■市場の焦点は米利下げで、暗い見通しが多い
マーケットの焦点は米利下げの可能性やその回数にあるだろう。利下げは景気後退を暗示し、米国株も先駆けて下落してくるのではないかと、巷では暗い見通しが多いようだ。
(出所:Bloomberg)
当然のように、米ドル安の見通しも多くなり、米ドルの頭打ちを景気後退のサインとして解釈する論調まで聞こえる。
しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)議長が利下げの可能性を示唆する前に、米ドル高一服の兆しがすでに出ていたから、米利下げ見通しの高まりで米ドルが反落してきた、といった見方は、間違いとは言い切れないものの、少なくとも「後解釈」の疑いがある。
実際、5月24日(金)の本コラムの最後でも指摘したように、そもそも米ドルの対極となるユーロは、いったん底打ちのサインを点灯していたから、米ドル全体の上昇一服も当然の成り行きと見なされ、米利下げ観測の高まりは、その「後付け」の材料として効いてきた、という見方もできる。
【参考記事】
●なぜ、2008年安値を境に米ドル安の時代は終わったのか? リーマンショックの再来は?(2019年5月24日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
より重要なのは、利下げの可能性やその回数に関する予想は、目先の米長期金利に織り込まれたはずなので、利下げがあるから米長期金利が下げ続けるとは限らないということだ。
また、利下げがあるから、米国株はベア(下落)トレンドへ転換するだろう、あるいは米景気が後退するだろうといった発想も怪しい。
実際、FRB議長の示唆以降、米国株はむしろ連続して反騰してきたから、利下げが株式市場を支える側面を無視できない。
(出所:Bloomberg)
■FRBの「君子豹変」は米中対立長期化対策
米国の景気拡大期が間もなく10年となり、間違いなく史上最長を記録する。そのうち、FRBが利下げを敢行すれば、世界でもっとも柔軟性をもって景気対策を行う中銀となり、景気を支えていく可能性は大きいだろう。マーケットはすでにFRBの姿勢を評価しており、米株高を通じて景気拡大期がさらに拡張される可能性も、無視できないだろう。
というのは、たった半年で、従来の利上げのスタンスから一転して利下げを暗示というFRBの「君子豹変」は、ほかでもない、一番のリスク要素とみられる米中貿易戦争や米中対立の長期化に先手を打った判断だと思われる。
マーケットはその姿勢を評価し、また安心感を覚えるから、まず米国株のブルトレンド継続をもってセンチメントの改善をはかり、その後、景気拡張につながるだろうとも推測される。
本コラムで何回も指摘したように、米国株はブル(上昇)構造を…
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