■豪ドル/円はレジスタンスをブレイク
来年(2019年)1月から、米国が2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税率を25%へ引き上げる可能性がありましたが、週末(12月1日)の米中首脳会談で、90日間、猶予されることが決まりました。
これを受けて、週明け(12月3日)の米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は、ギャップアップでオープンしました。
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特に豪ドル/円は、レジスタンスをギャップでブレイクしていることもあって、チャート的には強い形となっています。
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ただ、90日間猶予されたというだけで、リスクを積極的に取るような材料もなく、リスクオンの動きも、今のところ限定的となっています。
市場参加者のほとんども、「短期的には楽観的だが、これまでとほとんど変わっていない」という見解で、米ドル/円やクロス円を買い上げるほどの動きにはつながっていない状況です。
【参考記事】
●EU離脱案の採決控え欧州通貨は乱高下! 売られ続けた豪ドルに「意外高」の気配が!?(12月3日、西原宏一&大橋ひろこ)
■米利上げ回数は経済指標や株価動向次第
米中の貿易戦争が、いったん小休止となったこともあり、過度な円高リスクは緩和され、市場の注目材料は、欧州の動向や、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ打ち止めの時期に変わってきています。
パウエルFRB議長は、10月初旬に「中立金利にはほど遠い」と、今後も利上げを継続していくような発言をしていましたが、11月28日(水)には「政策金利は中立金利を若干下回る」と、ハト派な発言に変わってきています。
米国の金利水準に関して、ハト派なスタンスに転換したと捉えられたパウエルFRB議長。来年の米利上げは1回もしくは2回で打ち止めになるという予想が増えているようだ。写真は2018年9月のFOMC終了後に行われた記者会見時のもの (C)Bloomberg/Getty Images News
この発言で、来年(2019年)の利上げ回数は、1回もしくは2回で打ち止めになるのではないかという予想も増え、米ドル安に推移しました。
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11月29日(木)に公表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨でも、「漸進的な利上げの文言の変更が議論された」ことがわかり、来年(2019年)の利上げ打ち止め時期が、市場の話題となっています。
今後は、経済指標や株価の動向次第で、利上げの回数が変わってくるのではないかと思いますので、こちらも注目される材料となります。
【参考記事】
●2019年の米利上げは1回程度で終了かも!? 12月FOMCに加えて米中首脳会談にも注目(11月29日、今井雅人)
●パウエル発言に小躍りする市場に落とし穴。米利上げ早期停止観測が間違っていたら…(11月30日、陳満咲杜)
■米ドル/円は短期的に114円をトライしそうだけど…
CFTC(全米先物取引委員会)が公表するIMM(国際通貨先物市場)ポジション動向では、投機筋の米ドルに対する円の売り越しが、10万枚を超えた状態となっており、中期的な円売り余地は小さくなってきています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
まだ、ポジションを解消するべき材料は出てきていませんが、米ドル/円の上値を追いかけて買っていくような状況ではないと考えています。
【参考記事】
●米ドル/円は9円幅の下落を演じた昨年と同じ状況に!? 111円台半ばの下抜けに期待(11月20日、バカラ村)
●IMMの円売り越し13.6万枚! この数字が10万枚を越えると米ドル/円は調整しやすい(2017年11月21日、バカラ村)
●IMMの危険水準は円10万枚、ユーロ15万枚、英ポンド10万枚だが、さらに確認すべきは?
短期的には、米中の貿易戦争が休戦したことで、過度な円高の可能性が低くなり、米ドル/円は114円台をトライする動きも想定されますが、中長期的にはポジションが偏ったままということもあり、下がる可能性が高いのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
■今年も残り1カ月。英ポンド主導で乱高下も!?
今年(2018年)も、残り1カ月です。米中の貿易戦争が一時的に休戦したこともあって、のんびりした動きを期待したいところですが、欧州通貨に関しては、材料が豊富にあります。
12月11日(火)には、英国議会でEU(欧州連合)離脱協定案の採決が行われる予定です。
承認されれば英ポンドが上昇し、12月18日(火)~19日(水)のFOMCを通過すれば、今年(2018年)の相場も終わりになると思います。しかし、英議会で協定案が否決されたり、採決が引き延ばされるようなことになれば、英ポンド主導で乱高下することとなります。
離脱協定案でEU側とは合意に達したものの、今度は英議会での採決を控えるメイ英首相。与党議員の多くからも協定案を批判する声が出ており、否決される可能性が高まっていると伝わっているが… (C)Matt Cardy/Getty Images News
もし、合意なき離脱(※)となれば、英ポンド/米ドルは10%下落するという予想も多く、そうなると、ユーロや他の通貨も影響を受けることになります。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
(出所:Bloomberg)
残り1カ月ですが、Brexit(英国のEU離脱)協議やFRBの利上げ打ち止め時期など、まだ気を抜けない状況が続きます。
【参考記事】
●FRB議長などのハト派発言で米ドル下落! 英ポンドは、合意なき離脱なら25%急落か!?(11月29日、西原宏一)
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