■利下げが確定したら調整下落は終了する?
市場センチメントは、目先なお米利下げ観測やその下げ幅に関する憶測に支配されている。昨日(7月18日)の市況の反落も、その表れだろう。
FRB(米連邦準備制度理事会)のクラリダ副議長やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はそろって、米経済を支援するため迅速に行動すべきだとの見解を示したため、米ドル全体が急速に売られ、合意なしのブレグジットが懸念される英ポンドさえ、対米ドルで切り返しを果たしたほどだ。
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もっとも、前回のコラムでも強調していたように、市場センチメントの変化は速く、惑わされないように気をつけないと市場の本質を見誤る恐れがあるから、今回も然り。
【参考記事】
●「米利下げ後に円高が進む説」への懐疑。円高ピークを示唆する2つのフォーメーション(2019年7月12日、陳満咲杜)
今月(7月)の利下げが確実視される以上、市場センチメントの変化がもたらした値動きの波乱があっても長く続かないかと思われる。利下げが確定したら、元の軌道に戻っていく公算が高いから、今一度ポイントを押さえておきたい。
■米ドル/円の軟調は「二番底」形成途中の可能性大
米ドル/円が昨日(7月18日)、107円台前半にトライしたのも「規則正しい」と言えるだろう。というのも、利下げ幅に関する憶測の高まりで、米長期金利(米10年物国債利回り)がまた反落してきたからだ。これまでのコラムでも述べてきたように、最近は米ドル/円の値動きと米長期金利の連動性が高く、これはむしろ当然の成り行きである。
しかし、利下げで米ドル/円の反落があっても、6月安値を割り込むかどうかは定かではない。また、2019年年初来安値を割り込むかどうかについて、断定的な言い方は誰にもできないが、可能性としては小さいのではないかとみる。
米長期金利の低下が、すでに歴史的な「売られすぎ」の領域に入ったことはこの前の本コラムで指摘したとおりであり、仮に50pipsの利下げがあっても、また、これから連続した利下げがあっても、その大半がすでに織り込まれているから、米長期金利の安値更新は容易ではなく、また、仮に再度安値更新があっても下値余地限定の公算が高い。
【参考記事】
●「米利下げ後に円高が進む説」への懐疑。円高ピークを示唆する2つのフォーメーション(2019年7月12日、陳満咲杜)
ゆえに、当面は米長期金利との連動があっても米ドル/円は下値余地限定のはずであり、米国株のブル(上昇)基調から考えて、リスクオフ云々も見当違いの公算が高く、目先の米ドル/円の軟調は、下値追いより、「二番底」を形成している途中の可能性が大きい。
(出所:Bloomberg)
もちろん、目先のトレンドを修正するには、「きっかけ」を待たなければならないが、往々にして材料が相場の構造を後追う形で発生するケースは多いから、その「きっかけ」の想定がすぐできなくてもあまり心配しなくてよいはずだ。
■状況の割には米ドル/円は「底堅い」という印象さえある
リスクオフの観測に基づく円高予測は、今に始まったものではなく、2019年年初来急落時にも盛んに聞こえてきた。
しかし、2019年年初の段階においては、米中貿易協議については楽観的だった上、利下げ観測も浮上していなかった。だから、米ドルを押し下げる材料が噴出し、市場センチメントもかなり悪化した中で足元のレートをみれば、米ドル/円は実に「底堅い」との印象さえ得られるのではないかと思う。
なにしろ、「理屈どおり」の値動きなら、米ドル/円はすでに104円台、さらに100円の大台にトライしてもおかしくないはずだ。
リスクオフの円高という見通しの多くは、米国株の頭打ち、またベア(下落)トレンドへの展開を予想の根拠にしていた。しかし、米国株はブル基調を維持、また、米株三大指数がそろって高値更新と、むしろ一段と強気を増している。こういった「前提条件」の消失にもかかわらず、リスクオフの円高予想にこだわる論調には、やはり「落とし穴」ありと見るべきではないかと思う。
FRBのハト派観測の高まりが米国株の支えとなり…
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