■過度なリスク回避姿勢が緩和へ!
先週(9月9日~)は過度なリスク回避が緩和され、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上昇しました。
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トランプ大統領は9月12日(木)に、10月1日(火)に発動が予定されていた中国に対する追加関税を10月15日(火)に延期し、さらに、暫定合意の検討もしていると発言しました。
これは、10月1日(火)が中国建国70周年記念日になるため、それに配慮したかたちになります。
....on October 1st, we have agreed, as a gesture of good will, to move the increased Tariffs on 250 Billion Dollars worth of goods (25% to 30%), from October 1st to October 15th.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) September 11, 2019
中国側が、報復関税の一部を除外したことや、米国製品の輸入を増やしたこともあり、米中の対立が一時的に緩和され、行き過ぎていたリスク回避が巻き戻されています。
さらに、英国では、与党からの離党や造反もあり、合意なき離脱の可能性が低下。また、トランプ大統領がボルトン大統領補佐官を解任したことで、こちらもリスク回避が巻き戻される動きにつながりました。
【参考記事】
●混迷のブレグジット…。短期再開となった英議会でボリス首相が喫した6連敗とは?(9月12日、松崎美子)
●英ポンドは買いか? 売りか? 「合意なき離脱」の可能性は本当にない!?(9月13日、松崎美子)
●ボルトン氏解任、対中関税引き上げ延期でリスクオン! でも、この相場が続くか疑問(9月12日、西原宏一)
■ECB追加緩和も、底堅いかたちに見えるユーロ
9月12日(木)には、ECB(欧州中央銀行)理事会が開催されました。中銀預金金利がマイナス0.5%へ引き下げられ、オープンエンド型のQE(量的緩和)が再開するということで、ユーロ/米ドルは1.0926ドルまで下落。
しかし、QEに関しては、ドイツやフランス、オランダが反対の意思を示しており、ECBの緩和策は限界が近いとの思惑となって、ユーロ/米ドルは1.1109ドルまで反発しました。
ECB理事会後の下げが、9月3日(火)の安値と同水準で止まったこともあって、チャートからは底堅い推移にも見えます。
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■ユーロは回転をきかせたトレードが有効
ECBのスタッフ予想とドラギECB総裁の会見からは、
・成長見通し
2019年は1.2%から1.1%へ下方修正
2020年は1.4%から1.2%へ下方修正
・インフレ見通し
2019年は1.3%から1.2%へ下方修正
2020年は1.4%から1.0%へ下方修正
と、ユーロを積極的に買うような状況ではなく、マイナス預金金利でもあるため、平穏な相場環境となれば、ユーロの買いポジションを保有するとマイナススワップがコストに影響してくることになります。
1.09ドル台から反発したことや、今週(9月16日~)はFOMC(米連邦公開市場委員会)もあるため、、ユーロ/米ドルは上昇する可能性を考えていました。しかし、中東の地政学リスクもあって米ドル高となり、想定していたよりもユーロ/米ドルの上値が重いような状況です。
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ただ、下げも続かないと思いますので、トレードとしては、いつまでもポジションを保有するよりは、売りでも買いでも回転をさせる方が良いような、そんな動きになるのではないかと考えています。
【参考記事】
●ECB後のユーロ安が一時的だった要因と、ここからの円安に否定的な見方をするワケ(9月13日、今井雅人)
■今週はFOMCと日銀会合。日銀は緩和するなら10月か
週末(9月14日)には、サウジアラビアの石油施設がドローンで攻撃され、原油価格が急騰。為替市場は円高となり、米ドル/円やクロス円は、ギャップダウンでスタートしています。
(出所:Bloomberg)
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ただ、トランプ大統領が「必要なら戦略石油備蓄を放出することを承認」すると発言していることから、落ち着いた動きになっています。
【参考記事】
●サウジ石油施設攻撃は「自作自演」も!? 供給障害の原油高はリスクオフ要因に…(9月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
今週(9月16日~)は、FOMC(17日~18日)と、日銀金融政策決定会合(18日~19日)があります。
日銀はECBと同じで、金融政策の限界が近いことが指摘されています。ただ、今回は、先週(9月9日~)に米ドル/円やクロス円が上昇してきたこともあって、緩和を急ぐ必要もなさそうです。
10月には消費増税も控えていることから、その影響を見極めてから緩和したいと考えるとも思いますので、緩和するのであれば、来月(10月)の日銀会合のときではないかと思います。
■中立的なパウエル発言で株価は調整へ!?
そのため、今週(9月16日~)、もっとも注目するのはFOMCの方です。市場予想は、0.25%の利下げです。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!
そして、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が会見で、今後の利下げの可能性について、どのように発言するのかが注目されるところですが、現在の利下げを行う理由は、低インフレや米中の対立による景気悪化懸念からの、予防的な利下げとされています。
しかし、米中の対立に関しては、10月1日(火)の中国建国70周年記念日まで、過度な対立は起きないと思われます。そうなると、パウエルFRB議長の発言は、中立的になりやすいと思います。
米中の対立激化が一時的に緩和されていることもあって、パウエルFRB議長の会見内容は中立的になりそうだというのがバカラ村氏の考え (C)Bloomberg/Getty Images News
NYダウは、史上最高値に迫っていることもあって、ここで中立的な発言となると、調整する動きになる可能性があるのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
■FOMC後の米ドル/円に2円の下落傾向!?
今年(2019年)に入ってからの、FOMC後の米ドル/円は、毎回、下がっています。
ただ、これはパウエルFRB議長の発言だけでなく、トランプ大統領の発言で下がっているときもあります。
1月FOMC後の下げ幅は小さく、5月FOMC(4月30日~5月1日開催)後の下げはFOMCから2営業日後という、やや例外もありますが、米ドル/円はFOMC後に、約2円ほど下がっていることが多い傾向にあります。
(出所:TradingView)
今回は、NYダウなどが調整する可能性があるため、米ドル/円も下がる可能性があると思います。しかし、今回は、今までの状況と、やや違うようにも思います。米中の対立が緩和されており、米長期金利が調整している状態にあるからです。
それでも、利下げを行うこともあって、米ドル/円は下がると思いますが、金融政策の影響による動きが続かない傾向もあることから、今週(9月16日~)の米ドル/円は、106.80~109.00円での推移になりそうだと考えています。
【参考記事】
●超ハト派FOMCでも株価頭打ち。景気後退? 円高傾向だが、特にユーロ/円は戻り売りか(3月26日、バカラ村)
(出所:TradingView)
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