■米ドルは積極的に買いにくい状況
12月1日(土)に米中首脳会談が開催され、米国が2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税率引き上げを90日間、猶予したことで、米中貿易戦争の一時休戦が決まりました。
ただ、その裏では中国通信機器大手ファーウェイの副会長が、米国の要請で逮捕されていました。
【参考記事】
●ドル/円は上値を追いかける状況ではない!? 年末に向けて英ポンド主導で乱高下も…?(12月4日、バカラ村)
●米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?(12月7日、陳満咲杜)
●ファーウェイ問題と逆イールドで米株急落! 欧州通貨はリスク大。ドル/円の戻り売りで(12月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
市場は、米中貿易戦争の一時休戦で楽観的になっていましたが、それが否定され、株価は急落。米国の早期利上げ打ち止め観測も重なり、米ドル/円は112.23円まで下落しました。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
また、豪ドルの下げが特に大きく、豪ドル/円は12月3日(月)にギャップアップでオープンしたものの、その後、80.71円まで下落しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足)
米ドル/円は、11月20日(火)の安値112.30円も下回りましたが、下げが続かず、いまだに112円~114円を中心とした横ばいが継続しています。
下げは続いていませんが、米国債利回りの逆イールドによる景気鈍化も、市場は懸念しはじめており、米ドルを積極的に買いにくい状況になってきています。
■来週のFOMCはドットチャートに注目!
12月18日(火)~19日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利が引き上げられる見通しですが、来年(2019年)の利上げ回数の市場の見通しに関しては、分かれてきています。
そのため、FOMCメンバーの金利予想を示す、ドットチャートに注目が集まります。
【参考記事】
●逆イールドは、本当に米景気後退の前兆か? 12月FOMCの「ドットチャート」に注目!(12月6日、今井雅人)
急激に引き下げられることはないと思いますが、どの程度、下方修正されるのか、注目されることろです。
■米ドル/円は季節的に下がりやすい時期に
米ドル/円は横ばいが続いていますが、例年、12月中旬頃からは下がりやすい傾向が見られます。直近は3年連続で、12月~1月に、米ドル/円は下がりはじめています。
(出所:Bloomberg)
その前の2014年は、アベノミクス相場のため上昇していましたが、季節的には下がりやすい時期に入ってきます。
今はまだ横ばいですが、季節的にも、上値は限定的ではないかと考えています。
■離脱案の議会採決延期! 合意なき離脱の可能性高まる…?
本日、12月11日(火)に、英議会でEU(欧州連合)離脱協議案の採決が行われる予定でした。
しかし、採決しても否決される可能性が非常に高まっていて、否決されると合意なき離脱(※)の可能性が高くなるため、延期することが決まりました。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
英離脱案が議会で承認される可能性が低いことから、12月11日に予定されていた採決の延期を決めたメイ英首相。バカラ村さんは時間の経過とともに、合意なき離脱の可能性が高まってくると考えている (C)WPA Pool/Getty Images
目先は引き延ばされたものの、採決の時期は未定で、時間の経過と共に、合意なき離脱の可能性が高まってくることになります。
12月13日(木)にEU首脳会議があり、メイ英首相はここで再度、離脱協議案を提案することになります。
ただ、時間がない中で、英議会の承認を得ることができる内容にするのは難しいと思いますので、こちらも難航することが予想されます。
■英ポンド/米ドルは2017年安値も視野入り!?
12月20日(木)からは、英議会が休会となり、再開されるのは、1月7日(月)となります。
英国に関しては、楽観的な材料が出てこないこともあり、英ポンドは軟調な展開となりそうです。
【参考記事】
●ドル/円は上値を追いかける状況ではない!? 年末に向けて英ポンド主導で乱高下も…?(12月4日、バカラ村)
英ポンド/米ドルは、1.26ドル台半ばのサポートで4カ月ほど下げ止まっていましたが、昨日(12月10日)、ここを下抜けて1.2505ドルまで下がりました。
(出所:Bloomberg)
1.2500ドルも下抜けると、2017年の安値1.2000ドルが見えてくることになります。
(出所:Bloomberg)
英ポンド/円も、142円台半ばのサポートを下抜けてきており、英ポンドは軟調な展開です。
(出所:Bloomberg)
英ポンドは、ヘッドラインで乱高下する可能性もありますが、これまでサポートされていた水準を下回ってきたため、英ポンド/米ドルは、売りで良いのではないかと考えています。
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