■世界の金融市場は基本同時進行、遅れての円全面高はない
マーケットが異なるから、「これから円の全面高をもってリスクオフの市況を深めていく可能性があるのでは?」といった質問があることも予測できるが、断定的な判断はできないものの、そのような市況はあっても稀で、可能性は少ないと思う。
何しろ、世界の金融マーケットは、基本は同時進行なので、何日も遅れて他の市場の動向を後追いする形で価格を形成していくことは考えられない。
こういった異なる市場の時間差があれば、数日どころか数秒の隙間でさえも、特にアービトラージの取引対象として狙われ、結果的にその差がなくなるから、あり得ない。
【アービトラージ(裁定取引)についての参考記事】
●ノーベル賞を信じるな!? 巨大ヘッジファンドLTCM破綻の余波で米ドル/円が22円暴落!
仮に事後的な「後追い」という印象があったとしても、それはほかの理由やロジックに基づく値動きで、単純に言えば「勘違い」というほかあるまい。
だから、逆説的に言えば、今回の株式市場の騒動は、為替市場におけるリスクオフを測る最大のツールであるクロス円の値動きで証左されていないから、本格的な下落相場は続かず、比較的早期に終息してくる可能性が大きい。
テクニカル的視点では、一番シンプルな見方として、NYダウも日経平均も200日移動平均線前後のサポートを受けて、再度上昇してくる公算が大きい。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
■日本株は「秋のバーゲン」、今買えば楽しいお正月に!
では、株高のトレンドが継続される最大の根拠はどこにあるか。
やはり単純にテクニカルではなく、ファンダメンタルズ上の理由が必要になってくるから、ズバリ利上げサイクルの継続が挙げられる。
要するに、利上げできる環境において、米景気の悪化はあってもだいぶ先で、株式市場の基調の修正があってもだいぶ先になるから、目先はスピード調整にすぎないということだ。
本コラムでたびたび指摘してきたように、歴史に照らして考えると、米利上げサイクルの途中では、米株式市場におけるトレンドは基本的に維持されてきたから、今回も途中における本格的な転換はないと思う。
そもそも、「トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げを批判したことで、米国株が大きく調整した」という見方(筆者は同意しない)もあるほど、また、トランプ氏を躍起にさせるほど、米利上げサイクルの一段の拡大や長期化が市場のコンセンサスとして浸透している状況なので、一層途中のスピード調整の可能性が高まる。
なぜなら、米利上げ長期化の思惑で、米長期金利が急上昇し、米国株の調整圧力として表れたのは当然の成り行きで、本来、米国株が反落してくること自体はサプライズではないからだ。
問題は、その急落ぶりや値幅の大きさ(NYダウは10月10日に史上3番目の下落幅を記録)にあるが、米ハイテク株を中心に、米国株が「買われすぎ」の状況にあったこと、また、アルゴリズムトレードが盛んで相場が行きすぎになりやすいことが原因として語られる。
このあたりの事情は株式評論家にお任せしたいが、結論から申し上げると、急速な調整があったからこそ、今、米国株も日本株も絶好の押し目のチャンスとみる。特に、PBR(株価純資産倍率)の低い日本株については「秋のバーゲン」のような市況で、今拾えば、楽しいお正月を迎えられるのではないかと思う。
前述のように、為替市場の値動きが限定的だったので、円安というトレンド自体に関する判断は、何ら修正もいらない。
米ドル/円に関しては、引き続き115円の心理的大台のブレイクありと考え、押し目買いのスタンスは不変。市況はいかに。
(14時執筆)
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