■似たような局面がくれば、その後、同じ市況になりやすい
だから、相場の前例を勉強することは大事だ。ただし、間違えないでいただきたいのは、「なぜ」の勉強ではなく、「どう」の勉強をしないといけないということだ。
前述のように、仮に理路整然と「なぜ」を解釈されても、それが正しいかどうかには「正解」がなく、また、しょせん「後講釈」なので、少なくともトレードにおいては役に立たない。
一方、「どう」の場合は非常に役に立つはずだ。歴史は繰り返す、という格言があるように、過去の特定の局面におけるプライスアクション(値動きや値動きのパターン)は、似たような局面がくれば、その後、同じ市況になりやすいから、トレーダーにとって利益を計上する好機となる。
その特定の局面に、金融政策などマクロな話が絡めば、なおさらだ。なぜなら、理論や巷の常識とかけ離れるから、必然的に反対方向のポジションを取る者が多くなる。そして、本来のトレンドが鮮明化するにつれ、反対のポジションは手仕舞いするように迫られる。それにより、トレンドはより鮮明となり、また、大型化、長期化して、発展しやすいからだ。
■「歴史は繰り返す」とわかっていても実行できないのが人情
しかし、「どう」の勉強は、一見簡単に見えるが実はなかなかできない。過去の事例の勉強はたやすいことだが、その教訓や知恵を生かして現在や将来の市況において活用するのは、決して簡単にできるものではない。
なぜなら、相場の原理は変わらなくても、毎回、具体的なマクロ環境やファンダメンタルズは違ってくるから、市場センチメントの「支配力」もあって、頭でわかっていてもなかなか実行できないのが人情だからである。
「なぜ」の解明が往々にして「後講釈」になる根本的な原因も、そこにある。相場は先に動くものなので、底にしても天井にしても、つけるタイミングはリアルな環境と差があるから、市場参加者の多くは判断や行動を取れないのだ。
相場が底打ちのパターンを形成した時点でも、ファンダメンタルズ上は弱い材料ばかりで市場センチメントは最悪といった場合がほとんどなので、相場の言語であるプライスアクションに耳を傾け、勇気をもって行動する者は決まって少ない。
いくら歴史は繰り返すものとわかっていても、具体的な材料があまりにも「深刻」に見えるから、今回は違うだろう、今回はやばいから相場が間違っているはずという「錯覚」に陥りやすいのも「鉄板」のような思考ルーティンだと思う。
ゆえに、確率から言えば、ゼロサムゲームにおける少数派は勝利を収める可能性が高く、また、統計上の数字もその真実を証明してきた。
■ユーロも英ポンドも上昇していく公算が高い!
話がやや長くなったが、前回のコラムの見方の説明につながれば幸いだと思う。前回のコラムにて述べたように、ECBの包括的緩和策があったにもかかわらず、ユーロは切り返してきたから、2016年1月の日銀による「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」後の円相場と同様、上昇していく公算が高いことを改めて提示しておきたい。
【参考記事】
●日銀のマイナス金利導入時と同じ動き! とにかくユーロを買っておけ!!(2019年9月13日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
そして、EU離脱危機の真っ只中におる英ポンドも同じプライスアクションを示しているから、長期スパンはともかく、2019年内の安値はすでにいったんトライしたのではないとみる。
(出所:TradingView)
両通貨のファンダメンタルズは共に悪材料しかないように見え、市場心理も最悪の状況において、このような判断自体、たやすいものではない。しかし、繰り返し指摘してきたように、プライスアクションが相場の真実を示唆している以上、この時期だからこそ相場が示してくれた方向についていきたい。
最後に、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の底打ちパターンも鮮明化しつつあるから、米ドル/円の底打ちはすでに完成した、という見方も併記しておきたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
詳細の検証はまた次回、市況はいかに。
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