドアン大統領が再任され、与党が過半数を制する見通しとなりました。
心配されていたトルコリラ/円も今日(6月25日)は上窓をあけて始まっています。
(出所:Bloomberg)
一方、ドイツからいろいろと不安を感じるニュースが聞こえていますね。ユーロが揺らいでいるのでしょうか。
ドイツでは移民政策を巡ってメルケル首相と、連立政権のパートナーであるキリスト教民主同盟の党首であるゼーホーファー内相の意見が対立。
イタリア、スペインの次はドイツでも政情の混乱が始まっています。
難民問題については6月28日(木)、29日(金)のEU(欧州連合)首脳会議で話し合われる予定です。それに先立ち、24日(日)にはEU緊急会議が開かれましたが、そこでは欧州全体での難民問題の合意は難しいとの話に…。
EU首脳会議でも合意がまとまらない場合、ゼーホーファー内相は、他の加盟国で審査を受けた難民をドイツが受け入れるのを拒否する命令を発動する意向とのこと。
今週(6月25日~)は、EUの難民問題をめぐる報道に要注意ですね。
また、2015年に発覚したフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正に絡んで、先週(6月18日~)はVW傘下のアウディのCEOが逮捕されました。
EUの自動車産業にとって、さらに大きいのはアメリカの通商政策。6月23日(土)の朝、トランプ米大統領は「Build them here!」(アメリカで生産しろ!)とツイートし、EUの自動車産業に20%の関税をかける方針をツイッターで表明しました。
補足しておくと現在、EUからアメリカへの自動車輸出の関税は2.5%。それに対してアメリカからEUへの関税は10%ですから、トランプのツイートに理がないわけではありません。
■月末、四半期末、半期末の特殊玉に要注意!
ただ、為替市場をみると、ユーロ/米ドルは1.15ドルの節目が固いですね。先週(6月18日~)も1.1509ドルできれいに反転しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
ユーロ/米ドルは基本的には下方向をみていますが、1.15ドルにはバリアオプションが設定されているようです。このバリアが決壊するか、オプションの期限が到来するかしないと下げるに下げられません。
ただ、今週(6月25日~)は月末であり四半期末。とくに欧米企業にとっては半期末にあたります。「月末、四半期末、半期末」と重なると企業の実需や機関投資家のリバランスの玉が出てくる可能性が高まります。方向性を決めつけないほうがいいでしょう。
特殊玉の影響でユーロが買われる可能性もある、ということですね。
また、IMM(国際通貨先物市場)のポジションをみると、春先には15万枚程度までふくれ上がっていたユーロ買いが先週(6月18日~)は3.6万枚まで急減しました。投機筋はユーロ買いの整理に動いているようです。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
利上げ時期の先送りなどファンダメンタルズ的な要因もあるのでしょうが、金利差も影響しているのかもしれません。
米独金利差が拡大しており、ユーロ/米ドルのロングだと金利の支払いがジワジワと効いてきます。
(出所:Bloomberg)
■強まるリスクオフ環境の中、ナスダックは史上最高値
同じくIMMでは先週(6月18日~)、円がロングからショートに転じています。
先々週(6月11日~)は5000枚程度の円ロングだったのが一転、先週(6月18日~)は3.5万枚の円ショートです。投機筋が日米金利差を手がかりとした円キャリートレードを始めているのでしょうか。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
武田薬品によるシャイアー買収にともなう円売りも出ているようなので、その影響もあるのでしょう。
連日、円売りが出ているのですが米ドル/円の上値が重いところをみると、動き出すとしたら下方向なのではと思います。
【参考記事】
●武田薬品の英シャイアー7兆円大型買収の行方に注目! 巨額の英ポンド買いの噂も?(4月26日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
新興国通貨やコモディティの下落、3000ポイントの節目を割り込んだ上海総合指数、先週(6月18日~)、21日(木)まで8日続落となったNYダウなど、米ドル/円を取り巻く環境はリスクオフを示唆しています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米国株をみるとNYダウは弱いのですが、ナスダック総合指数は先週(6月18日~)も史上最高値を更新しました。対照的ですね。
(出所:Bloomberg)
ただ、6月21日(木)にはアメリカの最高裁が週や地方政府がオンライン小売への課税を強化する判決を下しました。Amazonやイーベイなどの株価はこの影響で下落しています。
また、ロイターは「トランプ米大統領、多くの中国企業による米ハイテク企業への投資禁じる計画」と報じています。ナスダックが崩れるようだと、リスクオフの動きが強まるのでしょう。
■ワールドカップ、プロキシーとしての豪ドル
先週、6月22日(金)のOPEC(石油輸出国機構)総会では増産合意が発表されました。具体的な増産量は示されていませんが、日量70万~100万バレル程度の増産とみられています。
ワールドカップの開幕戦、サウジアラビアとロシアの試合の裏では担当閣僚による話し合いが行なわれ、OPECに150万バレルの増産を要請するとの報道が出ていました。こうした報道よりも小幅の増産にとどまったことから、原油価格は上昇しています。
(出所:Bloomberg)
オイルカレンシーには短期的にポジティブかもしれませんね。
ただ、今週(6月25日~)はナスダック総合指数が下落するようなら、リスクオフの円高が強まるでしょうから円を買っていきたいですし、その相手通貨は豪ドルを中心に考えています。
通商摩擦でもっとも懸念されるのは世界の「G2」である米中の摩擦。中国経済に深刻な影響を与えるようなら、そのプロキシー(代替)である豪ドルも下がりやすいと考えています。
【参考記事】
●17年間も続いたサポートを割れる寸前! 豪ドルはなぜヤバい?米中貿易戦争が影響?(6月21日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
とはいえ、先ほど話が出たとおり、今週(6月25日~)は半期末。ファンダメンタルズと違う動きをする可能性には注意しないといけないですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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