■為替が理屈どおりに動くなら、相場自体が成り立たない!
相場は理外の理、時には経済学の教科書の教えとまったく反対の値動きをみせる。
最近の好例は、前回のコラムで述べた、ECB(欧州中央銀行)が包括的緩和策を打ち出したにもかかわらず、ユーロが買われた件だ。
【参考記事】
●日銀のマイナス金利導入時と同じ動き! とにかくユーロを買っておけ!!(2019年9月13日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
そして立て続けに、FRB(米連邦準備制度理事会)の連続利下げや日銀の次回緩和示唆で、米ドルや円は売られたのではなく、少なくとも短期の反応パターンとして米ドルと円が買われていたところが興味深い現象だ。
(出所:TradingView)
もっとも、経済学の教科書どおりに相場が動くものであれば、エコノミストや経済学の教授たち全員が大金持ちになっているはずだ。そうでなければ、やはり相場の世界は別物で、理屈で動くものではないことを悟るべきだ。
今さら強調することもないが、理屈どおりに動くなら、市場参加者全員がお金持ちとなり、相場全体が成り立たなくなる。ゼロサムゲームの特徴が強い外国為替市場において、これだけは100%自信をもって言い切れるかと思う。
■投資家にとって大事なのは「なぜ」より「どう」
さて、相場の値動きと経済学の原理がかけ離れた時、エコノミストとトレーダーの関心事は大きく違ってくるだろう。エコノミストたちは「なぜ」に興味あり、また、それを解明することが仕事となる。
一方、投資家にとって「なぜ」はまったく無用とは言い切れないが、大事なのは「なぜ」ではなく、「どう」であろう。
要するに、「なぜ」を解明(そもそも解明できない可能性も高い)したところで、金儲けに利用できるとは限らないばかりか、「ムダ知識」が「邪魔」になってくる可能性が高い。
それよりも、「これからどう動くか」を推測し、また、シナリオを立て、市場のトレンドを観察し、できるだけ早い段階で便乗することが、はるかに重要なミッションのはずだ。
さらに、因果関係が仮に理路整然と解明されても、ほぼ確実に「後付け」や「後講釈」になるから、トレンドに乗れないどころか、乗ろうとしたら逆にトレンドがもう終盤に入っていたり、トレンド自体が転換していたというケースも多い。
「なぜ」に一生懸命に頭を突っ込んだ結果、高値(安値)掴みさせられるか、相場のメイントレンドと逆のポジションを取る結果になりがちだ。個人投資家にとって「百害あって一利なし」と言える。
■相場自体がすべての英知と判断や思惑の集大成
では、どう対応すればいいかと聞かれると、その答えはシンプルかつ強力だ。相場を信じることに尽きる。
換言すれば、相場が常識(理論や巷の両方)とまったく反対の値動きやトレンドを示してくれた時、相場が示す方向に張ることがもっともシンプルでもっとも大事なストラテジーだ。
肝心なのは、相場自体がすべての英知と判断や思惑の集大成であるということだ。だから、機関投資家を含め、誰よりもどの集団よりも賢く、また、これからの方向を知っているため、相場についていくしかない。理論や巷の常識とかけ離れればかけ離れるほど、相場の値動きや方向が正解になりやすいのも、結局、その本質にあるのではないかと思う。
だから、相場の前例を勉強することは大事だ…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)