■ドルインデックスのスピードが緩やかなほど、米ドル/円も…
ところで、ドルインデックスの強気変動自体が、そのモメンタムによって米ドル/円の頭を押さえ込む要素となる可能性も大きいから、ドルインデックスの上昇がそのまま米ドル/円の上昇につながるかどうかは問題であり、また相場を読む大きなヒントが隠される。
一般論では、ドルインデックスの急速な上昇があれば、往々にして比例して下落していくのがユーロである。ユーロ/米ドルのみではなく、ユーロ/円もユーロ安を通じて円高圧力になるわけで、米ドル/円に波及する局面もしばしば観察されてきた。
だから、原則論において、米ドル全体のトレンドが維持され、かつそのスピードが緩やかなほど、米ドル/円にとって「居心地の良い」局面になりやすいと言える。
逆に言えば、米ドル高とはいえ、激しいモメンタムを伴うものなら、往々にしてユーロ/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の急落をもたらす市況でもあるから、米ドル/円はドルインデックスに追随せず、むしろユーロ/円などクロス円の急落につられ、ベア(下落)トレンドを形成していく局面が想定される。
この場合は、ほぼ間違いなく危機的な状況で、いわゆる本格的なリスク回避の市況になるから、値幅が大きく拡大していく大相場になりやすい。
その典型的な事例はリーマンショック後の相場であろう。もう10年前の出来事とはいえ、ユーロ/円、英ポンド/円などクロス円相場の大暴落が記憶に新しい。
■これからの市況を占う3つのポイント
となると、これからの市況を占うには、以下の3つのポイントから推測できるではないかと思う。
まずは米ドル/円とドルインデックスが、背離した値動きをする、またはそのような兆しがあるかどうか。
次に、値幅が大きく拡大しているかどうか。
最後に、もっとも肝心なのがクロス円の動向で、外貨安による本格的な円高圧力が増大しているかどうか、である。
米ドル/円とドルインデックスは、変動パターンが相違するものの、ほぼリンクして上昇してきたので、問題ないはずだ。
(出所:Bloomberg)
値幅については、前述のように米ドル/円は今までかなり低い変動率しか達成しておらず、またドルインデックスが2018年年初来高値更新したとはいえ、8月に付けた高値をわずか上回る程度にすぎず、また2017年高値を起点とした全下落幅の61.8%の回復にもなっていないから、そのスピードが激しいとはまったく言えない。
最後は肝心のクロス円だが、やはり主要クロス円の相場構造を見ないとわからない。
イタリア問題再燃の兆しを見せるEU(欧州連合)、そしてEU離脱問題でゴタゴタが続く英国から考えて、これから英ポンド、ユーロの米ドルに対する一段安が十分想定される中、肝心のユーロ/円と英ポンド/円の内部構造は、むしろ底打ちの可能性を示唆しているようにみえる。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
ユーロ/円なら「ダブルボトム」、英ポンド/円なら「逆三尊(※)」というフォーメーションが読み取れる。この見方が正しいければ、ここからクロス円の下値余地がなお残っているものの、限定される公算も大きいから、本格的なリスクオフの局面には程遠いことが暗示されている。
(※編集部注:「逆三尊」はチャートのパターンの1つで、「三尊型」と反対に、底を示す典型的な形とされている)
これからユーロ/米ドルの1.1ドルの節目打診、英ポンド/米ドルの1.2550ドル打診(すなわち下落)が想定される中、仮にユーロ/円や英ポンド/円が2018年年初来安値の再更新を回避できるなら、それは米ドル/円の高値トライがあるというほかあるまい。
こういった逆説的な視点でみれば、米ドル/円の2018年年内上値余地は、時間が限定されるものの、やはり上方修正の必要が出る可能性が大きい。詳細はまた次回。市況はいかに。
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