■与党・保守党が党首不信任投票を実施
今月(12月)11日(火)に予定されていた、下院によるEU(欧州連合)離脱案の英議会採決が最大のイベントと言われていました。
報道によれば、英議会ではEU離脱案が採決で否決されるとの見方が大勢でしたが、そのまま「合意なき離脱」にはなるわけではなく、来年(2019年)3月29日(金)のEU離脱交渉期限の先延ばしの可能性も?などとウワサされてました。
ところが、その議会の採決自体が延期と発表されました。その要因は、EUと合意した離脱案が大差で否決されるとの公算が高まったためです。
今後の採決時期についてのコメントもなく、事態は不透明に…。
さらに、英国のメイ首相を取り巻く環境を悪化させる報道が、与党・保守党から発表されます。
英与党・保守党は12日、同党を率いるメイ首相への信任を問う投票を実施すると英BBC放送が報じた。
出所:Bloomberg
これを受け、メイ英首相は、与党・保守党の党首不信任投票に首相として戦うと表明。
メイ首相は12月12日(水)、首相官邸前での記者会見で、「自分の持てるすべてで、この不信任投票を受けて立つ」と声明を読み上げました。
不信任投票は、日本時間12月13日(木)午前3時。
■不信任投票の結果、メイ首相の党首再任が決定
こうした中、仮に不信任案が可決してメイ首相を退陣させたとしても、この混乱状態で誰が後任になるのかが疑問…。
しかも不信任案が通ってしまうと、EU離脱強行派が党首になる可能性も浮上し、「合意なき離脱」の公算も高まるため、事態はさらに混迷を深めます。
そして、本日(12月13日)日本時間未明に発表された英保守党の不信任投票の結果は、支持200票、不支持117票で、メイ党首が再任されました。

与党・保守党の不信任投票を乗り切り、再任されたメイ首相。再びBrexit交渉の最前線に立つことになるが… (C)WPA Pool/Getty Images
ここで、英保守党の不信任投票の手順を確認したいと思います。
(1) 保守党下院議員の15%(48人)が書簡で要求すると手続き開始
(2) 1922年委員会のブレイディ委員長宛てに書簡が送られ、同委員長だけが書簡の数を把握
(3) メイ首相には書簡が必要数に達した段階で伝えられ、その後、発表される
(4) 不信任投票は保守党の下院議員だけが参加する無記名投票で、数日以内に実施可能
(5) メイ首相が過半数に信任されれば、向こう1年間は投票は実施されない
(6) 過半数が不信任なら党首を辞任(党首選にも立候補できない)
この手順の中にもありますように、メイ首相が過半数に信任されれば、今後1年間はそのような投票は行われないということのようです。
今回は、過半数が信任ということでしたので、結果、保守党はメイ首相に対する不信任投票の申し立てを向こう1年間できないということになり、メイ首相は、しばらく首相の席に留まる可能性が高まりました。
これを受けて、事態はいったん沈静化しています。
英ポンド/米ドルは、1.26ドル台まで回復。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
■「合意なき離脱」となれば、影響はグローバルに及ぶ
振り返ってみれば、メイ首相は、もともとEU残留派。
その首相がBrexit(英国のEU離脱)交渉をここまで忍耐強く続けていることには、頭が下がるといった印象。
ただ、事態が大きく好転しているわけではなく、EU離脱法案を英下院で通過させることが極めて難しいことは変わらず。
前回のコラムでご紹介させていただいたように、仮に「合意なき離脱」となった場合は、英国だけではなく、グローバルに多大な影響を及ぼします。
以下、前回のコラムからの抜粋。
BOEの報告書によると、仮に、メイ首相のEU(欧州連合)離脱計画が議会承認を得られずに、合意なき離脱に至る場合、英国経済は第2次世界大戦以降で最悪の不況に陥るとしています。
この報告書によれば、英国のGDPは8%低下。
英ポンドは対米ドルで25%急落し、英ポンド/米ドルは、パリティ(=1.0000ドル)を割り込む可能性が高まるとのこと。
【参考記事】
●FRB議長などのハト派発言で米ドル下落! 英ポンドは、合意なき離脱なら25%急落か!?(11月29日、西原宏一)
「合意なき離脱」に陥り、実際、英ポンドが対米ドルで25%急落し、英ポンド/米ドルがパリティ(=1.0000ドル)を割り込むとすれば、他通貨にも大きな影響を及ぼすことは変わらず。

(出所:Bloomberg)
逆に、これを回避できれば、英ポンドは大きく踏み上がることにもなります。
引き続き、Brexit関連の報道と英ポンド/米ドルの動向には要注目。
■FOMCは2019年の利上げの行方に注目
Brexit関連以外での注目は、来週(12月17日~)に迫ったFOMC(米連邦公開市場委員会)。
12月19日(水)のFOMCでは、政策金利が引き上げられるというのがコンセンサス(利上げ織り込み度は、本稿執筆時点で75.7%)ですが、注目は2019年の利上げの行方。
前回のコラムでご紹介させていただいたように、FRB(米連邦準備制度理事会)パウエル議長自身が11月28日(水)の講演で、「中立金利をわずかに下回る」と発言しています。
【参考記事】
●FRB議長などのハト派発言で米ドル下落! 英ポンドは、合意なき離脱なら25%急落か!?(11月29日、西原宏一)
このコメントから考えれば、今月(12月)、政策金利の引き上げが行われると仮定すると、「さらに中立金利に近づく」ことになります。

写真はFRBのパウエル議長。12月のFOMCで利上げが行われるとすれば、さらに中立金利に近づくことになるが… (C)Bloomberg/Getty Images News
加えて、来年(2019年)、連続利上げすればオーバーキル(引き締めすぎ)となるため、その可能性は大きく後退します。
結果、米ドルは早晩、反落する可能性が高まります。
混迷を極めるBrexit情勢と、来週(12月17日~)のFOMCの行方に注目です。
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