■クロス円のほうが米ドル/円より地合いを改善しやすいかも
もうひとつ、重要な推測は米ドル/円と主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の連動にあるだろう。
たびたび強調してきたように、米ドル/円が年初来安値更新なしなら、主要クロス円の年初来安値更新もないはずだとみる。
そして、米ドル/円の107円割れがすでに円高の「クライマックス」だったとすれば、主要クロス円も切り返しを継続できるかと推測される。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
もっとも、クロス円の多くはドルストレート(米ドルが絡んだ通貨ペア)の高安に左右される。足元では米ドル全体(ドルインデックス)の調整がなお続いている可能性が大きいから、対米ドルでの通貨高が影響しやすいかと思われる。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルの200日移動平均線前後における支持があれば、さらに切り返しの余地が広がるから、ユーロ/円も切り返しを継続しやすい、といった具合に、クロス円のほうが米ドル/円より地合いを改善しやすいかもしれない。
(出所:TradingView)
米株高が続くなか、米ドル/円が大幅反落したこと自体、「リスクオフの円高」云々より、米長期金利の急落に反応した結果に過ぎないことは前回のコラムでも強調していた。
【参考記事】
●リスクオフの円高はナンセンス! 中国中央TVの映画は米中首脳会談実施のサイン!?(6月21日、陳満咲杜)
ゆえに、やはり米長期金利がこれからも下がり続けるかどうかが米ドル/円にとって何よりも肝心な問題だと思う。
(出所:Bloomberg)
■2008年末より低い米長期金利は「オーバーシュート」の極み
相場は常に現在ではなく、将来発生し得ることを織り込んでいく習性がある。したがって、これから米利下げがあるからと言って、米長期金利はまた下げるに違いない、という主張はナンセンスだ。
足元の米長期金利は当然のようにすでに利下げを織り込み、また、利下げを前提にして利回りを形成しているから、仮にこれからも下げ続けるなら、それは他の材料が浮上したか、想定よりさらに大きな利下げがあったケースと理解していいだろう。
さらに、他の材料と言っても、単に米中対立云々なら「効かない」だろう。なにしろ、今の利回りはだいぶそれを織り込んでいるから、米中対立の長期化、深刻化の結果が足元の米長期金利の急落をもたらしたと理解すべきだ。
ところで、米長期金利のチャートを眺めていればわかるように、現時点の利回りはすでに2008年末より低い水準にある。
2008年といえば、あのリーマンショックを思い出すが、米長期金利の低下がここまで進行してくると、やはり「オーバーシュート」の極みであることを悟るべきだと思う。
(出所:Bloomberg)
米中対立でこれから大変だという市場センチメントの大悪化を織り込んだ結果としては「正しい」かもしれないが、行き過ぎは否めない。
■米ドル/円のリバウンドはこれからだ
大手格付会社フィッチによると、米中対立の結果として2020年までに世界のGDP(国内総生産)は0.4%ポイント下押しされる計算になるという。
この計算は状況が改善されないことを前提にしているが、それでも「その程度か」という印象がある。
言いたいのは、米中対立の長期化が避けられないなか、市場は目先反応し過ぎで、米長期金利も下がり過ぎているから、そろそろ反騰してくるタイミングではないかということ。
2008年末の世界の株式市場の悲惨さや当時の景気状況を見ればわかるように、米株が再び歴史的な高値を更新し、世界景気も大した打撃を受けていない現在、米長期金利が2008年末の水準を下回っていること自体、行き過ぎと言うほかあるまい。
だから、米長期金利はそろそろ底打ち、または反騰してくると推測され、米ドル/円のリバウンドもこれからだろう。
(出所:TradingView)
詳しい説明はまた次回。市況はいかに。
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