■Zaifとフィスコがついに正式合意
「またか!?」と世間を騒がせた仮想通貨取引所Zaifによる、およそ70億円規模の仮想通貨流出事件。

Zaifを運営するテックビューロが、ヤラかしたことを世間に公表したのが2018年9月20日(木)でしたが、この時のプレスリリースで、被害状況や財務局への報告状況などとともに綴られていたのは、JASDAQ上場企業であるフィスコへの金融支援要請および実質的な経営権の譲渡を検討するための基本契約を締結したというものでした。
【参考記事】
●「またか!?」 Zaifで67億円相当の仮想通貨消失!フィスコ、50億円の金融支援で顧客損失補填へ!?
いきなり支援要請&買収話!? という急展開に驚きましたが、その後は10月1日(月)に「まだ正式な契約締結に向けて交渉中」との進捗報告があっただけで、特に目新しい情報はもたらされていませんでした。
いったい、どうなってんの? という感じでしたが、10月10日(水)になって、突如、Zaifが「お客様預かり資産に関する金融支援 正式契約締結のお知らせ」とのタイトルでプレスリリースを発表。なんでも、フィスコとの交渉がまとまり、正式に契約を締結するに至ったようです。
「お客様預かり資産に関する金融支援」におきまして、当社のプレスリリースより詳細をご報告しておりますのでご一読をお願いいたします。https://t.co/yrKoS3UsPJ
— Zaif - 暗号通貨取引所 (@zaifdotjp) 2018年10月10日
■Zaifの純資産は3億5500万円…。ICOの100億円はどこへ?
テックビューロの発表から少し遅れて、フィスコでもプレスリリースが発表され、正式に契約を締結することになった旨が公表されました。
フィスコのリリースでは、契約締結の背景として、事件が仮想通貨市場に与える影響への配慮や顧客資産保護といった観点に加え、「テックビューロの倒産による資金回収不能のリスクを回避する観点」という項目も挙げられていたのですが、「倒産」って、まさか、テックビューロの財政状況は、そんなにひっ迫していたのか…? と、記者個人的には、やや疑問でした。
しかし、このプレスリリースに掲載されていたテックビューロの財政状態を見ると、おぉ…おぉ…おぉ…!?

(出所:フィスコ「持分法適用関連会社における事業の譲受けに関するお知らせ」)
ビットコインをはじめとする仮想通貨が暴騰を見せ、猫も杓子も仮想通貨! みたいな状況だったにも関わらず、テックビューロの平成30年3月期の営業利益は19億7300万円の赤字。純資産は、わずか3億5500万円です。テックビューロさん、ぜんぜん儲かってないですやん!
でも、ちょっと待って…テックビューロが実施したICO「COMSA」によって調達された100億円はどこにいったんだ!? と、プレスリリースを読み進めていくと、これは、会社分割によって新設されたテックビューロホールディングスに承継されたため、上の表には反映されていないとの記述を見つけました。
【参考記事】
●「ICO」とは? 「IPO」と何がどう違うの? テックビューロ発、「COMSA」のしくみは?
そのまま考えると、ぜんぜん儲かっていない会社の事業譲渡を受けるなんて、フィスコにはいったいどんなメリットがあるのか? なんて思いますが、元々、フィスコ仮想通貨取引所の利用者には法人顧客が多いらしく、Zaifが持つ個人顧客を獲得できるのが魅力的だったといった感じのことが、プレスリリースには書かれていました。

譲渡価格は、55億円から事件の補償に充てる金額などを差っ引いて、フィスコとしては、最終的に3億円程度を想定しているとのこと。果たして、この買い物、高いのか…?安いのか…?
(次ページでは、流出した仮想通貨の補償内容などについて紹介)
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