■パウエルFRB議長などのハト派発言で米ドル反落
みなさん、こんにちは。
前回のコラムで、FRB(米連邦準備制度理事会)が「中立金利」とした時点から米ドルは反落するということと、その可能性が近づいていることをご紹介させていただきましたが、日本時間本日(11月29日)未明に行われた講演において、パウエル議長が極めてハト派的なコメントをしたため、米ドルが反落しています。
【参考記事】
●米ドルは早晩ピークアウトする!? 2019年にかけて、米ドル弱気派が急増するワケは?(11月22日、西原宏一)

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パウエル議長の過去の発言を確認すると、10月3日(水)の講演では「中立金利には程遠い」とコメントしていました。
そして、同じ人物が、わずか2カ月弱経過した11月28日(水)の講演では、「中立金利をわずかに下回る」と発言しています。

10月3日の講演では「中立金利には程遠い」と発言していたパウエル議長だが、11月28日の講演では「中立金利をわずかに下回る」と発言し、内容がガラリと様変わりした (C)Bloomberg/Getty Images News
パウエル議長の講演内容が様変わりしたのは、もちろん原油の急落の影響もありますが、このところの米国の住宅市況の低迷も大きく影響していると想定されます。
【参考記事】
●衝撃的な原油価格急落が金融危機を招く!? ドル安進行を見込んで米ドル/円は戻り売り(11月26日、西原宏一&大橋ひろこ)

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
■原油急落はトランプ大統領のコメントとは関係ない
余談になりますが、マーケットには、あたかもトランプ大統領が何度も不満を表明し、原油価格を下げさせたことでFRBの「利上げを止めた」かのような論調もあります。
しかし、米国の大統領が不満を表明する程度で原油が急落することはありません。
したがって、原油価格の動向にトランプ大統領のコメントが影響することはありません。

(出所:Bloomberg)
むしろパウエル議長が粛々と利上げを続けてきたことで、インフレ抑制に効果が出てきたということでしょうか?
■米ドルの反転時期は、さらに近付いたと想定
この「中立金利をわずかに下回る」という表現は、11月27日(火)の講演でクラリダ副議長も使っていました。
つまり、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、正副議長が続けて同じ表現を使っているということは、FRBがうまく連携してマーケットに「FRBのスタンス」のサインを送っていることになります。
ともあれ、前回のコラムでご紹介させていただいた「中立金利」に近づく時期が前倒しとなり、米ドルの反転時期は、さらに近付いたと想定しています。
【参考記事】
●米ドルは早晩ピークアウトする!? 2019年にかけて、米ドル弱気派が急増するワケは?(11月22日、西原宏一)

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米長期金利の下落により、株は急反発。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
本邦執筆時点で、米ドル/円は113.40円、ユーロ/米ドルは1.1375ドルで推移。
米ドル/円は114円台ミドル、ユーロ/米ドルは1.1200ドルという重要な節目を超えられず、米ドルは反落しています。

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■合意なき離脱なら、英ポンド大荒れでメルトダウン状態に
加えて、今週(11月26日~)のマーケットのもう1つ話題は、Brexit(英国のEU離脱)。
11月28日(水)にBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])がBrexitに関して興味深いレポートを発表しています。
BOEの報告書によると、仮に、メイ首相のEU(欧州連合)離脱計画が議会承認を得られずに、合意なき離脱に至る場合、英国経済は第2次世界大戦以降で最悪の不況に陥るとしています。
この報告書によれば、英国のGDPは8%低下。
英ポンドは対米ドルで25%急落し、英ポンド/米ドルは、パリティ(=1.0000ドル)を割り込む可能性が高まるとのこと。
25%の急落とは、極めて衝撃的な数字です。

(出所:Bloomberg)
これだけの衝撃的な報告書がBOEから発表されることの意味は、合意なき離脱は、なんとか避けたいという意図が見え隠れしていると考えています。
ただ、仮に、合意なき離脱になった場合は、まれに見る大相場となり、英ポンドは他の主要通貨に対して、ほぼメルトダウン状態に陥ることとなります。
こうしたBrexitの動向に加え、お伝えしたとおり、FRB正副議長が、「中立金利をわずかに下回る」とコメントしたことにより、米ドルの反転時期がさらに近付いた米ドル/円とユーロ/米ドルでの、米ドル反落の可能性に注目です。
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