■FRB議長の弱気発言で市場は敏感に…
前回のコラムで、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言を紹介しましたが、それ以降、金融市場は米国の金利に、とても敏感になっています。
【参考記事】
●2019年の米利上げは1回程度で終了かも!? 12月FOMCに加えて米中首脳会談にも注目(11月29日、今井雅人)
そこで、パウエルFRB議長の11月28日(水)の発言をもう一度紹介すると、「FF(フェデラル・ファンド)金利は、経済にとって中立となる水準の幅広い推定レンジを、わずかに下回っている」という内容でした。

わずか2カ月弱で金利に対する見解が急に弱気になったと捉えられたパウエルFRB議長。それ以降、金融市場は米金利に敏感になっている (C)Bloomberg/Getty Images News
ちなみに、パウエルFRB議長は10月3日(水)に、「われわれは中立を超えるかもしれない。しかし、現時点では恐らく、中立金利まで長い道のりがある」と発言しており、そのときに比べると、急に弱気になったということです。
■米金利は急低下。逆イールド現象も
これに、もっとも敏感に反応したのが、金利市場です。
米国の10年物国債の利回り(長期金利)は、今年(2018年)の9月中旬に3%を超えて以来、一貫して3%を上回り、一時は3.2%を超えるときもありました。
しかし、パウエル議長の発言で長期金利は急低下し、現在は、2.9%程度で推移しています。

(出所:Bloomberg)
また、2年債の利回りと5年債の利回りが逆転する、いわゆる逆イールドという現象を誘発しました。

(出所:Bloomberg)
■株式市場にも動揺。為替は米ドル安に
一般的に、金利のイールドカーブ(利回り曲線)が逆転(短期の金利よりも長期の金利の方が低くなる)すると、景気後退を示唆するという見方があり、今回の逆イールドを受けて、市場に動揺が走りました。
株式市場は、パウエルFRB議長の発言があったときは、金利低下→株高という判断をして、一時的に上昇しましたが、その後、今回の動きは景気後退につながるものではないかという見方が広がったことで、12月4日(火)のNY市場では、一転してNYダウが1日で、約800ドルも急落するという展開になっています。

(出所:Bloomberg)
こうした動きに連動する形で、為替市場では米ドル安が進行することとなりました。
【参考記事】
●FRB議長などのハト派発言で米ドル下落! 英ポンドは、合意なき離脱なら25%急落か!?(11月29日、西原宏一)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
■注目はFOMCのドットチャート!?
ところで、この逆イールドは本当に、米国の景気後退を示唆するものなのでしょうか?
それに関して、私は今の段階では、やや否定的です。それは、この状況が前述のとおり、パウエルFRB議長の発言によって起きたものだからです。
彼の真意は、まだ本当にはわかりません。そういう意味においては、12月18日(火)~19日(水)に行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)が、非常に重要になってきます。
今回は0.25%の利上げが予想されていますが、これはほぼ、間違いないでしょう。問題は、来年(2019年)以降の利上げのペースを示すドットチャートが、どうなるかでしょう。
これが、下方に修正されることがあれば、いよいよ警戒が必要になってきます。これまで、米ドル高を基本シナリオにしてきましたが、それを修正する必要が出てくるかもしれません。
ちなみに、直近(2018年9月)のドットチャートでは、2019年の中央値が3.13%、2020年が3.38%ということなので、2019年は3回の利上げ、2020年は1回の利上げという予測になっています。

(出所:FRB)
■EU離脱案否決なら英ポンドは急落…?
それ以外にも、注意が必要な材料が2つあります。
1つは、英国のEU(欧州連合)離脱問題です。
12月11日(火)に、メイ英首相はEU離脱の合意案を、英下院議会にはかります。しかし、反対する議員が多く、否決される可能性が高い状況です。仮にそうなったら、英国は再び混乱し、英ポンドの急落を招く可能性もあります。
【参考記事】
●ドル/円は上値を追いかける状況ではない!? 年末に向けて英ポンド主導で乱高下も…?(12月4日、バカラ村)
●EU離脱案の採決控え欧州通貨は乱高下! 売られ続けた豪ドルに「意外高」の気配が!?(12月3日、西原宏一&大橋ひろこ)

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
■EUではイタリア予算案が問題に
2つ目ですが、EUでは現在、イタリアの予算案が問題となっています。
EU側は、イタリアが提出してきた予算案を差し戻し、さらに緊縮するように求めています。しかし、予算案を緊縮すれば、国民の反感を買う可能性があり、コンテ伊首相は非常に難しい判断を迫られています。
この問題も、上手くまとまっていかなければ、ユーロの売り材料になる可能性があります。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
以上のように、不確定な材料が目白押しであり、方向性が定まるのをよく見極めてから、戦略を考えた方が賢明でしょう。
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