■米政府は少なくとも5、6年前からファーウェイ社を捜査か
実際、ZTE社を制裁できたのは、FBIの手柄だと言われている。ZTE社の米政府対策要員が、実はFBIの捜索員だったらしい。
同捜索員が押さえたZTE社の内部資料には、「F7」という暗号で表された中国大手ライバル会社がしばしば登場し、F7社が米政府監視の目を盗んでイラン政府との貿易をうまくやっているといった半分嫉妬、半分うらやむような記載が多くあった。
暗号化しながらではあるが、F7社が米国のある会社を子会社にしたことも同時に記されており、ここから同会社を買収しようとしたのがファーウェイ社であったことがばれたわけだ。
米政府は少なくとも5、6年前から、ファーウェイ社の本格捜査に着手していたと推測される。
ファーウェイ(華為技術)はスマホのシェアで世界2位、売上高9兆円と言われる巨大企業だ。
■イラン政府からも証拠を入手していたというウワサも
また、孟ファーウェイ副会長に刑事責任を課すのは、彼女が米政府の監視を逃れるグローバル金融決済システムの開発や利用を主導したからだと言われている。これは利用されたHSBCが米当局に通報したことだという。
さらに、イラン政府は米政府に接近し、トランプ政権との会談を求めたところ、米政府は前提条件として、ファーウェイ社との取引記録を出すように言い、イラン政府が水面下で証拠を引き渡したとのウワサもある。換言すれば、このウワサが事実であれば、ファーウェイ社はイラン政府にも裏切られたというわけだ。
こういった証拠を押さえながら、米政府が行動を取らなかったのは、最高のタイミングを待つためだったということを、12月1日(土)の逮捕で世界に知らしめたわけだ。
しかし、逮捕のニュースが流された時点では、12月1日(土)の逮捕だったことが報じられず、市場関係者はまったく偶然の出来事だとしか思っていなかったため、一時のパニックになったというのも理解されやすいかと思う。
逆にいえば、12月1日(土)の逮捕が今となって報道されたわけを、その後、市場関係者が吟味すれば、すぐその真意に気づくはずである。
■ファーウェイ・ショックが発生する地合いはあった
事実は小説よりも奇なり。言いたいのは、ファーウェイの件は米中対立の象徴的な出来事で、米中対立はこれからも長く続くだろう、ということだ。
マーケットはその長期戦を受け入れるしかなく、また、いちいちサプライズを感じるわけにはいかないから、ファーウェイ・ショックはすでに過去のものとなり、これからの同事件の進展がどうであれ、もうマーケットへの影響はかなり限定的になるかと思う。
したがって、我々は「ファーウェイ・ショック自体」ではなく、「ファーウェイ・ショックを通じた市場に対する判断」に焦点を合わせなければならない。
もっとも、ファーウェイ・ショックが発生する地合いがあったことも見逃せない。米2年債利回りと5年債利回りの逆転、いわゆる逆イールドの現象が起きていることを、マーケットが景気後退へのサインとして受け取り、弱気センチメントにかなり傾いていたから、ファーウェイ副会長の逮捕が弱気センチメントを限界まで拡大したわけだ。
言い換えれば、ファーウェイ・ショックはファーウェイ事件に起因したとはいえ、本当はマーケットの弱気ムードの結果だったと言える。
■今後は米政府の戦略を歓迎するムードに…?
ところで、前述のように、今となっては、市場関係者は冷静になり、むしろ米政府の戦略や行動を「歓迎」するようにムードが変わりつつあるのではないかと思う。
なぜなら、米利上げ観測で株が急落してきたから、逆イールドやファーウェイ・ショックが起こったのであり、株の急落があったからこそ、現時点で来年(2019年)どころか、12月利上げもいったん見送られるのではないかとの観測も急浮上してきたので、逆に株の底打ちにつながりやすいのではないかと思われるからだ。
このような考えが正しいかどうかはともかく、大事なのは相場のことを相場に聞く姿勢だ。筆者が一番大事にしているのは、市場自体のメッセージだ。
マーケットは明らかに底打ちのメッセージを送っているから、ファーウェイ・ショックがあったからこそ、株式にしても、米ドル/円にしても、すでに底打ちしたか、底打ちに近い状況ではないかと思う。チャートをまず以下に開示するが、詳細はまた次回に。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
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