イタリアの財政問題がマーケットを揺さぶっているが、イタリアは連立政権のため、閣僚のトップ同士の中でも意見が違う。どうしてもポピュリズム系に引きづられざるをえないのである。だからそう簡単には財政支出の削減はコンセンサスにはなりにくい。
しかし昨日はイタリアの政府筋からもEU基準に近づけるようなことを言い出したので、やや落ち月を取り戻すこととなった。為替相場ではユーロが反発気味に推移。ユーロドルは1.16台を取り戻すかのようなユーロの買い戻しが入った。このままユーロが上昇を続ければ、市場全体がリスクオンの流れが強まるかのように見えた。しかしそうはならなかった。
そもそも問題のイタリア財政。それを素直に反映するのはイタリアの長期債だ。これが財政不安で売られていたのが、安心感から買い戻された。となるとそれまでヘッジやロング・ショートのポジショニングで買われていた米国債やドイツ債などの格上の債券が売り込まれたのだ。
つまり長期金利の上昇を招いたのである。ドル金利は長期に限ったものではなくて、短期金利も上昇。そして金利上昇は企業コストの増大を招く。それを嫌気してニューヨーク市場の午後からは米国株も値を下げた。
ドル金利の上昇でドル保有のメリットが増えて、ドル相場が全面高。ユーロドルは1.14台まで落ちこんで、ドル円も114円台の中盤で高値引け。私もユーロドルはショート攻めしかしないと決め込んでいたのだが、アジア時間でのユーロの巻き返しを見せられて、ちょっと入りそびれた。
そしてユーロドルは1.15台割れはかなりもんでいたのだが、朝の5時を過ぎてから、すなわちバリューデイトが変わってから、ポジション調整の投げ売りが一気に出たものと思われる。私のスタンスも変わらない。しかし今年の最安値である1.13台ではサポートされる恐れもあり、テクニカル的に要注意。
ところでイランの石油取引停止が心配されて、原油の市場への供給量が激減するのではないかとの供給不安が広がっている。そして原油価格は75ドル台まで上昇してきて、なおも高値圏で張り付いている。高値張り付きしているということはテクニカル分析の側面から見ても、まだ買い足りていないという証拠だ。
つまりまだまだ上がるかもしれないことを示唆している。原油が高いということで、石油関連商品も値上がりが顕著となっている。飛行機の燃費サーチャージもそうだが、身近なところではガソリン価格もずっと高いままである。
しかしよく考えてみると、70ドル台というのはそんなに困るほど高いのか。原油相場は3年ぶりの高値水準だというが、3年前には何が起こったのか。それは原油相場が下がって世界的に経済のスローダウンが心配されていたのである。つまり90ドル台や80ドル台でステイしていた原油相場が、スリップして70ドルの大台を割り込んできたのだ。
70ドルを下回ってくるとシェールオイルの採掘が採算割れするとも言われた。ロシアやサウジなど国家収入の多くを石油生産で占める国は、財政危機にも陥るとみられたものである。つまり当時の70ドル台というのは「安くて困った」レベルだったのである。要はものの見方が違ってきているだけであり、大騒ぎするほどのことはないのかもしれない。
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